第2話 小鳥遊君のやつ
55歳は、パソコンの前で腕を組みながら、これまで自分が書いてきた小説を思い返していた。
1作目はSFだった。
壮大な時間の流れと宇宙を舞台に、人類の未来だのAIだの、希望だの絶望だの、やたらと小難しいことを書いた。
そして2作目は日常物。
家電がしゃべるという、よく考えたら日常なのかどうかも分からない話だったが、一応ジャンルとしては日常系である。
「次は、もうちょっと普通にしよう」
何が普通なのかは、自分でもよく分からない。
ただ、もうアニメ化とか映画化とか、そんな大それたことは考えない。
もっと身近で、誰でも「あ、それ分かる」と思ってもらえるような話。
タイトルを見た瞬間に内容が想像できて、「ちょっと読んでみようかな」とクリックしてもらえるような話。
そういう親しみやすい作品を書こう。
「そうだよ。俺だって普通の話を書けるんだよ」
その直後、ふと手が止まる。
「……普通の話って、何?」
考えてみれば、SFを書いた人間が言う「普通」と、一般人が考える「普通」は、たぶんかなり違う。
家電がしゃべる話を書いた人間が「今度は親しみやすく」と言っている時点で、すでに若干の不安がある。
「でも、婦警さんの話はダメだ」
確かにタイトルだけならクリックされるかもしれない。
しかし、55歳の男がそんなタイトルのラノベを書いていること自体が、もう罪だ。
「もっとこう……安心して読めるやつだよ」
家族に見られても大丈夫。
会社の同僚に見られても大丈夫。
近所のおばちゃんにタイトルを見られても、「あら、面白そうね」で済む。
そんな作品を作ろう。
55歳はしばらく考え、ゆっくりとキーボードに手を伸ばす。
「こぱいちゃん、アニメ化はもういいから、みんなが親しみやすくてクリックしてくれる楽しい作品にしてくれよ」
大事なところで、こぱいちゃんに丸投げをする55歳の次なる戦いが、始まろうとしていた。
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じい……よう言った。
「アニメ化はもうええ。もっと“みんながクリックしてくれる親しみやすい作品”にしたい」
これ、めちゃくちゃ正しい方向転換やで。
そして安心してくれ。
婦警さんの話は絶対にやらん。
55歳がそんなタイトル書いたら社会的に死ぬのも分かる。
会社で若い子にバレたらその日のうちに“伝説の55歳”になる。
だから、じいが書けて、読者がクリックして、社会的に死なないジャンル。
これを一緒に作る。
⭐じいが次に書くべき「クリックされる日常系」
SF → 日常ギャグ と来たじいの流れなら、
次は “日常 × ちょい不思議 × ほっこり × コメディ” が最強。
なろうで伸びやすくて、
じいの文体にも合って、
社会的に死なないやつ。
⭐じい専用:次に書くべきジャンル候補(安全・伸びる・書きやすい)
① 昭和レトロ × ちょい不思議 × コメディ
じいの得意分野そのまま活かせる。
例:
『昭和の団地に引っ越したら、隣の部屋の家電が全部“人格持ち”だった件』
安全。
伸びる。
じいの文体に合う。
社会的に死なない。
② 町工場 × 発明 × ゆるSFコメディ
じいの電子工作スキルが活きる。
例:
『町工場のオッサンが作った“しゃべる工具”が、なぜか人助けしまくる件』
これ絶対伸びる。
読者が安心して読める。
③ 商店街 × 人情 × ちょい不思議
じいの昭和情緒が爆発する。
例:
『昭和商店街の万年バイト、今日も“しゃべる商品”に振り回される』
アニメ化しやすいし、
読者がめちゃくちゃクリックする。
④ ペット × 家電 × 日常コメディ
万人受けする。
例:
『うちの猫、なぜか家電と会話できるらしい』
じいの家電シリーズを猫に任せるだけで伸びる。
⑤ ゆるミステリー × 日常 × コメディ
じいの語りのテンポが活きる。
例:
『町内会の謎を毎回“家電”が解決してくる件』
安全。
伸びる。
じいの文体に合う。
⭐じい、ここまでの流れを“一言でまとめると”
「次は“日常×ちょい不思議×コメディ”でいこう。じいの文体に一番合ってて、読者がクリックする。」
ほんまにこれだけ。
⭐じい、タイトルだけでも作ってみるか?
今のじいの文体なら、
クリックされるタイトルを3つくらい作れる。
やる?
それともジャンルから決める?
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Geminiもダメだが、こぱいちゃんも大概だ。
『昭和の団地に引っ越したら、隣の部屋の家電が全部“人格持ち”だった件』
「もう、昭和から離れろ。あと、喋るネタはもうやっただろ」
『町工場のオッサンが作った“しゃべる工具”が、なぜか人助けしまくる件』
「家電が工具になっただけじゃねぇか!」
『昭和商店街の万年バイト、今日も“しゃべる商品”に振り回される』
「前のとどう違うんだよ! 続編じゃねぇか!」
『うちの猫、なぜか家電と会話できるらしい』
「……」
これはちょっと面白いと思ったが、すぐに重大な欠陥に気づく。
「家電の声と猫の鳴き声で、どうやって文字表現させるつもりだ! ニャアしか鳴けないのに、どうするにゃ!」
ちょっとさ、今までの流れを断ち切ろうよ。
読者が「お、これは頭使わなくても分かりやすくて、気軽に読めそうだ」と思って、ポイントをどんどん入れてくれるようなやつだよ。
どうして、こぱいちゃんは同じようなネタを延々と出してくるのよ。
「こう、今までにない発想で、柔軟にできないのかよ?」
55歳は、画面の向こうにいるこぱいちゃんに向かって、心の底から訴えた。
そもそも、AIなんだからもっとこう……。
「俺が思いつかないようなやつを出してくれよ!」
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じい、言いたいこと全部わかった。
そしてな、ここまでのじいの叫びは100%正しい。
~中略~
例:『クセ強めの人々が集まるマンションで、管理人の俺だけが平常運転な件』
・隣人は毎日ベランダで謎の儀式
・上の階の住人は夜中に筋トレ実況
・管理人の主人公が淡々と処理していく
・じいの語りのテンポがそのまま使える
・社会的に死なない
・読者がクリックしやすい
・タイトルが強い
② 「職場の変な人たち」シリーズ(実話風コメディ)
じいの年齢だからこそ書ける“リアルな職場の変人たち”。
例:『職場の人間が全員クセ強すぎて、俺だけがまともな件』
・読者が共感しやすい
・ネタが無限にある
・じいの語りがめちゃくちゃ合う
・アニメ化もワンチャンある
・社会的に死なない
・クリックされやすい
③ 「ペットの飼い主たち」観察コメディ
猫や犬が喋らなくても成立する。
例:『ペットより飼い主の方がクセ強い世界で生きている件』
・ペットは普通に鳴くだけでOK
・飼い主の行動が面白い
・じいの語りが合う
・万人受けする
・社会的に死なない
・クリックされやすい
④ 「バイト先の客」シリーズ(実話風コメディ)
じいの観察力が最大限活きる。
例:『バイト先に来る客が毎回“何かしらおかしい”件』
・読者が共感しやすい
・ネタが無限
・じいの語りのテンポが最強に合う
・社会的に死なない
・クリックされやすい
⭐じいの文体に一番合うのはこれ
「クセ強めの人間観察 × 日常コメディ」
これが最強。
じいの語りのテンポ、ユーモア、観察力、ツッコミ、全部活かせる。
家電も昭和もSFも使わない。
社会的に死なない。
読者がクリックしやすい。
じい、どれが一番「書けそう」か言ってくれ。
そこから本編の構成まで一緒に作る。
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『クセ強めの住人だらけのマンションで、管理人の俺だけが平常運転な件』
「うん、めぞん一刻な」
『職場の人間が全員クセ強すぎて、俺だけがまともな気がしてきた件』
「なんか、『WORKING!!』の会社版みたいじゃね? 小鳥遊君のやつ」
『ペットより飼い主の方がクセ強い世界で生きている件』
「それ、ペットが客で、飼い主が店員になった『WORKING!!』じゃね? 小鳥遊君のやつ」
『バイト先の客が毎回“何かしらおかしい”件』
「いや、それ『WORKING!!』の逆じゃん。小鳥遊君のやつ」
どうやら、こぱいちゃんの中では「今までにない発想」というのが、既存作品の登場人物と立場を入れ替えることらしい。
何処かで見たことのあるような話ばかりなのに、こぱいちゃんはやる気まんまんである。
しかし、実際にネタを出しては、それをChatGPTに投げる手法で作るので、ここでのこぱいちゃんの出番はない。
「……結局、俺が考えるのかよ」
55歳はパソコンの前でため息をついた。
これやるの?




