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義腕の王  作者: リョウゴ
四章・非凡な少年と鋼色の牙
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月明かりを放つ風 4


 さて、どうするか。


 この状況で音の出る技、もしくは一発で俺の位置を把握される技を撃つ必要はない。


 ので、鎧の周りに周りの木と同程度の太さを持つ大きめの腕を四本召喚し、掴み、殴りかかる。


 鎧は突然出てきた物に反応し、右足を軸にしてくるりと回転する。


 それだけで魔力の腕は消滅した。


 何をされたのかは分からなかったが、さらに鎧はこちらを見つめ、距離を詰めるべくこちらへ歩いてくる。

 幸い、動きは鈍重で、場所を変えるのに追いつかれる速度じゃない。


『……腕を斬った…?なにあの尋常じゃない太刀筋…』


 だが、俺は、動くことが出来なかった。


 別に、鎧の上にただ乗っていただけの空の兜に恐怖を覚えたのではない。ただ、動けば、背を向ければ、隙を見せれば、即座に殺されてしまうと錯覚するくらいの威圧感を放っていたからである。


 そう言えば、だ。


 俺は武器を持った敵意ある魔導師と戦闘したことはなかった。


 それにいま対峙しているのは妖刀。鎧を止めたくらいで止まるのか?


 分からない。分からないが…。



 やるしかない。


 鎧が足を止める。三メートル程度先で。


 そして鎧が腰に装備された刀の柄に手をかける。


 俺は右手を胸の前辺りに、左手の杖を右手の上を通し、構える。


 ───アイ、頼むぞ。


 俺はそう心の中でつぶやく。それが合図になったのかそうでないのかはわからないが。


 鎧が強く柄を握ると全てが終わっていた。







 甲高い音を上げてぶつかる刀と義手。鎧の居合いを右手で弾いたのだ。


 だが、それを予想していたのかしていなかったのか、妖刀は峰打ちであった。さらに何の技術か、全身に衝撃が走る。その衝撃は激痛に変わる。俺自身、居合いの威力を殺しきれず、ゴロゴロと転がったのだが、痛みはその分だけでは絶対に発生し得ない物だった。


 痛みに顔をしかめつつ、鎧がどこにいるかを見るために首を回す。しかし、見当たらない。


 立ち上がろうと手に力を込めるも、右腕以外、動くつもりなどないと主張してくる。


『ふへぇ~~』


 アイの気の抜けた声が聞こえなくもないが、これは、目を回している、ということか?


 がちゃり。


 頭上、先程首を回したときの死角、ちょうどうつ伏せなので、胴体の上は確認がおろそかになっていたが、その辺りで、金属がぶつかる音がした。


 最早、なにも出来ないと言うことか。


 そのとき、声がした。聞いたことのない男の声だった。


「ゼツボウノ キオクヲ アジワエ ソシテ ジメツスル ノダ 」


 片言なその言葉に何か、感想を思い浮かべる間もなく、俺の胸を刃物が貫いた。



 視界が桜色に染まる。



 白か黒に染まるものではないのかと思う。

 一色に染まる視界は眩しくは感じなかった。

 痛みも、無かった。










 気づけば俺はソファーに寝そべり、漫画を読んでいた。


 ハッとして辺りを見渡すと、自宅だ。心なしか壁が綺麗……。


 右腕にも違和感を感じる。


 俺が立ち上がると視界が低い。そう。異様に 。


「ただいまー!」


 扉が開く音と同時に元気な女子の声が聞こえ、反射的に「おかえり」と返す。


 ドタドタと家の中を移動する女子。身長的に中学生程度ではないだろうか。


 その女子は慌ただしくあっちへこっちへと行ったと思ったら俺に近付いてきてこう言った。


「秋?今日はお姉ちゃんの友達が来るからあまり騒がないでよ?」

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