悪夢の桜刀 9
…………………!!!
「しゅ、秋?大丈夫?ぼけーっとして」
気が付くと目の前に、知らない女性の顔。額がくっつくのではという距離にあったその顔に驚き、思いっきりのけぞった。
しかし足元、すぐ後ろにある何かにつまずき、その何か、クッションのようなものに尻餅をつく。
「……ん?……いや、立ち眩み、だよ。」
よく状況を理解できぬまま、勝手にそう言う。
どうやら、これは走馬灯らしい。なぜかある程度行動できるという。これは死にかけた俺が見せた幻想だろうか?
まあ、この見知らぬ女性がどうやら姉を名乗っているが、俺はそうなのか疑っている。
ん、なんか、部屋が全体的に白いな。今より
………いや、これ、サーシャじゃないだろ。
…………見覚えあるぞ、この桜色の刀………なんだ?この不思議な感じは………。
なんというか……。
そのとき扉が開く音を耳にとらえる。
そちらを向くと扉を開ける自称姉がいた。
「秋どうしたの、何もない壁見上げてさ?」
「何もない?あるじゃん、刀が。」
そちらを指差して、しっかりとその刀を睨みつける。
「??刀なんてないよ?」
仕方ない。俺は飛び上がって刀を触る。
やはり触ることは出来なかった。
────やはり?
「ほら、無いじゃん。…幻覚魔法とかかかってるわけじゃないよね。あ!もしかして疲れてるんじゃない!?」
「…………。疲れてはないよ。」
この時の俺は不満げな顔をしてるのだろう。自称姉が、あははと誤魔化すように笑った。
プリン程度で姉と魔導戦したり、下らないことで言い合ったり、姉のことを良くしれた。
………何か思い出しそうになる時がある。まあ、違和感だ。なにかが、違う。
そして、姉は『また』言うのだ。もう辺りも暗いのに制服姿の、姉が。
「ねえ、今日、お姉ちゃんはちょっと遠くまで行くから今日中には帰れない。」
─────思い出せた!!!
「駄目だ!!!」
俺は回想場面転換した瞬間そう切り出した姉に、そう叫ぶ。
「!!!」
一瞬で身を翻した姉は外へ駆けていったのだろう、階段を駆け降りた。見えた顔は驚きの表情を浮かべていた。
俺は桜色の刀を一瞥し駆け出した。
何の得物も持たずに。
まあ、結果は、負けだ。
前回の反省から、先手を打とうとしたら、その気配がバレバレだったのか、俺を見るなり、黒鬼は霞んだ。
右腕が吹き飛んで、前回の戦いがフラッシュバック。そして、吐く。………みっともないが、意識がなくなる前だったというのに覚えていたのだ。姉だったものが潰れていく様を。
そのまま吐き続ける俺に、ぶつぶつ言いながら近づいて来た黒鬼に何もせず負けるのかと、黒鬼が腕を振り上げる。
横からの衝撃。
また、だ。また、姉が。
───────また、意識がここで切れる。




