扶養しなければいけない小さい子がいます
お仕事中、おじゃましますわ。ああ、悪いけれど、お茶をいただける? ありがとう。いつもおいしいわね。
申し訳ないのだけど、家族の話をするから少し離れていてくれるとありがたいわ。ごめんなさいね。
あら、旦那様はそこに座っていてくださらなければ。
弟から変な手紙がきましたの。
ここに来てから初めて受け取った手紙なのに、すっごい変なのです。
そんなに真面目な顔で言うほどってそういうかんじです。べらぼうに変、ですわ。
べらぼうって、ほら、石工の方がよく言うので伝染りました。近頃よくお茶をします。
それで弟です。お兄様によろしく、だそうです。
ええ、それだけですが。あの弟、わたくしのこと姉さんって呼ぶんですの。それに加えて父さん、母さんなんです。
お兄様呼びがおかしいのはおわかりいただけましたかしら。
でも、一度もあったことはございませんでしょう? 何かしらと思って。
あ、えっとね? その、といいつつ腰を浮かすのやめてくださいます? 逃げるよ、俺は逃げるよというスタイルです。弟にもよくやられました。
しっかり座り直してくださいませ。
私の知らないところで、なにかしてませんかしらぁ? 懐かない度MAX、懐いたら忠犬の弟が、お兄様というのですよ。
顔色が悪いですね。
……ごめん、ってなんですの。
ま、まさかっ! うちの弟を狙って!
……違う。そう、そうですの。あまりにも私に触れないからそーゆー趣味と少し疑って、え、結婚式までは清い関係、それも白い結婚、と。
そう言えばそう言ってましたわね……。
き、気にしてなんかいませんわよっ!
そうですの。
ではなんですの?
え、黒曜石の会? 知ってますわ。謎の秘密結社。調べてみたこともあるんですけど、活動内容が謎、構成員も謎、知ってるけど誰も教えてくれないでしたわ。情報屋もそれは無理とお断りされて。
主催?
旦那様が?
御冗談を。
冗談ではなく?
国家転覆を狙っていたんですのね!
違うんですの。ちっ。
いえ、ここなら、国家狙えると思ったもので。いける、そう確信できるなにかが。ああ、しないんですか。
じゃあ、なんです?
虫平気って、まあ、ある程度は。領地の野山を駆け巡ったこともありました。小さい頃のことですけどね。
カブトムシ。存じ上げております。それがなにか? え、飼育している、そうですか。ブリーダーは今はしていない、今は、たいへんあやしい言い方ですが、それで?
…………黒曜石の会とは、幼い頃に遊びそこねた大人がいい年して、カブトムシやカードゲームや回り独楽などに興じる会。会員の誕生日会もやると。
マジですの?
ああ、執事さん、え、これが集会許可証と会則と活動内容? きちんとした装丁のものですわね。
…………あの、ほんとうに?
な、なるほど……。誰も言わないはずです。どう考えても、邪魔される。わかるのって? そりゃあ、ちょっと果物ほしいわというと各種揃えられるんですのよ。欲しいものを探しに行くようなことはできない。果物の木が見てみたいで、果樹園買われちゃう気持ちわかります?
お友達と誕生日会したいって、広間でやられちゃうんです。
ちがうんだ、そうじゃないんだ、というものです。
ええ、わかりました。私も黙秘します。
で、この黒曜石の会に弟も入会して、主催を崇めるがごとく、お兄様と言っているんですね? そう、では、弟にはきちんと話をつけておきます。
序列ははっきりしてもらわないと。
旦那様が一番優先すべきは妻である私! 一番近くにいるのも私! それをわきまえず一番近くにいようとするような老若男女をねじ伏せてやります。
わー、たのもしー、じゃなくてですね。
旦那様も身辺ご注意ください。うちの主のためならという狂信的やつの一人や二人飼ってるのが上位貴族というものです。なんか、湧くんです。あれ、不思議すぎるんですけど。
まあ、旦那様はすでにいっぱいいそうですけど。うちの孫になにするという勢いで、蹴散らしてくれそうですわ。あ、そう、大変ね。
まあ、ひとまず、お兄様の件と黒曜石の会の話はわかりました。
それでは参りましょうか。
どこにって、おうちですよ。
まだご紹介いただいていない養っている小さき者がいるならご挨拶が必要でしょう? 旦那様が大事にしてるものなら、私も認めます。お世話はしません。姉さんそういうの向いてないって言われているのでお互いのためです。




