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1.隣の席のマドンナ――安藤菜穂。

連載版を作りました。

もしよろしければ、応援いただけますと幸いです。










「ほら、悠! さっさと焼きそばパン、買ってきなさいよ!」

「………………!」



 イジメの主犯格である女子生徒が、ボクにそんな指示を出す。

 こんな生活が始まって、もうどれだけの月日が経ったのだろうか。実際にはまだ一年と少しなんだけど、もう十年は経っているように錯覚した。

 それほどまでに、毎日が辛い。

 相手が理事長の孫だから、逆らうこともできなかった。

 もし逆らったとして、なにか仕返しをされるのが怖かったんだ。



「でも……!」



 なにか、行動を起こさないといけない。

 もうイジメに怯える毎日なんて、ウンザリだ!


 だからボクは、決断した。

 この地獄のような日々から抜け出すために、変わってみせるって……!







「えー、今日からこのクラスに転校してきた篠宮悠くんだ。時季外れの転校ではあるが、どうかみんな仲良くしてやってほしい」

「し、篠宮悠です! よろしくお願いします!!」



 一か月後、ボクは別の高校にいた。

 県下でも有名な私立、立花学園。偏差値はそこまで高いわけではないのだけれど、とかく潤沢な設備が整っていた。バックにあるタチバナグループという会社は、世界でも有数の企業として名前が通っている。

 そんな学校に、父親の仕事の都合ということで編入したボク。

 緊張しながらも挨拶すると、数秒の間を置いて、熱烈な拍手で迎えられた。



「これ、少し落ち着きなさい! ――篠宮くんの席は、窓際の最後尾だ」

「分かりました」



 なにやら、クラスメイトの視線が熱いのだけど。

 その理由が分からないまま、ひとまずボクは窓際最後尾の空席に腰かけた。するとすぐに、隣の席にいた女子生徒が声をかけてくる。



「わたし、安藤菜穂! よろしくね、篠宮くん!」

「う、うん。よろしく」



 ――安藤菜穂。

 そう名乗った女の子は、栗色の髪をした癒し系な外見をしていた。

 ゆるふわ系の美少女とも表現できるだろうか。柔らかなその微笑みは、以前の学校では間違いなく見られなかったもの。向けられているだけで、胸の奥が温かくなってきた。

 だからボクも自然と笑みを浮かべる。


 すると、



「はわ……!」

「え?」

「う、ううん!? な、なんでもないの!!」



 どうしたのだろうか。

 安藤さんが、顔を真っ赤にしてしまった。

 風邪でも引いたのだろうか。――この一瞬で?



「ね、ねぇ……?」

「うん?」



 そう考えていると、モジモジしながら彼女はボクにこう訊いてきた。



「篠宮くん、って。彼女さん、いるの?」――と。





 何気ない質問一つ。

 だけど、この時のボクはあんな事態になるとは思ってもみなかった。



 



今日は合計で三話投稿します。



面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!


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