協会と教会 1
翌日。
普段通りの高校、しかし、少しだけ雰囲気が違う。少しぴりぴりしているのを登校したとき感じ取っていた。
それは、まあ。当たり前の事だろう。
「うわぁ…テスト明日からかよ…忘れてた……。」
「大丈夫、アキ君、勉強会やったしさ。ね?」
日舞さんが慰めるように言うが、勉強不足とかそう言うのもあるけど、今俺が落ち込んでいるのは勉強不足の事ではない。
義腕はまだ後でも良かったじゃないか。数日くらい騙せるし、って事だ。半ば学校サボったようなものだから。
テスト前の授業は何かとヒントをくれるのだ。テストが出来上がっていると推測されるので具体性のある発言を盗み出せる。
………別に真面目に勉強してるよ? 一昨日は随分大変なことになって日常から頭が乖離してたからね。あ、そう言うところでは休んで良かったのか。あの状態で授業に集中できたとは思えないな。
…というか、昨日授業どこやったんだ?
ちょうど良い、日舞さんが目の前にいるわけだし、聞くとしよう。
「……そう言えば日舞さん?」
「……ふぇ……?」
「昨日は授業どこまで進んだのか教えて欲しいなーって」
「……うん、あぁ。……いい、ですよ?」
「ありがとう日舞さん!」
「昨日はね………。」
「実は脅迫状がきて高校、大混乱だったの。」
………はあ?どういうこった?
「それで、授業はほぼ自習。何にも進んでないの。」
「いやいや、昨日に何があったの!?脅迫状ってなに!?」
「内容は伏せられてるんだけど、変な文面だったから、悪戯ってことで処分されたけどさ。」
何じゃそりゃ。
「………取り敢えずありがとうね、日舞さん。」
「こちらこそ…。そ、それと!名前で呼んでくれるんだ!?」
「ん、まあ。」
「それこそありがとう。だよ。」
そう言い、席に戻っていく。今日も1日が始まる。
でも、何で、名前呼びってだけでありがとうなんだ? まあ良いけど。
「すべては天使様の為すべては天使様の為すべては天使様の為すべては天使様の為すべては天使様の為すべては天使様。貴方の為に。」
車椅子に乗った男がぶつぶつと呟きつつ部屋へと入ってきた。
男は骸骨にかろうじて皮が付いている程度の殆ど骨の体であった。
車椅子を押す者はおらず、男自ら操縦する事で車椅子は動くようだ。
そして男が入った部屋には目隠しされ、椅子に縛り付けられた人がおり、それを囲んで三人が呪詛のように何かを呟いていた。
そしてその内の一人である女性が男の来場に気付き、呟くのを止めて振り返る。
振り返る瞬間、女性の死んだような目に生気が戻ったように車椅子の男には見えた。
「あ、アリウネ様。」
「ああ、洗脳は進んでいるかね?」
女性はその言葉に少し考えた素振りを見せ、それからこう言った。
「このような形。本当に天使様は望んでおられるのでしょうか。」
「何だね? 天使様を疑うと言うのか?」
車椅子の男の発言は、有無を言わせぬ威圧感を放っていた。
「い、いえ……ですが、こんな、人攫い、洗脳、何てして、人道に反す……る…。」
「天使様に、逆らうのかね?」
「……いいえ。…天使様は絶対。…あの方は間違えない。…故に天使。」
女性は少しこの台詞を言うのに間があった。車椅子の男は気にはなったが、特に何も反応はせず、本来あるべきの言葉を続けた。
「間違えない天使様に近づくべく、天への門をくぐる。…そこで我らが間違っていなかったことを証明するのだ。どこぞの魔導協会になぞ、邪魔はさせない。」
そのまま退室する。振り返らなかった二人は、車椅子の男自ら何故ここに来たのか、理由は分からなかったが、微塵も疑問を持たなかった。
それが天使様を信じる者の姿だから。
放課後。
「あれ?あの子……。」
帰り際、とぼとぼと俯いて帰る、菊川と一緒にいた占い少女を見つける。
『声、かける、の?』
言い忘れていたが、御守りは自転車の鍵に付けた。どうやら変身でキーホルダーにもなれるらしく、さらに小さくなって鍵にくっついていた。
そしてどうやら離れても声を届くようだ。
───ん、いや、ひつようないでしょ。知り合いだけどそこまで仲良くないし。
俺は、声をかけずに帰った。
神社は相変わらず、高いところに存在していた。
いや、低くなればそれはそれで問題だがな。
結局、学校では村上さんは話しかけてこなかったし、俺から話しかけることもなかったが、後始末とやらが気になり、こうして足を運んだわけだ。
階段をものすごい勢いで駆け上がり、その終端までたどり着く。
その先に、いたのは。
「おや、誰ですかね貴方は?」
白ローブを着た丸眼鏡の白髪長身男性がそう問う。
「? いや、お前こそ、誰だよ?」
本当に知らない人だった。
「いえ、私のことはいいのです。それよりも貴方が魔導協会の手先か、虚無の天使様、虚天使を知っているか、この二点だけが重要なのです。ほかは、どうでも良いと言うわけです。」
どこかで聴いたことがある単語が紛れ込んでいたが、俺は知らないはず。少なくとも協会の手先はない。除名されてるし。
「手先では、ないし、天使とやらも知りませんよ。」
男は目の前まで近づく。鼻の頭同士がくっつきそうなほどに。
数秒ほどそうしてから満足したのか顔を離す。
「ま、嘘は無いようですね。他にはここに人が来る、などという予定がありますか?」
「ないですね。」
俺は即答した。なんか、面倒な匂いがする。まあ、待ち合わせている人もいないし、村上さんなんて、こないときあるし。
「そうですか。では、私はこれで。」
即答に満足して、男は階段を何段も飛ばして降りていく。
別に顔近づけるの毎回やる訳じゃないのね。
「ぷはあ!!」
神社の周囲の森林。入り口の茂みから転げ出てくる女子二人。
「…………どしたんだ?二人して。」
それは村上咲と菊川柚里だった。
ちょっとばらまいていた伏線ぽいのを終わらせることにしました。キリッ




