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図書館の天才少女〜本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!〜  作者: 蒼井美紗
第13章 浄化の旅の再開編

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221、魔物討伐と浄化

 ディアスの力による地響きのような爆音が響き、少ししてからうっすらと目を開けると、瘴気溜まりの周囲は完全な更地になっていた。


 やりすぎて、地面がクレーターのように凹んでいる。


 二百メートルの範囲だと言ったが、更地になっているのがその範囲で、その周囲も数百メートルに渡って被害を受けているのが見てとれた。


「わっ」


 油断していたら、ディアスが急降下を始める。また魔物が戻ってくる前に、そして瘴気溜まりから生み出される前に浄化に向かうのだろう。


「マルティナさん、捕まっててくださいっす」


 サシャがマルティナの腕を掴んでくれて、ありがたくマルティナもサシャの腕をがっしりと掴んだ。


 地面に降りるのは一瞬で、ふわっと着地したディアスから、ハルカとフローランが急いで降りる。フローラン一人では心配なのでサシャも降り、マルティナとソフィアン、そしてロランはこのままディアスの背に残ることにした。


 瘴気溜まりまでの距離かなり近いので、降りずとも生み出された魔物の種類は確認できる。


 マルティナがじっと目を凝らしたところで、ハルカが瘴気溜まりに触れた。


「綺麗だな……」


 隣のロランが呟いたのが聞こえる。


 キラキラと光り輝く魔力が瘴気溜まりに流し込まれ、どんどん瘴気溜まりが小さくなっていく様子は、見ていてとても美しく神秘的だ。


 しかしそちらに見惚れていたら魔物を見逃してしまう。マルティナはハルカではなく、瘴気溜まり全体に意識を向けた。


 するとさっそく、魔物が生み出される。ボトッと落ちるように出てきたのは、相当大きな魔物だった。四足歩行の魔物であるにもかかわらず、体高は人の背丈よりも大きい。


 足は太く、到底マルティナの腕は回らないサイズだ。そんな足が四足で支える体は、とにかく太くて存在感が凄かった。樹齢百年を超えるような大木を横倒しにしたよりも太い胴体を持つかもしれない。


 魔物の体表は硬そうな皮で覆われており、色は黒に近いようなグレーだ。顔は鼻が長くて大きく、開いた口には鋭い牙がある。


「グォォォォォ!!」


 腹の底に響くような低い雄叫びをあげた。


「なんだ、あの魔物」


 警戒を強めたロランが魔物を睨んだ。沼地にしか生息しておらず、ラクサリア王国では目撃例がないので知らないのだろう。


「ヒポポタマスです。普段はゆっくりと動きますが、実は俊敏にも動けるので注意が必要です。相手を油断させて、急に素早く動いて突進することで敵を仕留めます。ヒポポタマスの突進を喰らえば、どんな大木も一撃で倒れると言われているらしいです。とても硬くて剣で倒すのは難しいかもしれません。あと水魔法が使えます」


 ロランに説明をしながらフローランたちを見ていたが、フローランはヒポポタマスを知っているような動きをしていた。


「ソフィアン様、ヒポポタマスと遭遇したことが?」


 簡潔に問いかけると、頷かれる。


「あるよ。別の瘴気溜まりから生み出されてきた」

「ではフローラン様がいれば問題ないですね」

「そのはずだよ」


 安心しながら、それでも油断せずに戦いを見つめていると――サシャに向かって頭を下げるようにしたヒポポタマスの首の後ろに、花の模様が見えた。


 その瞬間、肌をざらっと撫でるような嫌な予感が体を駆け抜ける。


「その魔物! ポイズンヒポポタマスです!!」


 フローランは知っているかもしれないが、もし知らなかったらと、マルティナは必死で叫んだ。


 その叫びにフローランがチラッとこちらを見た瞬間。ヒポポタマスが魔法を使う仕草を見せる。普通のヒポポタマスは、そこまで強力ではない水魔法を使えるだけだ。魔法を警戒する必要はあまりない。


 しかし、たまにポイズンヒポポタマスと呼ばれる、ただの水ではなく毒液を吐く個体がいるのだ。その毒液に触れてしまうと、少量でも体が痺れて動けなくなる。


「サシャさん!!」

「分かってます!」


 ヒポポタマスの標的になっていたサシャの名を叫ぶと、突進してくるヒポポタマスをすれ違いざまに斬ろうとしていたサシャが、全力でその場を退いた。


 すると突進を装っていたのだろうヒポポタマスは、まさに先ほどまでサシャがいた場所に向かって毒液を吐く。


 バシャッと吐かれたのは、紫色の液体だ。


「やはりポイズンヒポポタマスです! 絶対にその毒液を喰らわないでください!」

「かしこまりました。感謝申し上げます!」


 フローランはそう告げると、遠距離攻撃メインに切り替えたらしい。風魔法を使って魔物の急所を狙っていく。サシャも雷魔法メインに切り替えたようだ。


 特にヒポポタマスは沼地に生息している魔物であるため雷魔法に弱く、サシャの攻撃が効いているらしい。


「二人とも動きがいいな」


 戦闘の様子を観察していたのだろうディアスの声が聞こえてきた。


「倒れるな」


 ロランの言葉が聞こえた直後、サシャの雷撃が魔物を襲い――その巨大はドンッと横倒しになる。討伐完了だ。


「やりましたね!」


 マルティナがつい大きな声を出してしまうと、ロランも笑顔で握り拳を突き出してくれた。


「ああ、やったな」


 拳をぶつけて、無事の討伐を喜び合う。


 しかしそれと同時にマルティナは、あのヒポポタマスがうじゃうじゃと群れになっていただろう瘴気溜まりの周囲を更地にしたディアスの力を考えてしまった。


(万が一の時はディアス様に助力願いをって思ってたけど……やめた方がいいのかも)


 近くにいる時にディアスが力を発揮したら、その攻撃に巻き込まれそうだ。


「そろそろです!」


 討伐完了の喜びも冷めぬうちに、ハルカの声が響いた。すでに瘴気溜まりは人の背丈よりも小さくなり、あと少しで消滅しそうだ。


 マルティナはハルカの様子をじっと見つめた。


(ハルカ、本当にありがとう)


 自然と感謝の気持ちが湧いてくる。別の世界から無理やり連れてこられたハルカがこうして尽力してくれるのは、本当にありがたいことなのだ。


 それからすぐに瘴気溜まりは消滅し、ハルカが振り返った。その表情は晴れやかな笑みで、突き上げられた拳はすぐに解けて手を振る形になる。


「やりました! 浄化完了です!」


 ハルカに向けて、マルティナは笑顔で両手を振った。


「ハルカありがとう! 凄かった!」


 マルティナの言葉に、ハルカはさらに嬉しげな笑みを深める。そうして一つ目の瘴気溜まりの浄化は、問題なく完了した。

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