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日本の技術とか文化とか

佐久間孫九郎正勝

諱は信頼出来る資料に無い方の父親の物。

 備前国邑久郡乙子津。巨大な煙突と滑車台(クレーン)に巨大な船が並んでいる。彼等の足元では蒸気機関車と牛馬が走り回り貨車の山が行き来していた。

 そんな港に遠くから船団が来る。赤嶺(オーストラリア)から来た100目取(メートル)を超える転羽(タービン)式蒸気船の船達である。最近なんか海賊が増えて来たのと呂宋の経由を避ける為に航行距離が長く鉄鉱輸送などにも用いられている。尚、その船団には全く同じ船体と艦橋だが荷物や人の代わりに五門の大砲を乗せた砲塔を三機乗せる戦艦が同道していた。

 彼女達は検疫を終えると次々と円筒(レシプロ) 引船(タグボート)によって着岸していく。南国の果物香辛料や鉱石を主体に珍しい物や希少な物では錫やダイヤに加え動植物が下ろされる。


「頼もしい百鬼夜行じゃな」


 そう言ったのは笑顔の作業員。極めてシンプルな兜を取った髷の男が汗を一拭いしてまた被った。彼は緩急(ブレーキ)車に乗り込み旗を振る。

 鉄鉱石が満載された貨車達の先頭で待っていた蒸気機関車が煙を吐き出して鉄工所に向かって走り出した。

 鉄工所に運ばれた貨車は破砕機に止まり鉄鉱石を落とす。空になった貨車をまた港へと運んでいく。


 破砕された鉄鉱石達が航路に放り込まれて行く。ドロドロに溶けたソレ等は煌々と輝きながら転炉へと流れ込み、転炉がクルリと回って酸素を叩き込まれてまた流れて行く。それ等は圧延機によって厚い鉄板へと変わっていった。


 注)17世紀初頭です。


「ッッッッッッソがぁ!!!!!」


 佐久間不干斎宗岩(信栄)が拳を振り上げて固まった。目の前には自分の年収を超える器具達だ。ツゥと汗を垂らして溜息。


「此処を追い出されちゃ仕舞いだろ……。ただでさえねぇ面目が立たねぇ」

「父上ぇ煩いです、ええ」


 後ろで同じ様に器具を弄っていた息子の孫九郎正勝に正論を言われ溜息を吐いた。


「ソッチぁ如何だ孫九郎」

「いやぁ中々。鋼鉄の内側に軟鉄を敷くまでは良かったんですが。鋼鉄の方が持たないとは全く」

「また鉄に何か混ぜてみるか? もしかしたら硬くなったり柔らかくなったりするかもしれねぇ。阿武楽斎(内藤長忠)様が色々と集めてくれてるからな」

「その前に個々に分ける研究の最中ですよ」

「ッチ。だよなぁ」

「量さえ考えなければ作れるんですがね」

「場所と金がかかり過ぎだ。波進斎様の言ってた大壁堤の放電の方を進めるしかねぇな。あっちのが未だ理解出来るぜ」

「ですね。電の方で進めますか。大壁堤を用いますか」

「おう。まぁコレはコレで残して置くがな。さて先ずは如何やって雷を再現するかだな」




 大阪城城下町は喧騒に溢れていた。呉服問屋の店先で一枚の羽を用いた羽飾りを付けた笄を高々挙げた男が立つ。それはクミアイ族が売り物用に設えた物。


「どや!! 蓬莱のクミアイ族の羽飾りの簪や!! 大鬼様も付けてる言うで!! 北奥カリブの衣もあるで!! 傾奇者なら買わな嘘やろ!!」


 若くやたら派手な格好をし、朱槍を握る男が駆け寄って。


「ソレ!! オヤジ!! そのカリブの衣は幾らや?!」

「金五両!!」


 街の人間が苦笑いを浮かべた。朱槍を握った男は愕然。プルプル震えて。


「アホかぁ!!! 高すぎるやろ!!!」

「何言うてんねん。コレはエエもんやで!! 北奥で天佑人が取った巨大な鹿!! 獲るのも大義、送るも大義!! 傾奇者が銭を惜しんでどないすんねん!!」

「グ、ぅ」


 こんなやり取りの他にも。


「南方の香辛料。稀有な果物。それに香辛料も粒揃いやで!!」

「ええガラス細工やねぇ。コレおいくらやろ」

「蓬莱の乾燥肉ぅー乾燥肉ぅー。砂糖もあんでぇー」

「問屋はん。北奥の材木はない? 庵を建てるっちゅう話で」

「鬼絹、木綿、越後上布もありまっせ」

「尾張熱田と対馬からきた鬼柳やん」

「蕎麦饅頭ー蕎麦饅頭ー。出来立てやでぇ」

「波陸斎の新本はあらへんか? あぁ楽睡庵の方しかない……? ほなソッチも嫌いやないからソッチ借りさせて貰うわ」


 城下町は喧騒に包まれていた。また東の城下町も方向性は違えど喧騒に包まれている場所がある。ソレは江戸。


「止めい」


 大きな声。その命令で旗が振られる。蒸気機関車が白煙を吹いて動きを止めた。蒸気滑車台(クレーン)車を先頭に線路を乗せた貨車と短躯式蒸気機関車の編成だ。先頭の蒸気滑車台(クレーン)車が動き出して、途切れた線路の先で並んだ枕木の上に線路を下ろしていく。


 武蔵国豊嶋郡江戸城から更に東の常陸国(茨城県)真壁郡真壁城を終点とした延伸計画だ。本当は太田城を考えていたが佐竹家に「防衛的にちょっと……」って言われたので、延伸計画の責任者である内藤家と割と仲の良い真壁家の城を終点にした。今の所は真壁石の取引に使われる予定である。


 線路は最初から複線。即ち永遠続く鉄の線を四条を伸ばしていく。そんな作業だ。

 蒸気機関車、蒸気削減機(ショベルカー)、蒸気牽引機(トラクター)、絵面は完全なる汽車の絵本。起きろよ怠け者って感じ。尚、周りは皆んな丁髷。


「そこ、気ぃつけろよ」

「へい」


 奉行が梃子を使って線路の位置をずらす人夫達を見ながら注意する。線路はHを回転させて上面は厚みを持たせて底面を伸ばした様な形だ。当然だが全て鉄であり線路同士は継目板で固定し、地面とは枕木と犬釘を用いて固定していた。


 日比谷入江に槌の音が鳴る。


「次の列車で視察が来るんだったか。飯の時間にお偉いさんが来るなんてたまらねぇな」


 継ぎ目板を雌雄の螺子で止めている人夫が言った。


「全くだぜ。食い難いったらねぇや。べらんめぇ」

「折角の楽しみを潰しやがってよぅ。よっし。こっちゃ出来たぜ」

「おうコッチもよ」


 彼等の反骨心と言う程では無い、ボヤきと言うのが正しいソレ。彼等は良い暮らしをさせてくれていた北条家が居なくなった不満と暮らしが良くなる実感から出た言葉だった。オッサンのツンデレとか言う、だーれも得しない物。

 どっちかって言うと江戸っ子じゃあ無くて小田原っ子ってのが正しい。彼等は厨車と呼ばれる雑に言えばキッチンの付いた貨車の到着を待った。早い話が災害時や鉄道延伸などの際に温かい飯を作る為の列車である。

 それは直ぐにやって来て何時も通りに調理を始めた。だが連れて来た列車は何時もの倍ほどの資材を運んでいる。ただ昔一度だけ片方の線路が不通になって似た様な事があったので珍しいだけだ。


「今日は鯨肉入りの陣麺か。漬物が美味ぇな」

「てやんでぇべらんめぇ。こりゃ何処の味噌でい。あぁ麦味噌だなこりゃあ」


 などと男達が蕎麦を啜る。それは瞬く間の事で味噌の汁まで飲み干して、最後に上方で流行りの煎茶を受け取りグッと飲み干す。そして作業に戻るのだ。


 先ずはピッチリと枕木が並べられる。その間に蒸気滑車台(クレーン)車の炊かれた釜から蒸気が流れて鋼綱(ワイヤー)が巻き上げられる。それを待っている人夫達は重そうなそれを眺めていた。


「エッホエッホ軌条をサッサと並べなきゃ。エッホエッホエッホ……」


 だが背後からアホみてぇな声が聞こえて振り返り己の目を疑った。軌条の束を担いでトントンと置いていく人間が居たからだ。現代的に言うと九割マインなクラフト的絵面。

 全員が自分の目をゴシゴシした。んで、なんかもう一往復始めたのでグリグリする。


「波進斎様!! 御身の立場でそれは!!」


 ただ二回目は泡食った顔で裃を着たキッチキチの役人に追われてた。巻いた茣蓙みてぇに軽々と鉄のレールを束ねて担ぐ男は「大丈夫大丈夫」とか言ってるけど何が大丈夫なのか意味不明である。控えめに言って人間のやって良い事じゃ無いもんアレ。

 んでまぁ重機より仕事早いのマジで何。そう言う感じ。


 僕みたいに働けよとか言われたら泣くであんなん。

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― 新着の感想 ―
こんなパワフルなエッホエッホ初めて見たwww
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