17 家族に
「愛のお願いなんだから、『仕方ない』よね。私は愛にはなれないけど、お父さんとお母さんと私、家族になれるように、一緒に頑張ってくれないかな」
「頑張る……何をすれば……?」
「まず、思い出してほしい」
そっと、お母さんの手をとった。今度は、振り払われなかった。その代わり、戸惑った顔をしていたけれど。
視線がウロウロ彷徨うお母さんを真正面から見つめて、私は、胸の内からようやくすくいだした言葉を、告げた。
「愛は、私の家族なんだよ」
ナオヤくんが、そう言ってくれた。彼が、見つけ出してくれた思いだ。
「私は、悲しいよ」
「……あ……!」
お母さんの肩が、ぴくんと跳ねた。手の温もりと一緒に、伝わっただろうか。
ようやく、お母さんの方から私の目を見てくれた。そして、私の手からそろっと抜け出して、その両手で私の頬に触れた。何かを拭ってくれる温もりで、私は、自分も涙が伝っているんだって気付いた。
お母さんの両手をもう一度包んで、今度はそのまま、背中に腕を回した。
小さい。
子どもの頃に想像していたお母さんの背中より、ずっと小さい。こんなにもか弱い存在だったのかと、今更ながらに気付いた。
「お母さん……寂しいね」
「……ええ」
「愛が、いなくなっちゃった……」
「……そうね」
「お母さん……悲しいね」
お母さんは、答えなかった。その代わりに、肩口で頷く感触を何度も感じた。震える肩を包み込んでいると、更に大きな腕にお母さんと私、二人まるごと包み込まれた。見ると、お父さんに背中から抱きしめられていた。
私たちは、三人でいつまでも、一つの影を作っていた。今まで、できなかった分まで。
そんな私たちを包み込む星空が、お母さんの背中越しに、流れていくのが見える。冬の空が、春の空へと移り変わる。
ひときわ大きな一等星も、冬の大三角形も、みんな静かに地平線に沈んでいった。そして、また別の、煌めく星々が浮かんできたのだった。




