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夢見がちな怪盗-②


なんか書いてるうちに気がつけば内容が変わってる。

まあ、これはこれでいいのかな?

今回は少し長めになっていますのでよろしくお願いします。

 







「カインドさんにはあの子…………とあるパトモンと契約して頂きたいのです」




 そんな言葉を皮切りに説明が続く。

 とあるパトモンというのは、数年前からこの孤児院のどこかに棲みついたパトモンのことらしい。

 正体については予想がついているというか、ミリアさんも普通に会ったことがあるし、何なら子供たちにとっては仲の良い友だちみたいな関係なんだとか。

 実は俺が孤児院に来た時に声を掛けるまでは庭で子供たちと遊んでいたとのことで、知らない人間に驚いて姿を隠してしまったようだ。……なるほど、だから子供たちから妙に注目を集めてたのか。




「あー、つまり窃盗事件ってのは……」

「すみません。実はそんなことは起きていません。冒険ギルドの方が興味を惹かれるようにと考えた方便です。嘘をついて申し訳ありませんでした」




 本当に申し訳なさそうに頭を下げられてしまい、逆に俺の方が恐縮してしまう。

 確かにちょっと面白そうだなとは依頼内容を聞いて思ってたんだよね。全てミリアさんの掌の上だったわけか……なんか少し恥ずかしいな。

 ちなみに、こうしてぶっちゃけてくれた理由はミラ婆さんから直接クエストを受注したからであり、分かりきっていたことではあるけどミラ婆さんもグルだったことが判明した。我ながら見事に踊らされてて笑うしかない。




「でも、子供たちと仲が良いそうですけど、俺が連れて行ってしまって大丈夫ですか?本人が望まないのであれば、俺はその意思を尊重するつもりですが……」

「はい。それについては問題ありません。あの子は常々外への憧れと言いますか、自分のマスターと共にバトルして強くなりたいという願望を持っていました。話をすれば喜んでついて行くはずです」




 そういうことらしいので、早速件のパトモンの居るところまで案内してもらうことになった。

 今は知らない人間である俺が居るため裏庭の紅茶畑に隠れているだろうとのことだ。随分と警戒心が強い……臆病と言ってもいいかもしれない。



 紅茶畑は思ったよりも広く立派だった。

 何人かの子供たちと一匹のパトモンが黙々と手入れをしていたが、少しの間眺めているとこちらの存在に気づいたようだ。

 ミリアさんの姿を見て駆け寄ってこようとした子供たちだったが、側に居る俺に気づいて足を止める。パトモンに至っては慌てた様子で再び姿を隠そうとしていた。




「待ってアシガエル!この人、カインドさんは大丈夫よ。私が呼んだお客様なの、隠れる必要はないわ」

「…………ゲゲッ、ゴゴ?」




 ミリアさんに言われて恐る恐る姿を現したのは、俺も知っているパトモンだった。

 所謂御三家と呼ばれるパトモンの一種であり、水単タイプで少しテクニカルな面はあるが育てやすい素直なパトモンとして相棒として選ばれることが多い。

 見た目は黒に近い紺色となんとなく足軽の服装っぽい模様のある蛙に似た生き物である。影に身を潜めて足音を立てずに壁や地面を飛び回り奇襲する、という如何にも忍みたいな闘い方をするが、本人は怪盗に憧れているらしい。




「初めまして、アシガエル。俺の名前はカインド。新人マスターなんだ。よろしくな」

「ゲッコ!?ゴッ、ゲゴッ!」

「ふふっ、驚いてるみたい。私と母以外のマスターと会うのは初めてだったから、アシガエルも嬉しいのね」




 このアシガエルは臆病な性格だと思っていたが、実際には結構好奇心旺盛な子のようだ。

 自己紹介をしてからはぴょんぴょんと俺の周りを跳ね回って、なんだか楽しそうにしている。ミリアさんの言う通りならば物珍しいのだろう。

 確かにこの様子なら誘えばついてきてくれそうではある。ただ問題はアシガエルよりも()()()かな?




「おいっ、兄ちゃん!アシガエルに何のようだ!まさか連れて行こうってんじゃないだろうな!?」




 どうしたものかと思っていたら、一人の男の子がいきなり怒鳴りつけてきた。向こうから来てくれるのは都合がいいけど、最初から喧嘩腰なのはご愛嬌ってやつか。

 それを見てミリアさんが眦を釣り上げて叱りつけようとしたが、咄嗟に間に入って止める。こういうのは大人が正論を言ったところで納得できないものだからな。腹を割って話さないと禍根を残すだけだ。




「うん。ミリアさんから話を伺ってね。アシガエルが望むようなら、俺の旅についてきてもらおうと思ってる」

「なっ!ふ、ふざけんな!こいつは俺たちの家族だぞ!?何の権利があって連れて行こうってんだよっ!急に来て意味分かんないこと言うな!!」




 まあ、こうなるのも予想通りだ。

 それにしても家族か。友だちくらいの感覚だと思っていたけど、予想以上に深い関係みたいだな。これはちょっと骨が折れるかもしれない。

 とはいえ、この話に関しては彼が何と言おうが、俺が何を言おうが意味はないのだ。




「だから、どうするかはこの子に任せるって言ってるだろう?俺についてくるのも、ここに残るのも、決めるのはアシガエルだよ」

「へっ!それなら答えなんて出てるようなもんじゃねえか!なぁっ、アシガエル!?」

「ゲッ、ゲココ……」




 俺たちの言い争いに、彼の背後に居る子供たちは戸惑っているようだった。

 もちろんアシガエルも困ってはいるが、それは彼らと違って今の状況や俺に対してではなく、子供たちの様子に対する反応に見えた。

 これだと少しアシガエルが可哀想だな……。ミリアさんを見て頷けば、彼女は子供たちに諭すように話し始めた。




「ハウ、それにみんなも聞いて。カインドさんも言っていたけれど、彼を孤児院に呼んだのは私なの。どうしてか分かる?」

「……なんだよそれ。分かんねえよっ、どうしてだよ!?」

「そうかしら?難しいことなんて聞いてないわよ?みんなだって知っているはずよ。アシガエルが本当はどうしたいと思っているのか。ここの外に出て成りたい夢があるって、知っているでしょう?」


「そっ……それはっ、でも……!」

「アシガエル居なくなっちゃうの、悲しいよぅ……」

「やだやだ!みんな一緒がいい!」




 孤児院の子供たちが口々に自分の思いを言葉にし始めた。

 対照的に、ハウと呼ばれた男の子は先程までの威勢が嘘のように押し黙って俯いている。

 アシガエルも子供たちの様子を見て呆然としている。泣いている子だって居るし、どうしてこんなことになっているのか理解できていないのかもしれない。

 ミリアさんは場が落ち着くまで黙って子供たちの言葉を受け止めていた。静かになると、また話し出す。




「……そうね。お別れは悲しいわよね。私だって本当ならここに居て欲しい気持ちはあるのよ?でも、それ以上にアシガエルの夢を応援してあげたいと思ってる。みんなはどうかな?アシガエルの背中を押してあげられる?」




 ミリアさんの問い掛けに対して、誰も声を上げられない。

 何も言わずに押し黙っている子、周囲も憚らずに泣いてしまっている子、何度か喋ろうとして結局何も言い出せない子。

 この孤児院にとってアシガエルがどれだけ大事な存在だったのか、少しだけでも伝わってくるものはある。

 五分、十分と時間は過ぎていくが、やっぱり子供たちにはまだ難しい問題なのだろう。別に結論を急ぐ必要もないし、そう言おうとしたところでハウが勢い良く顔を上げた。




「──バトルだ。俺とバトルしろ!」

「ハウ?貴方、何を言って……」

「ミリア院長(せんせい)は黙ってて!アンタ、カインドって言ったよな?アンタがアシガエルに相応しいのか、俺が見極めてやるからバトルしろって言ってんだよ!!」




 勇ましく声を上げたハウの目は、真っ赤に充血していた。

 悩んで悩んで、悩み尽くしたのだろう。目だけではなく顔も真っ赤になっていて、強く俺を睨みつけている。

 けれど、その目には最初にあった敵意はない。何か悩みを吹っ切ったような澄んだ瞳で、闘争心も露わに俺に対してバトルを挑んできているのだ。




「……ゲコッ!」




 そんなハウを見て何を思ったのか、アシガエルが彼の前まで行ってから俺の方に向き直る。

 なるほど。アシガエルもその気なら俺も応えないとな。




「いいよ、やろうか。アシガエルだって弱いマスターは嫌だろうから、手加減はしてあげられないけどね」

「へへっ、吠え面かくなよ!見せてやろうぜアシガエルっ、俺たちの友情パワーをなぁ!」

「ゲゴッ!ゲゲゴゴッ!!」










 ????(♂/♀)/アシガエルLv.1

 No.004 自然・怪獣 進化:有り

 属性:水 弱点:植/氷/雷

 特性:斬/突/魔 無効:火

 0.4m/3.5kg

 生命 45

 筋力 135

 耐久 75

 魔力 105

 抵抗 60

 速度 180

 種族スキル:水力 or 軽業

 戦闘スキル:奇襲 水切り

 補助スキル:緊急離脱 影分身

 称号:なし


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