【収穫祭:金色の絨毯】
「フリッグ姫、フリッグ姫」
「どうしました?ヘルさん」
「きょうは、小麦の収穫祭じゃよ。あなたも、一緒にどうですかの?シャンバラに住む人たちにも会えるいい機会じゃ」
たしかに、冒険に行くばかりで私はシャンバラについてあまり知らなかった。
「ええ、喜んで参加します。ただ、畑仕事については無知なもので、教えていただければ幸いです」
「大丈夫じゃよ。そんなに緊張しなくとも。責める人はいないぞ。動ける支度して準備ができたら城門にくるのじゃよ」
「分かりました。すぐに行きます。」
私は動ける服装をして、城門に向かった。
モンバールさんが
「やぁ、フリッグ姫。バイヤンから聞いたよ。沼と大地とアブソルーブ・メタユニバースの話。大活躍だったらしいね」
と、言ってきた。
「賛美の声をありがとうモンバールさん。けど、バイヤン王子がいたから上手くいっただけですわ。いま振り返っても、まだあの世界にいてもおかしくなかったもの」
「運も実力のうちっていうじゃないか」
「いま、ここにいる、きみが全てさ。さぁきょうは麦の収穫だ。バリバリ動くぞ」
と手を上に伸ばして伸びをした。
「モンバールさん機械も、魔法もあるのにどうして、わざわざ手で刈るの?」
「ははっははは」
と、伸びをした手を降ろし左手の肘に右の手のひらでおさえ左手を伸ばしている。
「フリッグ姫は、魔法で刈られるのと、私に刈られるの、どっちが良い?」
「刈られたくないわ」
また
「ははっははは」
と、笑って
「確かに、生物の保存が、自己防衛が働くのは最もだ。質問が良くなかったね」
といって、反対の右の手を同じように伸ばした。
「それなら、これなら、どうかな?パイヤンと僕どっちに刈られたいかな。刈られないというのはなしでね」
と、冗談を言ってきた。私は少し恥ずかしくなる。
「おい、モンバール何を言っているんだ?」
と、城内からバイアン王子が出てきた。
それに連なって、ヘルさんなどもきた。
「ごめんなさい。バレスは、すこし肉体の移り変わり機にむけて来れないわ」
「肉体の移り気?」と私は聞き直した。
「ああ、そうね。あなた達の世界では、肉体の死をもってそれを理解するしか無いわね」
「ここでは、生死は存在しないのよ。」
「えっ、不老不死ってこと?」
「違うわ。う〜ん。死生観についてはちょっと早いわね。言葉では言えないの」
「そうね。麦を収穫しながら、分かるかも知れないわね。もっと思考をするのをやめて、感覚でわかるものなのよ。シャンバラの友だちも待っているから、ぼちぼち行こうかしら?」
とヘルさんはいつもと少し口調が違う。
ヘルさんが、いつも老人の口調にしてくれているのは私を気遣った優しさであることに改めて、気がつく。
お陰で、変に気遣うことなくここでの生活ができる。
みんなで、トゥーリッキとシルバーが引く馬車に乗り込んだ。
トゥーリッキも含めみんなで「ハイヨー!シルバー」と言う。
それに合わせ馬車が動き出した。
麦畑は、とても美しい「金色」の野になっていた。
「やぁ、Dの一族」と、10人くらいの人の代表らしき人が言った。
「おお、これは新米さんもいますね。お名前はなんていうんですか?」
「フリッグです。地球から来ました。よろしくお願いします」
「わたしたちは、シャンバラに住むCの一族です。あまり地球とは関わりがないが姉妹のプレアデスとは盛んに交流をしているよ。よろしく」と、家族同士がお互いに頬に口づけをして挨拶を交わす。
パイヤン王子がそっとサポート入れて話してくれる「僕たちの世界では、目的がないとき以外は基本的に10人以上で集まることはないんだ。意識が集結すると雑音になる話はしただろう。けど、10人以上の意識がお互いに目的をもって動くときは美しい結晶になるんだ。だから、麦の収穫祭のときは4グループの33人を目安に毎年行われる。君たちの世界でも33階級と言われ悪魔崇拝とか言われているんじゃないかな?原理原則が分かって応用すれば、そんなに恐ろしいものでもないんだよ。もちろん、集合体になると機動力にかけるけどね。だから、あと、2つのグループと挨拶を交わすよ」
といって、私は合計32人と挨拶をした。
その中に、城内ではじめて入ってバイヤンの友でもあるイツパパロトルもいた。
「やぁ、久しぶりだね。フリッグ姫。こっちの生活には慣れた?僕とバイヤンとは、小さい頃から麦を収穫する友なんだ」
「バイヤンさんやヘルさんのお陰で、生活になれてきました。あのときは、結局少ししか喋れなくてまた会えて光栄です」と挨拶をした。
他にも、新しくみる私に嫌な顔を全くせずむしろ歓迎してくれた。
「あら、キレイね。わからないことがあったら聞いてね」
「沼の中にあるアブソルーブ・メタユニバースの正体を知ったんだってね。多くの人に役立つよ」
また、子供もいて、花のブーケをかけてくれた。
バイヤン王子が近寄って「こんかいは、Bが主体で動くことになっている」
すると「天にまつわる。唯一の根源。わたしもその一部である根源。ここに集うみなもまたその根源。与えられ、与えるすべての根源に感謝を」とB族の代表者が言って、みな目を瞑って何かを創造しているようだ。わたしには分からなかったが、周りの人はみな満面の笑みであった。
わたしもそれにつられて笑みが溢れる。そして、一通り終わると「毎年言うことは違うんだ。一族によって通ってきた道が違うから当然表現が変わるんだよ」
「みんな、目を瞑って何をしていたの?」「感じなかったかい?麦を刈り、また麦が生まれる。共創をしていたんだ。」「共創?」「そう」
「さぁ、麦を刈ろう」
「そう言って、一斉に麦刈りが始まった」一族同士で行われると思っていたが、まさかの個人がそのとき、その場で刈っていく。
わたしは少し戸惑ったが、さっき花のブーケをくれた子供が「こうやって、刈るのよ」と、優しく教えてくれた。「片手で麦を自分に抱き寄せ、一番痛くないところに一回でカマを入れ切る。何回もやると麦もいたがるからなるべく優しくやるのよ。スーっとね。彼らも死を受け入れてくれるわ」と、少女は言って「ほら、やってみて」と言われたので「私は、少し力を入れ麦を引っ張りカマで麦を刈る。数本麦が残ってしまった」少女は「こうやってやるのよ」と、もう一回でやってくれた。麦は何の抵抗もなくス〜と切れた。私は少し残った麦でもう一度切ってみた。さきほどより抵抗がなく切れた「さっきより上手になったね」と、満面の笑みでいい「アブラムシ〜」と言って観察していた。その麦は刈らずに違う麦を刈った。「残していいの?」と私は聞いた。「アブラムシがお食事中だったから残して良いの」と言った。
「はっはっはっ」と近くの婦人が笑っていた。
私はさっぱり意味がわからなかった。
優しく婦人が声をかけてくれる「残っても問題ないのよ。麦は枯れて穂とし、土となる。翌年その穂も育ちまた穂になる。アブラムシたちもすべての穂をたべるわけじゃない。あなたは地球生まれといっていたわね。ここシャンバラでは、狂暴な虫や動物はいないから、アブラムシを食べる肉食のてんとう虫もいない。それで調和がとれているの。あなた達の世界も恐竜が地球上を支配していた時代があるでしょ。徐々に優しい生物に、優しい生物に調和していくのよ。あなたたちの世界には、ナナホシテントウを送り込んだわ。天道虫と呼ばれてしまっているわね。アブラムシが大量発生しすぎて、稲作が上手くいってないときがあったのよ。ナナホシテントウは異臭を鳥に食べられにくいの。けど、その幼虫は鳥も食べる。そうやって新たなバランスで関係してなりたっているのよ。アブラムシが大量にいるということはバランスが崩れる。それを調整しようとしてくている証。だから、残していいの。あの子はそんなことまで考えずに、直感的に判断しているわね。『これは残す、これは刈って良い』と選択でき判断できるようになるわ」
「そうなんですね。刈っていいのか、刈っていけないのか、分からなくなっちゃうわ」婦人はにっこり笑った。
「そうね。けど、どれを刈っても、それも自然だから大丈夫よ。33人が集まって行うのはそこが利点なのよ。全体の集合意識で麦畑が共創されるの。もちろん一箇所だけでじゃなく、多くの場所でそれは行われているわ。わたしたちにもその日の調子や波があるから、的確な判断、選択がでけじゃないわ」と、優しくおしえてくれた。
わたしははっきりわからなかったが、言いたいことは分かった気がする。
そこに、「め〜〜〜〜」と9匹のヒツジたちがやってきた。
そのうちの2頭が、私の近くに寄ってきた。「テフヌトとイルマタルだ」
「あら、ヒツジ。麦を食べちゃわないかしら?」と私が言うと、また優しい笑顔で「食べてもいいのよ。全ては食べられないわ。ここでは、モノが溢れているのよ」
「いまから、ヒツジの交換も行われるわ」
「えっ?」
「そうね。あなたたちの世界ではいちど群れから離れるとほかのグループで生きることは難しい。けど、ここではそんなこともないのよ。むしろ、種の循環で毎年2〜5頭の交換が行われるわ。循環することすらも自然に行うよう進化しだすのよ」
「め〜〜〜〜」とテフヌトとイルマタルがまた言った。
「この子たちは、違うところに行きたがっているみたいね。
あなたちの野原にはヒツジはいま何頭いるのかしら?」
「9頭よ」
「この子たちが抜けると7頭ね。6〜13頭くらいの群れにすると、ヒツジたちにとってより良い環境ね。増えすぎると縄張り意識が強くなり争い出すのよ。反対に少なすぎるとヒツジは孤独さを感じるわ。他のところから何頭かやってくるかもしれないわね」
と言った。
「仲の良い3頭くらいがいればベストね。一頭だと孤独さで馴染みにくいのよ」と、ほんとうにシャンバラの人たちはいろんなことをしっている。
喋りながら、麦刈りをしていると、なんだか刈られる麦のはずなのに喜んでいる気がした。
「喋ることは作物や虫たちもそれをキャッチするの」
「え?」と私は聞き返してしまった。
「あら、作物や虫たちにも意思があるのよ。作物には思考はないれど、昆虫には思考があるわ」
「意志と思考の話は、ひまわりはわかりやすいかしら?太陽に向って一生懸命咲くわね。それは、意思があるからよ。意思がなければ、太陽に向って咲かないわ」
「なるほど」ほんとうに、いろんなことに気付かせてくれる。
そう言って、話しているといつの間にか麦の収穫は終わっていた。
終わった畑を見ると半分くらいは残っていた。「金色」の畑はそのままだった。
「金色の絨毯をみると、人はどう思うかしら?」
「綺麗と思うわ」
「そうね。だからここでは、少しでも長く金色の絨毯にするため半分くらい収穫して終わりね。作物も意志で、人間の感情をキャッチするからね」
と、収穫したものは、宙に浮いていた。
ヒラヒラ動く麦は本当に、金色の絨毯だった。
「反重力ね。麦も意思で乾かすのよ」と、言って「ありがとね」と、笑顔で言って子供も「バイバイ」と手を降って収穫祭はお開きとなった。
トゥーリッキとシルバーの馬車に乗り込むとバイヤン王子が
「どうだった?麦を刈るのは?」
と聞いてきた。
「もっと重労働だと思っていたわ。腰を曲げて痛くなるものだとね」
優しく彼は微笑む。
「もっとずっと優しんだ。突っ張るから、突っ張られる。虫や麦も同じ。はじめ刈ったときの麦はどうだった?」
「うーん、とても重たかったわ」
「そう、重労働だね」
「子どもたちと刈って行く内にどうなったかな?」
「う〜ん、刈っているというよりもなんていうのかしら?許容されている感じ?」
「許容されているね。そうなんだ。もっとずっと自然なものなんだ。重力も柔らかいんだ。それがわかれば重労働にならない」
「そうね。麦を刈っているときに天道虫の話をしたの。麦は枯れ、土や穂としまた新たな麦として生まれる。もしかしてこれが死生観なんじゃないかしら?」
「もっと具体的に言葉できない?」
「う〜ん、枯れているときも生きているのよ」
「ビンゴ。良くたどり着いたね。死なんて存在しないんだよ。死もなければ生もないんだ。無限に続く循環があるだけなんだ。そうなったとき肉体の入れ替わりが分かってくる。お父さんが肉体の移り変わり機と言っていたのはそれなんだよ。麦と同じで入れ物は使えば酸化もする。もちろん酸化防止もできるけど、その必要性がなくなり新たな循環に入るんだ。ヒツジたちが違う群れから違う群れに移り変わるように肉体も違うものに移り変わる。ときには肉体を持たない形に移る。幽霊や沼であったこともそうすると理解がふかまってくるんじゃないかな?」
「ええ、はっきりと言葉にできないけど、感情ではわかったわ」と馬車に乗りながら、ヘル王妃が「サンドイッチはいかがかな?」と渡してきた。
麦から作られたサンドイッチの味は、いままで食べたどのサンドイッチよりも格別な味がした。




