第23話 結衣主催・料理会
「兄さん、食の文化的洗礼を受ける準備はできている?」
朝食後のリビングで、妹・城ヶ崎結衣が唐突に宣言した。
「なにそれ怖い。ていうか、今朝のパンまだ胃の中なんだけど」
「今日のテーマは“スイーツから戦術まで”。つまり、お料理よ」
「なぜ戦術入れた?」
——こうして、突如として“結衣主催・特別料理会”が開催されることになった。
参加メンバーは、もちろん結衣(発起人)、春(強制参加)、そして家政婦の橘花凛、さらにはなぜか生徒会長の霧島梓まで招集された。
「……なぜ私まで呼ばれたのよ。生徒会の仕事、溜まってるんだけど」
「梓さんのクールなデコレーションセンスを試したかったの。ほら、毒舌風味のスパイスとしても優秀でしょ?」
「私を調味料扱いしないで!!」
春はというと、すでに“買い出し部隊隊長”として、メモ用紙を片手にスーパーへ赴いていた。
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買い出しから戻ると、家の中が何やら様子がおかしい。
「……なにこれ、キッチンが戦場なんだけど」
結衣と凛が完全装備で陣取り、白衣のようなエプロンを翻し、まるで料理番組のようなセットが構築されていた。
「戦の準備は整ったわ、兄さん!」
「あなたがやると料理っていうより企業案件みたいになるんだけど」
「そもそもこのエプロン、どこのブランド?生地が防弾っぽい……」
「特注です。厨房用の安全性も考慮した結衣様仕様となっております」
「結衣様仕様て」
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準備段階では材料の確認、キッチンの動線設計、役割分担などが真面目に進められていたが、やがて一人ずつ暴走を始める。
まず凛が、仕込みの段階で「ついでに宇宙食バージョンも作ってみましょうか?」と方向性を見失い、真空パックと液体窒素を取り出す。
梓は「デコレーションは任せて」と言いつつ、なぜかホラー映画のような見た目のケーキを作成。
春はというと、「鍋の底が黒いんだけど!?これ何入れたの?!」と叫びながら、何かの実験結果のような鍋を見つめていた。
「兄さん、それは“ダークマター・プリン”よ。成功したら世界が変わるかもしれない」
「俺が変わる方が早いよ!!」
こうして、準備は波乱に満ちたまま終了する。
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ついに本番。料理会開始。
「みなさーん、戦いの時間です!」
結衣の合図と共に、各自持ち場に就く。
春はサラダ、梓はスイーツ担当、凛はメインディッシュ、そして結衣は全体指揮——もといラスボス。
まず、春のサラダチーム。
「レタスを……ちぎるだけのはずなのに、どうしてここまで散らかるんだ……」
兄が格闘する傍らで、結衣が不敵に笑う。
「兄さん、それは“芸術”よ。無秩序の中に秩序を見出す——まさに料理哲学の極地!」
「やかましいよ!」
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続いて梓のスイーツコーナー。
「このチョコレート……焦がした方が味に深みが出るのよ」
「それはただの失敗じゃないですか?」
「失敗じゃない!……“ビター・インパクト”なの!」
「技名みたいに言っても焦げてるだけだよね!?」
梓は結局、完璧なマカロンと焦げたチョコの間に揺れながらも、意地とプライドで形にした。
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一方、凛のメインディッシュはプロ顔負けの完成度。だがそこに、奇妙なトッピングが。
「凛、それ……何を載せてるの?」
「柚子胡椒と……少量の金粉を」
「なんで金粉入れたの!?」
「映え、です」
「この家、庶民派設定なんだけどな!!」
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結衣はというと、自身のレシピ「IQ200クレープロール」に没頭。
数学的精密さで計算された分量、焼きのタイミングを一切のブレなく実行し、
最後にハートの形にカットして春の皿にそっと置いた。
「兄さん専用よ♡」
「……いや、うん、美味しいけども!!」
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料理会の終わりは、結衣の一言で締められた。
「兄さん、料理って不思議ね。素材も性格もバラバラなのに、最後は一つの食卓に集まる……」
「うまくまとめたようでまとめてないな?」
「つまり、兄さんは私の人生のメインディッシュ!」
「まとめ方が重いよ!!」
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こうして「結衣主催・料理会」は、ドタバタと笑いと愛情に包まれて幕を閉じたのだった。




