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義腕の王  作者: リョウゴ
四章・非凡な少年と鋼色の牙
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義刀 2

「まて、待ってくれないか?」


 部屋から出た少女を呼び止めるように男は少女に声をかける。その手には、何か、棒のようなものを持っていた。


「? なんですか?その刀の鞘のようなものを持って。」


 そう。その棒のようなものはまさしく、刀の鞘である。


 男は少女に駆け寄り、それを渡す。


「封印すれば容易く回収できるだろう?これは、元々あの暴走刀が収まっていた鞘だ。譲っていただいた人曰わく妖気封印を可能とする物らしい。実際、抜刀するまではおとなしかったので間違いないだろう。」


 妖気、なんて概念は魔導師にはないが、少女はこの鞘が妖刀を封じて置けることは理解した。


 無言で受け取りそのまま外の、闇へと少女は消えた。










「うわぇっ!?」


 首元を通過する凶刃を紙一重で避ける。


 これまで隙を見て反撃したが、土で殴ったりしても、火で燃やしても、氷で貫こうとも、全く効いた様子はない。氷は弾かれたが。


 いっそ高く跳んでみようと、魔力の腕を大量に空へと伸ばしたが、目論見を看破したのか偶然か、魔力の腕を纏めて一太刀で切り裂かれ、魔力の腕が消失してしまった。


 これまでそこそこの距離を休まず駆け回り、魔力を散発的とはいえ使い続けた結果、底が見え始めた。


 最近神社の階段登ってないのが響いたかなあ……。


 中には浅くだが、斬られて出血しているところが多少あり、それらも体力を奪うのに一役買っている。


『どーしますよ!!?これほんとにやばいですって!!』


 分かってるって!!


 今、首を回し、辺りを全力で走りながら見渡すも、光を反射するゴーレムみたいな者は視界にいない。


 しかし、油断は出来ない。所詮魔力を行使しない逃走者に追いつくのは魔力を使えばすぐである。使えば二秒で百メートル走ってしまう化け物すらいるのだ。


 首筋に悪寒を感じ、身を屈める。もちろん走るのはやめない。


 そして、さっきまで首があった場所を魔力が通り抜けていく。いわゆる斬撃飛ばしっていう奴だ。


 先程の斬撃は完全に回避できたが、それ以前には避けきれないもので切り傷を既に沢山作っていた。


『どうせ相手が見えないなら、壁作っても問題ないですよねー?』


 アイは返答がないのを可と取ったのか、勝手に土が盛り上がり、壁の体をなす。


 壁が出るのは有り難いが。



 ────響く轟音



 壁は豆腐のように崩れてしまう。


『無駄でしたかー…。』


 ………魔力も有限なんだから無駄遣いするなよ…。


『無駄なことは何もありませんよ!もしかしたら向こうの方が先に潰れるかもしれませんし。』


「妖刀が魔力使い過ぎて砕けたりしても俺は知らんぞ?」


『問題、ない。』


 首筋に冷たいものを当てられ、硬直してしまう。…いつの間にか、背後に回られていたのか気付かなかった。背後から刃を当てられているのだろう。


「!!?」


『………動いたら、斬る。』


「あ…あれ?斬らな」

『動いたら、斬る。』


『動かないでくださいご主人。多分動かなければ大丈夫。』


 即座に斬られるものだと思っていた俺は不審に思う。


『君、かなり素質、あるよ、ね?』


 突然何なんだよ?


『実は、さ、私を、殺し、た、男を探し、て欲しいの。』


 いやいやいやいや!?殺されるも何もあんた刀じゃねえか!?それとも鎧のほうか?鎧だよな!?


『違、う、私。刀の方。』


 どういう、ことだ?


『その腕、の娘、と同る』


「どぉっせええええええい!!!」


 突如降ってくる女性の声。その声を聞き刀が離れる。そして、言葉も聞こえなくなる。


「大丈夫!?秋君!!」


 降ってきた女性は俺と妖刀使いの間に降り立ち、棒状のものを正眼に構えた。


 その棒状の物を見て妖刀が動揺したように俺には見えた。


 次の瞬間には妖刀を振りかざし襲い掛かる妖刀使い。一方村上さんはというと。


「遅いわよ?」


 背後に回り、振り上げた刀に棒状のものを突き刺した。


 そして、土の塊に戻り、ぐしゃあと潰れる鎧。


 村上さんは刀をテープでぐるぐる巻きにして固定していた。


「ふう、こんなのにやられるなんて、大丈夫なの?」


 ……完全に不意打ちだったのに余裕面しやがって。

「完全に不意打ちのくせに余裕だとかふざけるなっつーの。こちとら破壊しないようにするの大変だったんだぞ?」


手抜(しばり)はもっと技覚えてからやりなさいよ。」


「いや、依頼者が、言っただろうが。」


「そんなの、知らないわよ。」


「はぁ。もう疲れたよ。」


 …………もう帰りたい。


「じゃ、報告しましょうか。」


 村上さんは刀をこちらに投げてくる。それをしっかり両手でキャッチする。


『雑に、扱うな、痛覚、はある、んだぞ?こ、の状態、は常、に痛み、で集中、出来な、いし…』


 刀が喋るのは極限状態の幻聴ではなかったようだ。


『なあ、お前助、けてくれ、ないかな』


 ……。










「おお、帰ってきたか!!ポール・ヘルディ一世!!」


 刀を見てそう言う依頼主。


 名前、ひでえ。


「これを回収して終了ですよね。」


 俺は口を開いた。


「ああ、だから返し」

「回収としか言ってませんよね?誰に引き渡すのかも。」


「ちょ、秋君!?」

「な!?返さないなら報酬はやらんぞ!!」


「いや、実は依頼なんて受けてないんですよ。勝手に刀を強奪(かいしゅう)した。それだけですよ。」


「は!?確かに依頼受領の連絡は」


 突然依頼主のポケットから曲が流れ出す。電話だ。


「はい、もしもし。………はあ!?…分かりました。」


 すぐに電話を止め、こちらを睨む。


「それは私の所有物(もの)だ。返してもらおうか。返さなければ」


「そう言えば、かなりある呪いの武具。どうやって手に入れたんですか?知りたいですな。」


「なんだね?それは……。」


「それに呪いの武具は全部協会管理。一般人が二つ以上持つのは厳罰ものと聞いたのですが?それと呪いの道具の取引は協会経由が基本。なんで協会はあんたを見逃してるんですかね?」


「え……あ…。」


「どうなんですか?」


「!!」


 またこちらを睨みつけてくる依頼主。

 因みに今言ったことは事実。裏は取ってないが、まず間違い無いだろうことを確認してある。アイに。


「じゃ、まあ、刀は貰っていきますけど、誰が持っていたのかは知りませんし、持っていた人のことも知らないんで、じゃあこれで。」


 俺はその場を後にした。









「お疲れ様。まあ、なんであんなことを言い出したの?」


「気が変わった。刀欲しいかったからね。」


「それだけ?」


「んー。良いじゃないか別に。」


 俺は刀と杖を左手に抱え、村上さんとゲートをくぐった。



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