姫と刀
翌日。
高校へは行かずに、病院へ行く。一応高校には休むと言ってある。
刀は刃がむき出しで、持ち歩くのもアレなので何も言わずに家を出た。
義腕は手の一部がないのだが、魔法で形を偽装して、いつものを被せている。
昨日の帰りに人と遭遇しなくて良かったとは思っていた。
……病院へは自転車で向かった。
病院にて受付の人に要件を告げると。
「えー、トーマス・ヘディン医師は研究が忙しくなったとかで、ここにはもう……。」
………へ? そんじゃどうすればいいのさ義腕を?
と俺が困惑していると。
「ああ!でも言伝を言い渡されてますよ。はいこれ。」
受付の人が段ボール箱を渡してくる。
「『中には義腕の換えが三本入っている。大事に使ってね』だそうです。」
その箱は随分と重い。義腕三本でここまで重いか?
「………ありがとうございます。」
取り敢えず、俺はその場を後にした。
帰宅。
『なんか、ご主人暗くありませんかー!?何というか、何となく。』
………換えって、おまえどうするの?
『えー、無視っすかー?』
…どうするの?
『無視っすか、いいですよー。……説明書無いんですか?』
それもそうか。
家に帰り、リビングで箱を開封する。
ガムテープを端からべりべりと剥がす。
すると中には義腕が三本入っていた。のは良いが、何故か刀の鞘らしき物まで入っている。どういうことだ…?
『ああ、貴様が、買っ、てきたの、か?』
首にひんやり冷たいもの…刀の峰を当てられる。
───お前は、接触無しで話せないのか?
『まあ、慣れる、まではそ、うだろうね。』
『慣れでどうにかなるんですか………。』
…俺はひとまず、義腕を付け替える事を優先した。
説明書みたいなのが同封されていたので、それを見ながら。
「えーと、何々?…………えーと、核を傷つけないように取り出して新しい義腕につけましょう?…………っておい!なんだこれ!?」
核の記述
ヘディン製の義腕には核が必ず有ります。無くても動きますが、重要です。使用者には分かるはずです。
この核ですが、傷を付けると破損の原因となります。自動である程度修復される義腕内でなく外部で傷が付けば、機能しなくなる恐れが有ります。
等々書いてあったが。
核なんて初耳だぞ!?つか、たぶんこれAIの搭載されてるとこだろ?説明が雑だけれど。
『付け替えたら使用可能です。オールオーケー!!……雑ですねー。』
……なあ、片手でやるのか?
『魔力、の腕で、やればい、いんじゃないの?』
こわれたりしないの?大丈夫?
『不安ですからやめておきましょう。核部分に魔力の腕で触れるのは。』
説明書の通りに核移動完了!!
手の一部の欠けた義腕は後で使えるかもしれないので取っておく。
外を見るとまだ日が真上にある。時計は昼時を指していた。
『ご主人ー。いつもの感じに戻って来ましたー?』
かもな。
『お前、名前、は?』
あー、名乗ってなかったな。鐘本秋だ。
『シューか。覚えた。』
そっちはどうなんだ?名前あるのか?
『……生前の記憶はほと、んどなくて、名前は覚、えてない。』
生前の記憶? 昨日は…黒鬼、について知ってるような口振り…っていうか殺されたって言ってたけど、どういうことだ?
『……それは、まあ、ちょっと細、工をしてな。』
…………答えになってないぞ?…細工…まさか死んだ瞬間に刀に憑依したとか!? それならかなり信じられるけど。
『いや、細工は、記憶にしか干渉してない、し憑依し、たという、よりはさせら、れたと言うべき、か。』
………?
『まあ、名前だっ、たな。刀としては、ポールヘル』
「ああ、あのかっこわるい名前本当に刀の銘だったのね。」
『………やはり、刀に付け、る名前じゃ、ないよね?』
「少なくとも日本刀には似合わないよなぁ。」
『そだ!ご主人!ご主人が名付ければ良いじゃないですか!!』
俺が、名付ける………。
『…相当、変なのじゃ、なければ。』
良いのかなあ。
『早くしないと名前付けちゃうよー?』
少なくとも、にゃん刀とか区切り丸とかつけそうなお前には任せたくないな。
『つけませんよー?一瞬そんな感じの名前が頭をよぎってないと言えば嘘になりますが。』
…まあ、アイのネーミングセンスは微妙だな。そんなことを考えるとか。
『え!?そんなので微妙扱い!?』
にゃん刀って何だよ猫要素どこから来たよ。
『自分で言っておいてダメ出し!?』
あー、お前、これから〈夜叉姫〉な!ただの思いつきだけども別にいいよな!?
『姫………うん。いい、よ?』
何故疑問なのか分からんが、良いらしい。
じゃあ、夜叉姫、これからよろしく。
『…うん!よろしく!』
『で、鞘に綺麗に収まった夜叉姫さん。どーですか?収まり心地は?』
『さい、こう。』
取り敢えず、送りつけられた鞘に夜叉姫を収める。文句はなかった。
前の鞘は夜叉姫に負担をかけていたそうだ。形じゃなく、何かはわからないけれど。
使わない義腕は、自室に。
『シュー。』
「なんだ?」
刀を見る。するとポンと気味の良い音を立てて鍔辺りを中心に煙が出る。と、刀は消えた。煙は数秒経っても消えなかったが。
そして煙が消えると何の変哲もない御守りがそこにはあった。
しゅう は おまもり を てにいれた !
じゃねえ、なんだこれ?
『なんと、何でか、変身魔、法の使、い方を知って、たから、やってみた。維持には魔力、を使わない。変身す、るときだけ。』
御守りにはでっかく「夜叉姫」と書かれていた。
『刀は持ち歩けないだ、ろうから御守りにでも、なろうかと思、って。』
持ち歩くとか言ってないけど……まあ、武器を肌身離さず持ち歩くことができる方法を自分から言ってくれるのは良いんだけどね。
そしてこの時は、それがすぐに役に立つことになるとは知る由もなかった。




