月明かりを放つ風 1
「そうだ、秋君。」
「なんでしょうか?」
「今日、神社に来なさい?ちょっと本人をつれてかなくちゃいけないからね。」
どうやら、協会に顔を出せということらしい。多分そうだ。多分。
「んじゃ。」
そういって自分の席へと戻っていく咲さん。
「……そう言えばアキ君、咲ちゃんとなんかあった?呼び方変えたみたいだけど。」
「特に何もないよ。」
「……そう。!!じゃあ私のことを名前で呼んでよ。し の は ら さん、じゃなくて日舞って。」
篠原さんはずずいっと前のめりになってそう言ってくる。その勢いに、少々俺は仰け反った。
「えー…まあ良いけど。」
「じゃあ今呼んですぐ呼んで早く」
「いや少し静かにしろよ篠原さんよ、もうすぐ授業始まんぞ。」
横から割って入ってきたのは野中だ。その行動に、篠原さ…日舞さんは、ぶーとかむぅとか言ってむくれていた。少しかわいいと思った。
放課後、言われたとおり神社に来ていた。
「……………。」
「よし、来たわね。んじゃ行くわよ。…菊川さん報告書は確かに預かったわよ。」
そこには一年後輩の菊川さんが何故かいた。
彼女は不機嫌だという表情をしており、発言にもその機嫌が現れていた。
「正直、あんた経由は危険なんだけどね。名前知れ渡ってるし。出来れば知名度のない奴を改めて寄越してくれないか言っといて。」
というか、何の話だろうか?
「あー、わかった、そのことは上に言っておく。あと高校の先輩に向かってあんたって言うなっての。礼儀をしっかりしなさい。」
咲さんがそういうと菊川さんは踵を返した。
「あんまり長居すると教皇ぽい奴に疑われちゃうから帰るわ。」
そして菊川さんは見えなくなった。
「さてと、行きますか。」
「どこへ?」
「協会よ、当たり前じゃない。新人なのだから顔くらい出しておかないとね。」
何となく察してはいたがやはり協会へ行くのか。
咲さんはどこから出したのか、銀色の鍵を翳す。
するとその正面に扉が現れる。すぐに咲さんはその向こう側へ言ってしまう。
「なにぼけっとしてるの?早く言くわよ。」
咲さんはそう、向こう側から声をかけてきた。
扉の向こう側は、廊下だった。一本道。
その突き当たりの大きな扉の先に広場はあった。
見た目は、あれだ。某狩猟ゲームのギルドみたいな感じかなあ。だが広い。ちょっとした体育館並みに広い。
協会はそこそこ人がいるが、その間をずかずかと進んで行く咲さん。気のせいかもしれないが、他の人が避けてる気がする。
その咲さんの通った後の微妙な隙間を縫うように移動する。
すると、受付という看板がかかったカウンターの所にたどり着く。
「やぁやぁさっちゃん。かれしづれかなー?」
「いや、前にも言ったと思うけど彼氏は別にいますってさ。」
………!?!?!?…彼氏が……いる………だと…!?
「そうだっけぇー?」
「そうよ。去年の暮れ位に言ったじゃない。」
「んー、そうだったかもねぇ。」
「そうだったのよ。」
「あー、じゃ、この子だれさー?」
「新人。」
「そうかー、しんじんっていうとあのうわさの?」
「多分その噂の。あとこれ、竜使の依頼途中報告だと。」
「たしかにうけとった。にしてもあのこ、よくもまあこんなだるっこいいらいうけたなぁ。」
「あー、それは分かる気がする。なんで報酬が苦いうちに受けちゃうんかな。」
『全く、近頃の魔導師は利益しか見てないんですかねぇ、ご主人?』
「まぁ、いいじゃない。」
「それと、連絡員をよこせだと。私じゃ知名度高すぎだって。」
「んー、わかった!」
『ご主人?おーい、聞いてますかー?』
ちゃんと聞いてるわ!平常平常。
「しんじん、せっかくきたんだ、いらいうけてけ。いいのあるぞ。」
「あ、はい。じゃあ、どう言うのがあるのか見せてください。」
……まあ、いらいってなんだというのは置いといて。
言ってはなんだが、俺は説明書を読まない人間だ。
『自分で言ってどうする。』
受付嬢から幾つか依頼を見せてもらった。
ついでに説明ももらった。
取り敢えず依頼というのは、外部からも内部からも寄せられるらしい。数は割とある。
依頼は難易度を区切ってはいるが、別に難易度ごとには挑戦制限はない。
魔導師自体にもランクがあり、最初はFから始まりAまで上昇するとそこからSに成り最大はSSSである。ランクごとに人数制限があるのはSSSのみ。基本降格はなし。不祥事を起こせば降格、除名。実際ストーカーは除名された。
ランクは依頼を受けて上げる。
依頼はランク上昇用 P報酬と金銭報酬が出る。
このくらいだろうか。
そして俺はとある依頼に目をつけた。
【妖刀回収】という依頼だ。
「これ、良いですか?」
「まー、ふつうのしんじんさんならまちがいなくだめといいますけど、さっちゃんとしてはどうです?」
「平気じゃない?」
「じゃあ、いいですよ?」
それは咲さんを信頼し過ぎではなかろうか?とは思うが、OKならいいかと、その【妖刀回収】を請けた。




