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私の気持ち 7

 みんなで食べるケーキだけど、タダは私にケーキ作ってくれるって言ってた。ヒロちゃんも言ってたし…

 …私のために…と綺麗に飾られたケーキを見つめる。

 タダが私のためにこんなに可愛いケーキを作ってくれた…

 誕生日のチーズケーキだってすごく美味しかったけれど、これもとても美味しそう。


 「今ユズがな、」とヒロちゃんが言うので、見つめていたケーキからパッと目を離した。

ニヤニヤ笑いのヒロちゃんは、胸の前で両手を組んで目をつぶり少し上を向いて高い声を出して言った。

「『私のために…私のためにこんな可愛いケーキを焼いてくれたなんて…』って、なってるからなユズが。な?ユズ、そうよな!な!な!な!」

「…」

そうだけど!


 

 少し前まで私が、あんなにヒロちゃんを好きな気持ちの塊を送っていた時には軽々スルーしていたくせに、こんな時ばっかり人の心を読み取るからなヒロちゃんは。しかも不細工な感じの物まねまでして。

 もう~~~~~!と思って、無言で唇をぎゅっと結んでしまったら、ヒロちゃんが私を指差してゲラゲラ笑って言った。

「ほら、オレが言い当てたから変な顔してる。ユズ、ブスな顔になってっぞ。なあイズミ?」

タダに振るな!

 …やっぱりタダも変な顔って思ったかな今の…

 「ヒロにい!」とカズミ君が口を挟んだ。「ブスとか言ったらすごい先生に怒られるよ。大島はブスじゃないし!」

「お~~~…そうか、そうだよな、カズミ。すげえ先生にも女子にも怒られるよな。でもほら、ユズが変な顔してっから…」

「しつこい!」ユキちゃんがヒロちゃんに言って、言い終わらないうちにヒロちゃんのみぞおちをグーで殴っていた。

「うっ」

呻いて殴られたところをさするヒロちゃんだ。

 ユキちゃん…私もちょっとヒロちゃんの事ぶっ飛ばしたいと思ったけども!


 「いいじゃねーかちょっとふざけただけだろ」とヒロちゃんがユキちゃんに拗ねた振りをする。「イズミがユズのために作って、ユズがちゃんとそれを喜んでんだから。オレは嬉しいぞ。な?イズミ?作った甲斐あったよな」

ヒロちゃんの言い草に、タダは「ふっ」と笑ってから言った。

「まあな」


 

 うっわ…『まあな』だって…

 うわ、なんか今、タダのこと滅茶苦茶カッコいい~~って思った自分がこっ恥ずかしい。

 ヒロちゃんに、「うるせえ」とかって答えるかと思った。ふわ~~~~、と自分の頬が熱くなるのがわかってパッと両手で押さえた。

 

 

 …ていうか、ユキちゃん。スマホ取り出してケーキ写すのかと思ったら、私の持ってきた鳥の丸焼きの写真撮り過ぎじゃない?いろんな角度から、本当にもういいんじゃないかってくらい撮ってるけど。

「ねえねえユズちゃん、この丸焼きの写真、私の友達に送って見せてもいい?」

「え、丸焼きを?ケーキの方がみんなすごいって言うんじゃないの?」

「あ、ケーキも撮ろうとは思ったけど、ユズちゃんが撮ってからにしようと思って。せっかくタダ君、ユズちゃんのために作ったのに」

私に遠慮してくれてたのか…


 「でもいいなあ~~~」とユキちゃんが本当に羨ましそうに私に言ってくれる。「手作りのケーキとか作れる男子ってすごいよね!タダ君すごいよ。余計女子にモテそう」

 本当にそうだと思う。私が誕生日にチーズケーキを焼いてもらった事がクラスの女子のみなさんにバレた時もザワザワ感がすごかった。

 …あの時はまだヒロちゃんの事が好きだったのに…


 あ、まずい!この間の微量なチュウ思い出したこんな時に!

 タダをチラっと見ると、それに気付いたタダが、ふん?て顔をした後にニッコリ笑ったのでドキッとしたが、それを隠すためにへへっと笑い返した。

 ダメだこんな時にアレ思い出したら。

 あれはなかったことなかったことなかったこと…


 

 「オレはぜってえケーキは無理だからな」とヒロちゃんがユキちゃんに言う声で心の中の呪文を止めた。

「オレに作れって言っても無理。…あ!でもお好み焼き、ケーキ代わりに作ってやるわ次の誕生日は。形はほぼケーキだからマヨネーズをクリームみたいにバカのせしてすげえうまいヤツ作ってやるから。もう豚もイカもタコも餅とかチーズも全部ぶち込んで。あ!ユズもユキと誕生日一緒じゃん。来年はユズにもお好み焼き作ってやっから。カズミにも作ってやるわ」

え、ヒロちゃん、私にも作ってくれるの?お好み焼きってとこがヒロちゃんらしいよね。マヨネーズ、バカ乗せもヒロちゃんらしい。

「やった~~」とカズミ君は大喜びしたが、「もう~~お好み焼きって」とユキちゃん。

「一応スイーツがいいな。ねえ?ユズちゃん?」

「…いや…そんなことないよ。私はお好み焼き嬉しいかも」

「ボクもボクも~~~」とカズミ君。

私の顔色をちょっとうかがうユキちゃん。「本当は私もユズちゃんと一緒に食べられるならお好み焼きでもなんでもすごく嬉しいんだ。今日も本当は私まで一緒でいいのかなって思ってたけど、一緒にクリスマス会出来てすごく嬉しくて、一人だけバカみたいに嬉しがってたら恥ずかしいって、今本当ははしゃぎ過ぎないようにしようと思ってるんだけど無理」

へへへへっと笑うユキちゃん。

「よしじゃあお好み焼き決定…」とヒロちゃんが言いかけたところにタダが言った。

「いや大島にはオレが来年もケーキ焼くことになってるから」

「「「…」」」


 ヒロちゃんたちの前で宣言されて、驚いたが急激に嬉しさとドキドキがこみ上げて来た。

『おおっ!!』と声を出したヒロちゃんが一番本当に驚いているようで、「すげえじゃん、そんな宣言イケメンから。お好み焼きとか言い出したオレが恥ずかしいわ」

 そしてなぜだか照れているユキちゃん。

 なぜユキちゃんが照れる。


 「もうお腹すいた~~」とカズミ君が言った。「大島、じゃなかった、ユズルの丸焼き食べたい!じゃなかった。ユズルが作った鳥の丸焼き!鳥の丸焼きのこと!丸焼き食べたい!」

「そうだよね!」とカズミ君に力強く答えるユキちゃんだ。「丸焼き食べたいよね!私もすごく食べたい!もうさっきから良い匂いし過ぎ!」

 タダがキッチンからナイフを持って来て肉を切り分けはじめ、ユキちゃんが家から作って来てくれたサンドイッチを大量にテーブルに並べ、ヒロちゃんもヒロちゃんのお姉さんのミスズさんが朝から大量に焼いて持たせてくれたタコ焼きを、タダの家のオーブンで温めなおして、それぞれの取り皿にわける。私はグラスにコーラとオレンジジュースを注ぎ、カズミ君は私たちを見て目をキラキラさせながら行儀よく待っていた。

「じゃあ行くぞ」とヒロちゃん。「手を合わせてください!」

「おべんとの時みたい~~~」とカズミ君。

本当だ。給食の時を思い出すな…

「いただきます!」ヒロちゃんが言って、私たちも声を合わせた。

「「「「いただきます!」」」」

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