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第5話 ミルクティー。

「あなた、、、知ってた?すんごい噂が流れてるわよ?」


「?」


「ローズが、ブルクハント卿の愛人で、この店も、あの爺さんに買ってもらったらしいって、、、うふふっ。」

「・・・ああ、、、、まあ、、、ある意味、パトロンには違いないかなあ、、、」

「否定しなくていいの?」

「実際、じーさんの屋敷に寝泊まりしてるしねえ、、、この店は自分で買ったけど、他国民には登記が出来ないから、じーさんの名義になってるし。送り迎えも、屋敷の馬車を使ってるし、、、いいんじゃない?そのままで。」

「まあ、どうせ、あんたに相手にされなかった男が流した噂だろうけどねえ、、、」

「かえって、変な男が寄り付かなくていいよ。この前も、閉店して帰るとき、襲われそうになったし、、、御者さんが追っ払ってくれて助かったよ。」

「あら、、、、まあ、、、、気を付けなさい。」


台所脇の、小さい中庭が見えるテーブルに並んで座ってお茶にする。


モミの木が一本植えてある。前の持ち主の植えたものだが、、、モミは大きくなるぞ?どうするんだろう?今年は、クリスマスのオーナメントをこの木にぶら下げるかあ、、、


「ローズ?このところ、お菓子の質が上がったわね?」


「ん?ああ、、、お菓子持参でお茶にくる子がいるんだ。」

「へええええええ、、、、男でしょ?ん?」

「8つも下よ?問題ないわ。」

「・・・・」


小さな家は、暖炉一つで暖かい。

マリエスと、小さい頃のクリスマスの話なんかをしながら、お茶を飲んだ。

ささやかなプレゼント交換も。

私からは、届いたばかりの新色の口紅。

マリエスからは、花柄がかわいいカップとソーサー。



*****


「あら、寒かったでしょ?こっちに座りなさい。」


雪のついた外套を、律儀に外で払って、ルーカスがおずおずと台所脇のテーブルに座る。こっちのほうが暖かいから。ルーカスの眼鏡が曇っている。


夕方、まだ5時だが、外は暗い。ルーカスが入ったので、クローズの看板を出す。


今日の午前中に、中庭のモミの木に飾り付けをした。ちょうど雪が降り始めて、良い感じだ。ランタンをぶら下げておいたので、ぼんやりとモミの木を照らしている。


「はい。今日は寒いから、ミルクティー。お砂糖入ってるからね?」


もはや、弟みたいなもんだな。本物の弟は、もっと生意気だが。うふふっ。


「ああ、、、く、クリスマスツリーですね、、、そうですねえ、、、そ、もうすぐですもんね。」


両手でカップをそっと持って、ルーカスがモミの木を見ている。


「そうそう、子供のころは、モミの木の下のプレゼントが楽しみだったわよね?」

「・・・・・」


あれ?高位貴族の皆さんはないのかな?いや、、、マリエスの家はあったけど?


「・・・・ぼ、僕、、、、小さい頃の記憶が、、、あ、あんまりなくて、、、なんというか、、、あ、あいまいで、、、、、す、、すみません、、、」


「あら、、、そう?ごめんね、こっちこそ、知らなかったから、、、」


しばらく二人で、ランタンに照らされたモミの木を見ていた。


なんか、、、、つらいことでもあったのかな?小さい子は、、、記憶を飛ばしてしまうことで、自分を守るって、何かで読んだ気がする。そんなに、、、、つらいことが?


「でも、まあ、これから楽しかったらいいわよね?こっからの人生のほうが長いんだからさ。ね?」


「・・・・あ、ありがとうございます、、、、」


「私から、これ。プレゼントよ?あなた、キンモクセイを気に入ってくれたでしょ?ささやかだけど。」


なんてことはない、、、暇なときにキンモクセイの花の刺繍をしたハンカチに、キンモクセイの精油を垂らしてある。自分の好きなものを共有できるのは誰であれ、嬉しい。

驚きながらも、差し出したルーカスの掌に、そっと置く。


「・・・・・あ、、、ありがとうございます、、、、ぼ、大事にします。」


「うん。良いクリスマスを迎えてね?それにしても、、、あなた、、、手が冷たいわ。」


ハンカチを大事そうにしまったルーカスの手を引き寄せて包み込む。

氷のように冷たい。軽くハンドマッサージをする。無香料のハンドクリームを塗りこむ。よしよし。


「あの、、、ぼ、僕、、、お礼に、、、、」


「ああ、いいのよ。それにしばらくお店はお休みだから。年末年始はお客様が来ないから。気にしないでね。」


モミの木の枝に積もった雪が、パサリ、と落ちた。本格的に降ってきたかな、、、、




*****


隣国の貴族令嬢の調書に目を通す。


当然だが、、、わざわざ隣の国まで出稼ぎに出掛けた形跡などない。まあ、、、そうだろうな、、、、


いろいろと巷で噂になっている女性の調書も上がってきた。マダム・ローズ。


貴族令嬢対象の美容サロンをこの春に開業した。完全予約制。

ブルクハルト卿の愛人らしい。あの方は、、、、もう60過ぎだろう?個人の趣味嗜好に干渉する気はないが、、、若い女性を囲って、店を持たせている?元気だな、、、

自分の屋敷から送り迎えもして、他の男が寄り付かないようにしているらしい。


出身は隣国。母親がやっている美容サロンの支店みたいな位置づけ。

化粧品もそこから仕入れている。商売は手堅い。固定客もついているようだ。

黒髪に、妖艶な顔立ち。25歳。


このところ、、、、ブルクハルト卿がらみの報告が多いな、、、








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