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図書館の天才少女〜本好きの新人官吏は膨大な知識で国を救います!〜  作者: 蒼井美紗
第12章 竜との交流編

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208、マルティナの能力

 声をかけたら素直に意識を向けてくれたディアスに、マルティナは緊張しながら問いかけた。


『私には、完全記憶能力と言うべき力があるのです。一度読んだ書物の内容は一言一句違わずに覚えておけます。一度見た景色も記憶しておこうと思えば寸分違わずに記憶でき、それを紙に描き出すこともできます。この力を持つ他人に出会ったことがなくて――これは、ディアス様の子孫であるという話と関係があるのでしょうか』


 すぐに了承を得られたならば、マルティナは竜の子孫であるという話の信憑性が一気に増す。緊張しながら待つマルティナに、ディアスは一気に嬉しそうな笑みを浮かべた。


『マルティナはその能力を持つのか! それはめでたいことだ!』


 この反応はどういうことだ? 迷うマルティナにディアスは続けた。


『そのような能力は竜の中でも一般的ではない。我とて全てを覚えておくなど不可能だ。何度も繰り返し読み、記憶しようと努力したものしか記憶できぬ。しかしごく稀に、竜の中にはマルティナのような力を持つ者が生まれると聞いたことがある。もはや伝説のような話で、おそらく数千年に一人もいないレベルだろうが……まさかマルティナがその力を持つとは!』


 嬉しそうなディアスとは裏腹に、マルティナは複雑だ。伝説レベルで稀なことだとしても、竜の中でそういう話があるのであれば、マルティナがディアスの血を引いているというのはほぼ確実なのかもしれない。


 喜ぶのも悲しむのも違う気がして、反応に困ってしまう。


『かなり血は薄いが、マルティナにはその部分だけ影響が強く出たのかもしれんな。少し見ていただけで、身体能力などは全く竜とは思えぬ様子だったのでな……』

『うっ、えっと……それには反論できません』


 確かに竜の血を引いているのなら、もう少し運動神経がよく生まれても良かったのではないかと思った。竜どころか、普通の人よりも体力がなく鈍臭いマルティナである。


『まあとにかく、マルティナは我の同胞ということだ。優秀な同胞がいてうれしく思うぞ』


 ニッと嬉しそうな笑顔で背中を叩かれると、マルティナも少しずつ笑顔になった。しかし、やはり少しの不安が胸に残る。


(私は竜の血を引くんだ……)


 その事実はマルティナの中でとても大きなことだった。少し視線を下げたマルティナに気づいたのか、ロランがマルティナの顔を覗き込むように声をかける。


「大丈夫か? 話の内容は分からないが、マルティナの能力の理由が分かったのか?」


 心配そうに眉を下げているロランを見たら、マルティナは急速に不安感が取り除かれているのを感じた。自分でも驚くほどに、竜の血を引いているということが、そこまで大きなことではないと思えてくる。


(私が竜の子孫でも、ロランさんは変わらないと信じられるからかな)


 それに他の皆も変わらないだろう。素直にそう信じられた。そして周りが変わらないならば、別にマルティナがどんな過去を持っていようが関係ないのだ。


「――私の能力は竜の中でも伝説と言い伝えられるような稀な力らしいですが、確かに竜として存在している能力だそうです」

「つまり、マルティナが竜の子孫って話は本当なんだな」

「はい」


 素直に頷くと、ロランはいつも通りの笑みを浮かべてくれた。


「そっか。霊峰でも言ったが、マルティナはマルティナだ。何も変わらないからな」


 その言葉と笑顔にさらに胸が軽くなる。マルティナは躊躇うことなく、ディアスに聞いた話を皆に伝えた。


 誰もが頷きつつも何も言葉を発せない中で、ハルカが口を開く。


「これは言っていいのか分からないんだけど……わたしはちょっと嬉しいかも。ほら、同じ別の世界に繋がりがある者同士って感じで、今までよりも親近感が湧くかなって……」


 躊躇いがちに伝えられたハルカの言葉は、マルティナにとって目から鱗の見方だった。確かにこの世界ではなく別の世界にルーツがあるという点で、マルティナとハルカは共通点を持つことになるのだ。


「確かに、ちょっと嬉しいかも」


 よりハルカと距離が近づいた気がして、頬が緩んでしまう。


「マルティナもそう思ってくれる?」

「うん。共通点が増えるのって嬉しいから」


 マルティナの言葉にハルカは満面の笑みになる。二人が手を取って笑い合っていると、ずっと何かを悩んでいたディアスが覚悟を決めたようにマルティナを見た。


『マルティナ』

『はい。なんでしょうか』

『我はそのリール語を学ぶことにする。帰還の魔法陣について研究するのに、リール語を使えないのはかなり不便みたいだからな』


 ディアスが学んでくれるのはとてもありがたいことだ。ここまではマルティナが通訳をしてきたが、ずっとマルティナが側にいるわけにもいかないのだから。


『ありがとうございます。覚えていただけると大変助かります』

『よしっ、ではさっそく教えて欲しい』


 やる気満々でマルティナに迫ったディアスに、ラフォレが恐る恐るという様子で口を挟んだ。

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