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異世界に向って撃て!!~頼みの綱は6連発~  作者: 秋津モトノブ
駆け出し冒険者ウエストウッド
36/80

36話 ここ最近嫌な予感しかしねえ、バグか?

「うーん!壮観やね!」


「殺しも殺したり、だなァ」


 焚火に照らされる山を見る。

そう、盗賊から剥ぎ取った装備の山だ。


 持ち主?

ああ、そこら辺に埋めたよ。

今回はキケロも手伝ってくれたからすぐに済んだ。

今は婆さんと一緒に夢の中だ。


「昨日の連中とは明らかに質が違うなァ、別口かねえ」


「せやな~、ぜんぜん臭ないし……うわくっさ!?」


 何故か超至近距離で鼻を鳴らしたマギやんが仰け反る。

……そりゃ、いくら綺麗でもブーツは臭ェだろ。


「マギやんはひょっとしなくても匂いフェチの変態か」


「ちゃ、ちゃうッ!ウチそないな変態やあれへん!?あれへんからなっ!?」


 マギやんの顔は夜でもわかるくらいに真っ赤だ。

匂いフェチっていうか……若手芸人ムーブっていうか……

やっぱり帝国人は関西人ソウルを宿しているんだろうか。


「ま、それはいいとして……楽しい楽しい戦果確認タイムといこうか」


「……釈然とせえへんけど!せえへんけどやるっ!!」


 てなわけで、さっきまで命だったものの持ち物検査に勤しむことにした。

この分だと絶対にいい臨時収入になるぞォ~♪

 

 ……いかん、人殺し2日目にして順応し始めている。

これがいいのか悪いのか。

……ま、慣れって大事だよな、うん。



・・☆・・



 さて、まずは……防具か。


「マギやん、血塗れなんだが」


「かめへんかめへん、血汚れは魔法で落とせるさかい」


 マギやんのハンマーは、盗賊どもの膝を破壊しまくってたからな。

どれもこれもへし曲がってやがる。

革製の方はまだいいが……いくつかある金属製のものは履けそうにない。


「いい金属使っとるなぁ!これは売れるで!昨日の連中とは大違いやな~♪」


 ……ということなので、まあいいか。

昨日のは腐りまくってたが、こっちのは手入れも行き届いているように見えるし。

とりあえずブーツ類、それにガントレット類も確保だな。

婆さんの馬車は荷台にだいぶ空きがあるので、楽々積載可能だ。


「胴鎧もええのばっかりやなあ、お!ウッドウッド、コレ当ててみ、コレ!」


「……血塗れなんだが」


「もう乾いとるから大丈夫や!コイツ着とった奴は頭砕いたから返り血やし!!」


「……おう」


 マギやんが革製の鎧というか、ベストみたいなのを差し出してきた。

……確かに血に染まってんのは首元だけだから、胴体が破裂したんじゃねえけどさあ。


 おっかなびっくりそいつを受け取り、ポンチョを脱いで胴体に当てる。

おお、サイズも丁度いいやな。

ポケットも多いし、地味に便利そうだ。

……血塗れだけど。


「内側に【衝撃軽減】と【剛性上昇】の加護が刻まれとるで!なかなかの値打ちモンや!買うたら金貨2、3枚はいくやろなあ~」


「……マジか。でも、オレが貰ってもいいのかよ?」

 

 値段聞いたら所有欲が湧くな。

我ながら俗だねェ。

だが、その加護はかなりアツいもんな……目下の防御力問題にケリがついちまう。

とりあえず、キープしとくか。


「ええで~!ウチらはチームやし!お互い納得ずくなら問題あれへん!それに……にへへ、ウチにゃあ着れへんしな、ソレ」


「……ああ、なるほど」


 巨乳だもんな、マギやん。

胸まわりは明らかにオレよりデカい。


「ウチはこの鎧もあるしな!……なんやなんや、そないにいやらしゅう見つめられたらかなわんわ~♪困るわ~♪」


 微塵も困ってなさそうな顔でクネクネすんじゃねえよ。

胸が大変なことになってて目のやり場にマジで困るんだよ!

もうずっと鎧着ててくれねえかな!せめて仕事中は!!


「んふっふ~、その代わり他にええモンあったらウチも貰うで~」


「ああ、それについちゃかまわねえよ。それ以外は売り払っちまえばいいんだしよ」


 目利きとかできねえし、そこらへんは全部マギやんに丸投げだ。

ガントレットは自前のモンがあるし、足はブーツがある。

防具関係じゃ特に欲しいモンはねえな。

タリスマンもあるしよ。


「防具はこんなもんやな!ウチも欲しいもんはないし、いい稼ぎになんで~♪」


「確かに、思わぬボーナスができちまった……幸か不幸かは知らねえけどな」


「ぼ……なーす?」


 嘘だろこの言葉には翻訳の加護乗らねえのかよ。

前から思ってたが、ちょいちょい翻訳してくれねえよな。


「地元の言葉で臨時収入ってこった」


「あー!なるほど!ええ言葉やな~!ボゥナス!!」


 ま、この程度で『ニホンジン』認定はねえだろ。

だが、マギやんの前以外では気を付けねえとな。

うっかり詳しい奴に聞かれでもしたら、痛くもねえ腹を探られることになるかもしれねえしな。


 さて、次は……盾と武器類だな。

正直オレには不要のジャンルだから、マギやんに任せようか。


「オレぁ武器も盾もいらねえぜ。マギやんが好きにしてくれたらいい」


「ぬ~ん、ウチも今の分で満足はしとるからなあ……盾もあんまデッカイのはいらんし」


 そう言いつつ、マギやんが装備の山を掘り返している。


「とりあえず、中盾以上は全部売っぱらうで~……これも、これも、これもや」


 防具の時とは比べ物にならない速さで仕分けが済んでいく。

お互いに不要なジャンルだしな。


「お!これ【衝撃反転】付いとるやんか~!せやけどデッカイからいらーん!こっちは……うげ、【詠唱短縮】かいな、いらーん!」


 正直、何の加護が刻まれているかはオレにもわかる。

なんたって【翻訳の加護】があるからな。

普段使っている言葉じゃなく、【魔術語】ってやつらしいがそこは神サマ直々の加護、問題なく読める。

だけど、マギやんの解読スピードは無茶苦茶早い。


 オレならまず刻まれてる場所を探すところから始めるんだが、なんか武器防具ごとに決まりのようなもんがあるらしく……目利きのマギやんにはとてもかなわねえ。

適材適所だ。


「ほいほい、次は武器類やんな!むむっ!」


 大分仕分けが済んだ装備の山から、マギやんがナイフを取り出してじっと見ている。

なんか高級なやつかな?


「ウッドウッド!これ、【火炎魔法】の加護が付いとる!料理やら何やらの時に便利やで~!」


 お、地味に便利だなソレ。

ナイフ型の〇ャッカマンってことだろ?


「魔法がからきしなオレでも使えるのか?」


「せやせや!ここ見てみ!」


 マギやんが指差したのは、ナイフの鍔元にある丸い宝石だった。


「この子はこの魔石由来の魔力で動くんや!こっちの消費はゼロやで~……ま、一度に使い過ぎたら砕けるんやけどな」


「一度に……使い過ぎなかったら?」


「極小の火炎魔法やから、ほっといたら大気中の魔力を吸収してずうっと使えるで!結構高いんやコレ!」


 ……つまりソーラー発電みたいなもんか。

なるほど、そりゃあ本当に便利だな。


「せやからこれは……うちらの共有財産やな!」


「ああ、異存はねえ」


 というわけで、ナイフは確保する。

さてと、あと残ってるのは……剣と斧、それから杖だな。


「杖は専門外やから売り一択やな!そもそも杖の時点でそこそこの値段はするもんやし!」


 杖2本は一瞬で仕分けられた。

オレもいらねえ。


「さあて、斧は……ふむふむ」


 身長ほどある大斧をひょいと持ち上げるマギやん。

相変わらずのパワーだぜ。


「こいつは【筋力上昇】、こっちは【衝撃付与】、んでこの子は【重量軽減】……ま、普通やな。加護付きの最低値では捌けるやろ」


 斧も杖と同じように即仕分け。


「いよいよいっちばん数の多い剣や!……の前に、ウッドウッド、これいる?」


 マギやんが持っているのはクロスボウだ。

あの商人風のオヤジが持ってた小さい奴だな。


「いらねえ。見た目からして近距離の暗殺用かなんかだろ?」


「せやね、装填しとった矢にも強めの毒が塗られとったで」


 なおさらいらねえな。

【ジェーン・ドゥ】も連発式クロスボウもあるし。

さすがに2つ目のクロスボウはいらねえよ。


「よっしゃよっしゃ、ほなら……フンっ!!」


「うおッ!?」


 マギやんはそいつを地面に置き、拳を打ち下ろした。

ゴツいアーマー付きのパンチは、クロスボウを一瞬でスクラップにした。


「こないなややこしいもん、売るわけにはいかへんし……なによりウチはこういう暗殺用の武器は嫌いなんや!」


「いや、別にいいけどいきなりやらねえでくれよ。びっくりしちまった」


「なはは、スマンスマン」


 パンパンと手を払い、マギやんは剣の山に手を伸ばした。

……今更だが、ロングソードってのはみんな同じような形してんのな。

斧や杖なんかはバリエーションがあったが、剣はどれもそう変わりがない。

せいぜい長短で差があるくらいだ。


「おー!鋼もええもん使うとるやんか……さて加護は……あ?」


 ウッキウキで鑑定しているマギやんが停止する。

……どうした急に。


「……うせやろ?こないな偶然……いや、まさか!!」


 かと思えば再起動し、別の剣を手に取った。

それをしばらく見て、さらに次の剣を。

足元に剣をどんどん落としながら、目を皿のようにして鑑定している。


「これも、これも、これも……そうや!ほ、ホンマにぃ……」


 あっという間に流れ鑑定は終わり、マギやんは俺の方を涙目で見てきた。

急にどうした。


「う、ウッドぉ~……」


「なんだよ急に情けねえ声出して。全部ナマクラだったのか?見た目はいいと思うんだが……」


「ちゃうぅ~……コレや!これェ!!」


 マギやんが剣を一振り取り、柄尻の方をオレに向けてくる。

急にそんなもん見せられてもオレに良し悪しなんざわかるわけ……あ?


 そこに刻まれていた紋章には、覚えがあった。

昨日襲撃してきた盗賊の頭が持っていたのと、同じ……【槍持つグリフォン】の紋章。

そいつは、たしか……



「―――【ホーンスタイン公爵家】の紋章や……しかも、ここにあるんは全部そうや」


 

 オレは、自分が何かデカい面倒ごとの最中に入り込んだように感じた。

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