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500年の鬼と恋活JK  作者: あいすらん
1章

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6/13

夢の終わり

 4月。

 クラス替えの季節である。進級後の数日間が、スクールライフの未来を決める。

 諸々の事情から、ともすれば孤立しがちだった私は、2年に進級したら本気出す! と張り切っていた。

 それなのに。


「いたっ」


 後頭部に何かぶつけられて振り向くと、仁王立ちの姫山さんと目が合った。


「わあ、姫山さん! 体はその、大丈夫!!?」


 一時限目は休んでいた彼女に食い気味に聞く。

 昨晩、あれから仲良く一緒に補導され、監視カメラを見た私たち。

 鬼やコンとのあれこれは、私の一人パントマイムのようにまとめられていた。

 あやかしであるコンと鬼がカメラに映ってないのは当然ながら、姫山さんもちょうど死角になっており、とにかく私が彼女に何かした、という証拠は何一つなく。

 宙に浮いて見えたのも含め、全ては二人の錯覚だった、という事で話はまとまった。

 そんなこんなで、私への濡れ衣は晴れたはずなのに……。

 姫山さんはちっと舌打ちをし耳元に唇を近づけてきた。


「全部あんたがやったんだろ? 白々しいんだよ。クソ女が」


 え?

 マドンナと呼ばれし華やかな美貌の彼女からこぼれる、信じがたい毒舌に私は一瞬硬直する。

 姫山さんは床から何かを拾うと、私の手に握らせた。


「私からのプレゼント。ク、ソ、オ、ン、ナ」


 目線を下に向けると手のひらには丸められたノートの切れ端があり、「呪」という手書き文字が見える。


(えっ? これぶつけたの、姫山さん???? しかも事前に準備してた?)


 咄嗟の衝動なら、少しは理解出来るのだけど……。

 疑問は当人に臆せず聞く。

 対話を何より重んじる私のポリシーだ。

 しかし、可憐な見た目と態度のギャップに、にわかに信じられなくて、口をパクパクしていると、


「いやーん。こわ~い。日々野さんが睨んでるうう」


 突然姫山さんはグーにした両手を顎の下に置いて身をくねらせた。

 わらわらと集まる女子たちが、ひとかたまりになって私を責める。


「ちょっと。いい加減にしなさいよ! 日々野日和!」 

「話は全部聞いたんだから。この呪われた女!」


 ナチュラルに罵られ、私は絶句した。


「呪いを飛ばして珠姫を血まみれにしたんでしょ! 気絶までさせて。警察が来なかったら、どうなってたか」


 既に昨日の出来事は共有されているようだった。そこそこ状況は合致しているものの。


(やったのは私じゃない! あれは無駄にイケメンな鬼のせいなのよ!)

 

 本当はよくわからないけれど、きっとそうに決まっている。

 私はむしろ、彼女を庇ってあげたのに……!

 そう。

 いじめられていたカメを助けてあげた浦島太郎の立ち位置のはずだ。

 彼は善行を行い、カメの導きで孤独になった。


(あれ? おかしいな。太郎、酷い目にあってるじゃない!)


 まあ、姫山さんはカメとは違い、私を誘導したわけではないけれど。

 信じていた人生訓が、グラグラと揺らぎ始める。

 善行を積めばいいことがある。

 白馬の王子が迎えに来てくれる。

 そう教えられてきたのに、結果、招いたのは最凶の鬼と、孤立のみ。


(おばあちゃんは間違っていたのかな……)


 善行に見返りを求めるとバチが当たる。

 浦島太郎も、実はプリンセスとの恋を期待してたとか?

 だから、浮かれるな、と神様がバツを与えたのだ。

 意外と日本昔話は奥深い……。


(なんてこと。太郎の気持ちがやっとわかった……彼はきっと辛かったよね……)


 でも、私だけは太郎の味方でいよう……誰だって、恋くらいしたいはず。

 羽目を外した報いにしては割が合わない。


 なんだ、どうした、と男子の数人が視線を向けてきた。

 姫山さんは突然体をくねらせる。


「やだあ。みんな、あんまり日々野さんを責めないで。ただの極悪人だから、無視して時々言葉で殴ってやる程度で十分よ」

「珠姫ったら、優しすぎる。天使みたい。それに比べて、この呪われた女は……最低ね」


 え……。

 あの、態度や口ぶりはあれですが、ちゃんとセリフを聞きましたか?

 複数の怒りの眼差しに、私は愕然として立ちすくむ。

 ショックを受けたのは、罵られたせいだけじゃない。

 今度こそ女の子のグループに入りたいな。 

 そして、あわよくば恋バナなどを……。

 始業式に立てた、ささやかだけど、結構切実だった夢が、あとかたもなく崩れ去ったからだった。


 チャイムが鳴り、担任の空木(うつろぎ)先生が教室の中に入ってきた。


「どうした?」


 理科が専門でいつも白衣を着ている先生は、不穏な空気に気がついたのか、私と姫山さんたちの顔を交互に見る。


「なんでもないですう」


 姫山さんはそう言うと、クネクネしながら席につく。

 私もそれにならい、心の中でがっくりと膝をついた。


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