16 『親』
後には、ただむせび泣く声だけがしとしとと響いている。
愛に、届いただろうか。そんなことを、ふと思った。
そして、私は星空を見上げた。愛の好きな、冬の星々だ。
見ているかな――そんなことを思って、わたしは お母さんに歩み寄った。
「お母さん」
声をかけると、お母さんはびくっと肩を震わせた。私に、罵倒されると思っているんだろうか。それとも、殴られると?
そうされると覚悟している顔を見て、なんとなく、わかった。
お母さんが、本当に望んでいることが。
「……お母さん、私に責められたいの?」
「……え?」
お母さんは、ハッとして、私を振り返った。
「私はね、少しだけ、お母さんを恨んでる」
「……そう」
お母さんはまた、俯いてしまった。自分の罪を理解しているからこそ感じる重圧なんだと、わかる。
「お母さんは、できるだけ愛と私を区別しないように頑張ってくれてたけど……クローンの法が改正されて、私がドナーになれなくなった時、がっかりしてたね。それに親戚の人に言われた……『君のお母さんは可哀想にね。何のためにもう一人作ったのかわからないって嘆いてたよ』って」
「そ、それは……」
否定しないあたり、きっと本当なんだろう。お父さんも、苦い表情で俯いている。
恨み言を言うのなんて、簡単なんだ。お母さんが親戚の人たちに零したように。きっと水の入ったコップをひっくり返すのと同じくらいあっけなく言ってしまった。だけど零れた水は、もう戻せない。
「お母さんがいなければ、私は産まれなかった。それは、すごく感謝してる。だけど……やっぱり恨む気持ちも消せない」
「そう、ね……」
「だから、罵ってなんかあげない」
お母さんは、もう一度私を見た。驚きが、そこに溢れている。
「今、生まれた時からの恨み辛みをお母さんにぶつければ、お母さんはきっと満足して、気が楽になるでしょう。楽になんかさせないから。私が苦しんだ分、一緒に苦しんで。私をこの世界に生まれさせた『親』として」
「『親』……? 私が? 一緒に……?」
何度も目を瞬かせながら、お母さんはそう尋ねる。私は、しっかりと頷き返した。
「それが愛のお願いだったんだから、『仕方ない』よ」
「愛のお願い……そう、なの?」
あの時見た映像で、愛が言っていた。
――家族三人、協力したら、きっとできるよね
家族三人が誰を指すのか……お互いに、言う必要はないと思う。




