15 条件その4
マイティーパンツとは、簡易的に着用できるマワシである。パンツの腰に太いベルトがあり、横マワシの役割を果たしている。
マワシよりも購入しやく安価なのがマイティーパンツだ。明美は、そのパンツの中でも足首まで隠れているロングマイティーパンツを選んでいたのだ。
「ピンクで可愛いし、これしかないよね」
「そこに目をつけるとは、この士道、素晴らしい観察眼を持っていると称賛する」
「そうでしょうそうでしょう。これはね~、さっき電車の中でパンフレットを確認していた賜物なのです」
えっへんと胸を反らせる明美。
「マイティーパンツはベルトを取ることによってスポーツウェアにも変化するから一石二鳥だぞ。この士道、お薦めする」
これも本心である。と、言うか最早建前など無いに等しいのであった。
「でも、そうなってくると、上半身のスポーツウェアも欲しくなるんだよね」
明美の視線は陳列されている商品に向けられる。
「購入するか、しないかはともかくとして色々見てみるといい。なんなら試着もできるぞ」
「本当? ありがとうー。色々見てみようっと」
「後で試着しやすいように、この士道、買い物カゴに入れておいてあげよう」
明美の手から商品を受けとると、カゴの中に入れる。
「上下ピンクで統一するか、爽やか清純でいくか、それともアンバランスで決めるか、どれも捨てがたいんだよねぇ~」
鏡の前で気になる色を合わせていく明美。スポーツウェアを選んでいく状況の中で一つ気づいていない事を指摘する弓弦。
「将来的にマワシを購入するのであれば、それに合わせた色も考えた方がいいと思うぞ。この士道、店内には様々な色のマワシがあり、大会でそれらを着用出来ると断言する」
「本当~? じゃあ、ちょっと試着しちゃおっかな~」
明美の視線は試着室に向かう。
弓弦はとてとてと歩いていくと、試着室のカーテンをスライドさせた。
「気になるのがあれば実際に着てみればいい。この士道、マワシの締め方は熟知している」
「すごいねっ。なんでも出来るんだねっ」
「当然だ。この士道、出来ない事はないっ」
「じゃあ、スポーツウェアに着替えたら呼ぶねっ。宜しくお願いしますっ」
シャッ、とカーテンを閉めて着替え始める明美。
「撫で撫であるかと思ったが、無かったな」
少し残念そうに前髪をいじって、着替え終わるのを待とうとする弓弦。
「何か言った?」
だが、直ぐにカーテンから顔だけ出した明美に声を掛けられる。
「なっ、なんでもないぞっ。サイズが合わないときには、違うのを取ってくるから言ってくれ」
不意打ちの問い掛けに対して跳ね上がる勢いで振り向き返答する。
「いつもの口癖が無いね。驚かせちゃったかな?」
にっこりと微笑んで試着室の奥へと消えていく。
「毎回言うことでも無いのだよ。この士道、の事は心配ご無用である」
「いつもの調子が一番だよ。弓弦ちゃん、お人形さんみたいで可愛いもん」
「この士道、よく言われる。(だが、その言葉はボクに取ってはモノ扱いされているのと同義なのだ)」
弓弦は波防人か? 人間か? たまに自分が判らなくなる。
『人形とは傀儡。ボクは人間にとっても、波防人にとっても都合のいい存在として扱われるのを良しとしない』
「だって髪の毛のサラサラ具合が私が小さい頃に持ってたおもちゃの人形と一緒だもん」
「ボクとおもちゃの髪の毛は同価値か! 面白い、この士道、新道様のマワシは思いっきり締め込んでやろう! そう宣言する!」
明美が返事もしないうちからカーテンを引くと同時に中に入っていく。
「ちょっと待って、弓弦ちゃん、もう少し……」
「いいやっ、待たないねっ。この士道が選び抜いたマワシの中でも特別に固く、デザインが武骨な男らしいのをがっちり締めてやる」
「あ~れ~」
弓弦の逆鱗? に触れた明美は……




