表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義腕の王  作者: リョウゴ
四章・非凡な少年と鋼色の牙
74/164

悪夢の桜刀 7

 ───下らない茶番は終わった。

────さあ、悪夢を。


 ────現実という、悪夢を











 気付くと、俺は自分の部屋の椅子に座っていた。


 特に散らかっている訳でもない部屋の入り口に鐘本瞳は真剣な目をしてこちらを見ていた。


「ねえ、今日、お姉ちゃんはちょっと遠くまで行くから今日中には帰れない。」


「……そうなの?どこ行くん?」


 その姉の気配に異様な何かを感じつつも、何も気にしていないかのように聞く。


「んー…あー、えっとそれは、言えない。」


「なんでさ?」


 姉は、その弟の態度に戸惑いを見せる。多分、俺はあまり関心を持たないと思ったのだろう。


「それは………うー…!まあいいじゃん!じゃあね!!言ってくる!」


「あっ!ごまかしたな!!」


 鐘本瞳はくるりと反転し、ドタドタと走り去る。


 その態度を怪しんでいた俺はすぐさまそれを追う。


 辺りは沈みかけの太陽が朱く赤く辺りを照らしていた。



 ………両親が失踪してからしばらく経つ。が記憶に新しいその事が頭をよぎり、姉すらもどこか行ってしまうのではと心配していた。


 俺にはどうしてか、実際に起きる。そんな気がしていた。









 今日に限っては姉は自らの足で移動している。これで協会のゲートを利用されていたら、詰んでいた。


 だが、魔導師の能力を最大限に生かした移動速度で駆ける少女は、人の家の屋根の上や、塀の上を一直線に移動する。それを追いかけるのは至難の業だ。


 姉の十八番の加速魔法。どういう物かを思い出し、追いつく事が不可能であることに思い至る。純粋に速いのだ。

 なのに俺には出来なかった魔法である。


 ついでに俺は直線上に移動することが出来ない。まあ、飛べないし、姉みたいにあんな所走れないし、道のりを利用するしかないのだ。


 俺は大人しく諦めるしかないのだろう。



 ………でも………



 俺は諦めない。そもそも魔法を利用して移動しているのだ。ただ事じゃない。


 追いかけた俺に見えるように移動したつもりかもしれないが、そもそもそんな移動しているのが怪しすぎる。


 追いかけてやる。










「…っ…はぁ…はあっ……………。」


 膝に手をつき、荒い呼吸でたどり着いた目的地を眺める。


 ここで俺は迷うことなく、辺りの風景になにも感じることはなく、息を整えつつ歩いていく。


 そこは俺が通う高校……の隣にある運動公園の森だった。



 既に無い姉の姿を追いかけた結果この辺りが有力な目的地だが、外れていたら、どうなっていたのだろうか。



 なんだろうか、魔力を感じとる能力の弱い俺には何か、違和感程度しか感じなかったが、その違和感が道状、一本道に続いている気がした俺は、その先へ走っていった。



「………なんだよ、ガキはお呼びじゃあねぇんだ。」


 しばらくして、道の終点にたどり着くと、低い、威圧感を感じさせるような声が聞こえる。


「もう、あたりは暗いんだ、迷ったら大変だ。さっさと帰れ。」


 暗いせいで、月明かり、足元のみを照らしている。黒い服、スーツだろうか?


「ちょっと、姉を追ってまして、なんか、こっちのほう来ませんでしたか?」


「あ?どのくらいのだ?身長体重体型教えろ。」


 あ、優しい人だな。


 そう思った俺は正直に答える。


「背はこのくらいで」手を上へ伸ばし、背の高さを表現する。

「体重は、姉が、『乙女の秘密を盗み見するなんてひどい』なんて言ってましたけど、大体五十手前……いや、四十中盤っていってあげるべきかなぁ…その位です。」


「体型?うーん…あ!でも珍しく制服を着て出かけ」




 言葉が………継げ な   い。


 な  ん でだ?


 目の前にいた男は消えていた。視界から。勿論下がった訳じゃない。


 ごりゅっ…と後方から音がして振り返ると、長身の男がいた。


 その男は、体格が良かった。だけじゃない。肌は黒く、今は後ろ姿しか見えないが頭の上、恐らくは向こう側、額辺りから生えているだろう角が見えた。


 その男は、背を丸めて向こうを向いていたが、こちらへと振り返る。


 そして、俺は言葉を発せない理由を知る。



 黒い男はそのなぜか赤黒く凶暴な口に腕を咥えていた。


 さっき聞こえたのは、咥えた肉を噛んだ、いや、噛み砕いた音だろう。


 お そる おそ る右腕を み る。


 肩より少し先から血がダラダラと流れ、ている。


 その先は、なかった。


「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああぁああああああぁああああああああぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


 ようやく、現実に追いついた頭が痛みを放ち、現実離れした現実を受け入れようと、叫ぶ。


 すると黒い男は、その光景に苛立たしく右腕だったものを右手に持ち、それから舌打ちし。


「うっせぇな、黙れよ、たかが腕一本。そのくらいでわめくんじゃねえよ。」


「───真回復術」


 いつの間にか黙っていた秋が呪文すら唱えずに、魔術を発動する。辺りにぶちまけられていた秋の血が消失し、腕の傷だけが塞がる。呪文を唱えていない訳じゃないが、呪文と言うには効果に反して短すぎた。


 秋は黒い男を睨みつける。


「ああ?……なんだよ、お探しのおねーさんはしっかりとここに来るぜ?なんでおまえの方が早く来たかは知らんが、この際おまえでもいいや。」


 隙だらけのその男に秋が飛びかかることはない。右腕をやられたことで心内怯えている。恐怖で逃げ帰りたい。それだけが襲いかかろうとする怒りを充分すぎるほど抑えていた。


「んー、実際てめぇの姉には既に伝えてるんだわ。ここに『親を殺した奴が待っている』ってな。」


「!?」


 秋は驚きを隠すことなく顔に出す。


「どうせ、心配だからってつけてみようとか思ったのかもしれないけどなぁ?」


 俺はいつでも動けるようにした。


「そのせいで、お前、死ぬんだぜ?」


 やはり見えなかった。が、動くタイミングは、理解できていた。




 鐘本瞳は天才魔導師なんてうたわれていた。彼女は若年にして様々な魔導に通じ、さらには新たな魔術、魔法を開発したり、改良したりした。中には出来ないと思われていた、超回復魔法の呪文を短縮などの功績があった。そのために天才とうたわれていたのだ。


 じゃあその弟は──?




 魔力の鞭で横殴りに、自分を殺す勢いでぶん回す。周りから見れば一瞬で彼が消えたように映る筈だ。


 実際、黒い男は横にすごい勢いで吹っ飛ぶ秋を認識できてはいたが、動く一瞬同時に動かれ、追尾できず、その牙のような爪の餌食にはならなかった。


「がほっ!」


 腹の激痛を無視し黒い男、改め黒鬼を睨みつけ立ち上がる。


「なかなかやるじゃねえか、弟はファザーはノーマークだったのによ」


 また消える。


 だが、最大の警戒をしている俺には。


「見えてるんだよ!!!」


 また、横殴りの回避をする。回転しながら地面に着弾。飛行距離十メートル。


「いやあ、反応良いねえ。もっと遊びたくなっちゃうなあ。」


「がふっ…えほっ…えほっ」


 咽せながらゆらりと立ち上がる。もっとしっかりとした回避が出来ればいいが、あの速さに合わせるには、俺をその速さと同格まで上げなくてはいけない。


 勿論俺には、そんな移動方法が無い。あればやっている。吹っ飛ぶのは痛い。防御は最低限しているが。


 それにこいつを倒すには攻撃が必要。だがそのための一瞬で恐らく俺のどこかの肉が吹っ飛ぶ。そんなことは分かっている。だから回避のみを使う。


「あー、痛そうじゃねえか、痛々しいじゃねえか、早く」


 黒鬼は手を上へ掲げ、その指先に鋭い爪を魔力で作り上げ、言う。


「楽にしてやらなくちゃなぁ?」

後々出ないので言わせてもらいますが


熊の言った依頼がこの黒鬼の居たところに親殺しの仇がいるという情報。そして鐘本瞳はまんまと日付服装指定で呼び出された。


 服装が制服だったことに反応して攻撃を撃ったのは発言者が恨みを自分に持っているだろうからと先手で恐怖を与えるためです。


 一撃でやらないのは……趣味ですかね。


 あとは多分後の話でだすはずです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ