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土色の青春  作者: あん
14/25

14 条件その3

「ここが弓弦ちゃんの店なんだねっ」


 電車とバスに揺られる事、約一時間半である。


 弓弦の経営する士道武具店は海沿いの造船所にあった。

 正しくは造船所の区画の一角に店を構えていた。和風な店構えとなっており、のれんを掻き分ける形で明美は入店する。


 尚、吹雪に関しては、「他の部員が来るかもしれないから待っておくわ。明美さんは気にせずに行って来て頂戴」とそれだけ発言すると、他の事には興味もくれず神話の本へと視線を落としたのである。


「おじゃましま~すっ」

「別にボクの私室では無いのだから、おじゃましますはいらないぞ。この士道、新道様、ようこそいらっしゃいました。いやっ、いらっしゃいませと頭を垂れる」


 店の鍵を開けて先に店に入った弓弦は直ぐに振り返ると、恭しく頭を垂れた。


「丁寧な弓弦ちゃんも可愛いねっ」


 指通りのいい弓弦の髪の毛の感触が好きになった明美。

 頭を撫でられた弓弦は髪の毛を梳かされる指先の感触に目を瞑って気持ちよさそうにする。

 弓弦自身、わるい気をしていないようで、されるがままになっている。


「とっ、とにかく実際に商品を見てくれないか?」


 こじんまりとしている個人店舗の中であっても商品の種類は豊富である。相撲に関する商品に特化してはいるが、その中でも目を引くのはスポーツウェアの数々であろう。


 男性用で上半身に着用するスポーツウェアは、脇を露出させているノースリーブ、脇を隠して肩の少し下までのハーフスリーブ、手首までが隠れるロングスリーブ。


「この中ではロングスリーブかなっ。真っ黒いロングスリーブだと、遥ちゃんの筋肉が映える気がしない?」


「一理あるな。アレは顔は女の子みたいな顔をしているが、筋肉だけはそこそこにある。これは自然に肌に馴染むナチュラル素材、通気性もよく速乾、柔らかいが丈夫で長持ち、そして何より上下セットのものも有りお買い得でもある」


 即断即決した明美の言葉に肯定の言葉を重ねていく弓弦。営業トーク的な部分もあるが、明美の考えには全面的に同意している。


「上下セットっ! そういうのもあるの? じゃあ、それを購入しよっ。この黒一色のスポーツウェアに白いマワシにすると見栄えがよくなる気がするよぉ~」


『そうなると今現在、遥が持っている白いマワシで事足りるので、新たに購入されない事になるな。売上ノルマは大事だが、継続してお付き合いして貰う為に、ここは押さずに引くべきだ』と弓弦は考えた。


「ふむっ、白いマワシに合う色と言えば紺色、茶色、灰色など言った一見暗い色になるな。この士道、もちろん黒のスポーツウェアも良いと思うが、アレの事を想像して似合う色を考える事をお勧めする」


 着用する遥の試用期間が一番長いのだから、ここは遥の事を考えながら慎重に選びたい所でもある。


 ハンガーに掛けられて陳列されているスポーツウェアを次々に確認しながら、明美の思考は雑談方向へとシフトしていく。


「んー……言われてみるとそうかも。遥ちゃんの為にも、もうちょっと確認してみるよ。そう言えば、ちょっとここ一週間程ダイエットしていて判った事だけど、運動している時って汗を沢山かくから、清潔感ありそうな格好の方がいいよねっ、と思ってしまうよ。遥ちゃんも吹雪ちゃんもよくタオルで身体を拭いているし、私もそれに倣ってタオルを持って行ってるんだよ」


「うむっ、運動しているとどうしても汗をかいてしまう。それに対して対策は必要だ。あの部室には幸いにしてシャワー室もあるみたいだな。この士道、練習の時に使うタオル、シャワーの時に使うタオル等、そういった使い分けも必要になると思うぞ」

「基本だよねぇ~……そういえば、遥ちゃんのアレってどうなっているのかな?」


「アレっ? とは一体何の事であろうか? この士道、質問の意味を問いただしてみる」

「えっと、ねぇ……あれっ、実際どう言ったら伝わるか判らなくなってきた」

「ふむ。言い淀む、と言うならそう言う事なのか? この士道なんとなく察した」


 それは所謂、第三者目線で考えた時に誰もが疑問に思う事だ。


「マワシの中の事を言っているのであれば、この士道、アレのみならず全ての男性は相撲用のサポーターと言うものがあり、きちんと保護は出来ている。直接マワシを締めていると言う事はないと断言する」

「じゃあ、衛生面は大丈夫だ。うんっ。いいなっ、これにしよう」


 明美は遥の為のスポーツウェアを選んだ。喋っている間にも商品はしっかりと確認していた。


「おっ、なるほど。この色なら、この士道、すごく遥に似合っていると太鼓判を押させて頂こう」


 営業トークでは無く本音である。


「ねー、いいよねー」


 ニコニコとしている明美の反対側の手には別の商品が握られており、弓弦はそれを確認すると、のほんとしていながらも割と財布のヒモは固いのだな、と感心した。


「私の予算では、これが限界かなって」


 明美の手に握られていたもの、それはピンク色のマイティーパンツであった。

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