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義腕の王  作者: リョウゴ
四章・非凡な少年と鋼色の牙
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月の要塞 2

『あのね、普通こんなことを聞くのはおかしいと思うんだけど、うちの娘知らないかしら?』


 突然そんな事を聞いてくる。


『昨日大学行ってから、帰ってきてないのよ………。』


 普段なら、徹夜で店でもハシゴしてるんじゃないのか、とか、知らない、としか返さないが、今は普段ではない。

 どうしようもない不安に襲われる。


「…し、知りませんけど、連絡とか無いんですか?」


 だが、知らないものは知らない。こう答えるしかない。


『無いのよ。』


 その声はどことなく切羽詰まった感じがした。


『どこか行くにしても、連絡一つ寄越さないっていうのはなかったのに……。』


 …………アイ、なんかそう言うのを見つける魔法無いのか?


───ありませんよ、いや、私には使えないってだけですけど。


『まあ、知らないなら仕方ないわね。』


「力になれずすいません。こっちでも探してみます。」


『いいの?じゃあ、見つけたら連絡頂戴ね。』


 そう言って電話が切られた。


 そしてそのまま電話をかける。音姉さんに。もしかしたら、あの人の事だからこういう初歩的な事をしてないかもと思ったからだ。


 …出ない……


 これは思ったよりまずいのでは無かろうか。


 移動中にかかってきた謎の脅迫が頭を過ぎる。

 あの女って誰だ?…頭の中で誰かが思い浮かび、その人がそうであると肯定否定を繰り返す。


 証拠が無ければ……そうじゃない。


『ご主人、取り敢えず着信履歴で連絡するとか出来ないんですか?』


 …………え?…ああ、その手があったな。


 と、思い着信履歴を見てみるが該当する番号、つまり知らない番号がなかった。


 最新から数えて三つ目の所には、謎の脅迫をしてきた番号はなく、その前に電話した相手の電話番号が載っていた。


───番号がない…!?


『ありませんね、これ。どう動きますか。』


 仕方ない、あの男に連絡をとるか。


『あの人、ちゃんと音波を守るって行言ってましたし、大学も一緒だとか言ってたし。いいんじゃないですか?』


 お前の意見は聞いてないんだが。


 神代智也に連絡を取る。具体的に言うと電話だ。

 そして相手は繋がった瞬間に出た。


「あー、俺です、鐘本秋です。」


『どうしたのかね。俺になんか用か?今忙しいんだよ。色々。』


 相手は苛立ちを隠さずに返答する。


「率直に聞きます。単刀直入の方が良かったかな……」


『いいから早く言え、用件は何だよ?』


 どうやら相当苛立っているようだ。


「音姉……音波さん、知りませんか?」



『………それなら隣で課題やってるぞ…?』



───嘘ですね。電話の向こう側からは1人分の気配しかないです。


 アイがそう言う。よく分かるな。


「本当ですか?親が心配してたと伝えておいてください。」


『分かった、じゃあ切る──』

「待ってください!あと一つ心配な事があって、それについて。」


『こっちは忙しいんだよ。早くしろ。』


「朝、電話が掛かってきて、この女がどうなってもいいのか!と言ってきた人達が居るんです。」


 今も朝だという事は置いておく。


『はあ?それがどうした。』

「それが、この女というのが誰か、知りたければここに来いとか言ったのに、どこだか言わなかったんですよ。その電話のあとに音波さんが居ないとあの家の人に言われたので少しというかかなり心配で。」


『間抜けもいたもんだな。』


「掛け直そうにも、番号分からないし…………それでもう一度聞きます。そこに本当に音波さん居るんですか?居るなら代われ。」


『………チッ…音波なら居ねえよ、おまえに隠す必要は無いか。仕方ねぇ、教えてやる。今どういう状況かをな。』


『────それでな、俺は言ったわけだ、』

「つまり!音波さんから目を離した隙にどこぞの魔導師に攫われたと。で、どこかは協会の力を持って鋭意捜索中と。」


 事情を説明して貰ったが、無駄な所が多く、面倒なので、途中で割り込んでそう言った。


『………ああ、そうだ。しかしまあ、お前に行った脅迫がその件と関係してるかは不明だ。が、関係していたらば、目的はお前なのかもしれないな。』


 …………。


『もしかしたら攫ったのは、別の協会の勧誘員(スカウト)かもしれないな。まあ、有り得ないがな。』


「では、ありがとうございました。」


『いやいや、こっちにもいい情報が無いからな、関係なくても情報提供は有り難い。つまり礼を言う必要はない。……こっちで探しておくからお前は関わらなくて良いからな。』


「はい。では。」


 電話を切った。










 音姉さんの捜索は神代さんがやっているなら、俺が探すよりも良いだろう。一応、葉坂母に連絡を取ろうかとも思ったが、やめておいた。見つかってからした方が良いだろう。


 で、まだ集合の三十分程前だが誰も来ていない。やはり早く来すぎていたのだろう。正直、音姉さんの捜索に関しては、俺に出来ることは皆無だろう。脅迫じみた電話も気になる。


 こんな状況で落ち着けるわけ無い。出来たらすごい。讃えてやろう。

 どうしたものかなあ………。


「あ、アキ君もう来てたんだ?」


 歩きで、篠原さんはこちらへやってくる。


「いやぁ、まさか誰よりも早くに駅に行くつもりでいたら、到着ってアキ君がもう言ってたからそこからのんびりと来たわけです。」


 そう言いつつ、視線は右腕に注がれている。


「また右腕になんか居るとでも言うのか?」


「いやぁ、今日は右腕の子、一段と落ち着きがないね。」


 勿論俺にはその右腕にいる落ち着きの無い奴は見えない。


「そんなやつ、居ないだろ。」


 いや、まあそれはアイではないかとは疑っているんだけれど。


「ふっふっふー、私の目はごまかせないぞー!」


「そうかよ。」


 そして篠原さんは上目遣いでこちらを見て。


「何か……あったの?」


「何も…ないよ。」


 取り敢えず、今は俺が動く話じゃない。


 ………そういや、あの中二病、協会を動かしたって言ってたよな。あの手の虚言は信じないつもりではあるけれど、魔導師関係なのは確かだろう。


「嘘だー! 絶対何かあるね! 私の目はごまかせないんだよ!」


 まあ、篠原さんの目はすごいのは知ってる。


「いや、何かあったからなんなんだよ?別に篠原さんには関係ないだろ。」


 別に、篠原さんが関わる必要はない。実際に音波さんが攫われていても、篠原さんに関係はないからな。


「……なんかムカつく。」


「はあ?いきなりどうした。」


「視てやる。もう何が起こったのか視てやるぅ!!」


 突然篠原さんがキレた。え?どうして!?何でキレた!?


 そして篠原さんの瞳が金色に変色する。


 色合いは凄く綺麗で見入ってしまいそうになる。が篠原さんの瞳の色が変わったのはほんの一秒ほど。


「…………ふふーん、そう言うわけですかぁ…それは右腕さんが落ち着かない訳ですよね…。」


 バレた、のだろう。


「………はぁ。出来る事なんて何もないだろ?そもそも……。」


「私達で捜しましょ!」


 …………はあ!?俺の話聞いてたか?場所の検討がつかなければ見つからないんだよ。見つからなければ動けない。そもそも捜索能力皆無だからな。


 そんな、何言ってんの、というのが表情に出たのか、その考えを視られたのか。


「でも、多分、魔導師が見つけたとして、その人の安全は守られているかな?それと電話。それらは明らかに繋がってる。」


 迷いなく、そう言った。まだ、疑わしいという段階なのに。


 そして篠原さんは後ろを向いて、スマホを取り出し、誰かに電話をする。


「………ねえ、ちょっと御願いがあるんだけど。………うん、捜索。得意でしょ?………誰って………ねえアキ君、名前何だっけ?」


 途中、振り返り、攫われた人の名前を聞かれたので。


「葉坂音波」


「んとね、ハサカ オトハって言う人………そうそう、そんな感じの人。身長は君と同じくらい、胸はそこそこある感じで………うん、そうそう……………何か知ってる人?ほんとに!?………じゃあ、御願いね!………。」


 そして通話を終える。


「信頼出来る人に捜すの頼んどいたよ。これで安心だね。」


「そうなのか?」


 というか誰だよ信頼出来る人って。


「あ、池田さんだ。」


 篠原さんは駅の方を見たので俺も見ると、池田さんがひとりでやってきていた。





 そして集合時間五分前には全員が揃った。


 そして、電話が鳴る。…誰からだろうかとスマホを見ると、また、不明な所からの電話である。


「おい、秋、電話か?」


 野中が聞いてくる。


「ああ………ちょっと向こうに居るわ。出発するときはついてく。」


「そうか。」


 そして皆から少し離れてから電話に出る。


『あーあー、鐘本秋さんで合ってるかな、どうも、2度目の電話でーす。』


「何のようだ?」


『いやーさっきはごめんねぇ?場所も告げずにここに来いって、どんな無理難題だよって思うよね。だよね。だからごめんって。』


「だから、何なんだよ」


『いやぁ、攫った女子のうるさいことうるさいこと、騒ぐわ喚くわ抵抗するわ。…そんな事されたらうざったいと思うわよね?』


「………はぁ!?おいまさか!」


 その女子に手を出したのではと言うことに思い至った俺。だが、相手は。


『あー、いや、眠っててもらってるだけよ。手は出してない、安心していいよ!』


 どうやらそう言うので今は言及しない。


「で、何の用なんだ?」


『ここに来なさいって言ったわ。ここはここ。白銀ビル三十二階。』


 ……どこだそこ。


『まあ後で調べて1人で来い。他言無用、他の応援を呼ぼうものなら………この女の命は無いと思え。』


 底冷えしたその声に、少し、ほんの少し恐怖をおぼえた。


 どうやら人質はしっかりと人質してるらしい。仕方ない。1人で行くか。


『師匠、これでいいんですか?………え!?まだ繋がったままでした!?うわー』


 プツッ────


 電話が切られた。


 取り敢えず、スマホで白銀ビルとやらを捜す。


 ………見つかった。ここから一時間ほどかかりそうだ。駅から遠く、バスも無い。…時間設定無かったのはこの遠さを踏まえてなのか、ただのドジなのか。後者だな。多分。


「電話終わったか?」


 野中が尋ねてくるが、それに対して申し訳無さそうにこう返す。


「すまん!用ができたからちょっと行ってくる!多分昼過ぎに終わるから、そのときにまた行くから!」


「あ…うん、分かったよ、行け早く…。」


 そう言うと俺は自転車に跨がり、ペダルに足をかけた。






 とにかく全速力で信号のたびに場所を確認する。……正直たどり着けるかが心配になるが、自分は多分方向音痴ではないと信じている。


 白銀ビル、とやらに無事辿り着く。が、そのビルはザ・高層ビルって感じのビルで、周りは別に都会な感じなどせず他に高層ビルなどないので、やけに目立っていた。駐車場の適当なところに自転車を停める。そもそも自転車通勤なんてしないのだろう。駐輪場が無かった。


 ビルにの入口には警備員が二人。


『んー、まあ取り敢えず認識阻害使いましょ、自分を他者に認識できなくするんですよ?ちゃんと。』


 以前の失敗をちゃんと突いてくるアイ。余計なお世話だっ……と。


 俺は認識阻害を使用した。しっかりと成功している。


「君、何の用かね?」


 ………だが、警備員には効かなかった。

 ───どう言うことだ?


『あちゃー、どうやらどこかの協会支部とかですかね?もしくは偶然魔導師が警備員』


「貴様!!どこの協会の者だ!答えろ!」


『ジャナカッタミタイデスネ。』


 警備員の二人は今にも襲いかからんとしている。


「まて!待ってくれ!俺は呼ばれてきたんだ!!三十二階に来いって!」


 ………あ、他言無用って言われてたやん。おいどうしようか。


『知るか。』


「通れ。───今のは聞かなかった事にしておこうじゃないか。」


 突然警備員の片割れがそう言った。まあ、お言葉に甘えて、通らせてもらう。










「良かったのか?他言無用なのに漏らしたんだろ、情報。」

「まああんなことに目くじらたててたらきりがないだろ。それに、別に俺らは警備員してただけだ。用がある招かれた人間は通す。当たり前だろ。」

「まあ良いけど、あの要塞が…人攫いとか笑えないよな。」

「まあ、な。はっきり言ってらしくない。二代目が焦ってるのかもな。」

「かもな。」









 どうやらこのビル、エレベーターは社員専用らしい。社員証ないと乗れない。


 つまりどう言うことかというと、階段ダッシュだ。正直、神社とどっこいどっこいだと思う。いや神社の方がきついか?


 少々息を切らしながら三十二階に到着する。どうやら、会議室がある階のようだ。一番広い部屋から当たるつもりなのでまず会議室から当たる。


「おや、思ったより早かったね。」


 そこにはローブを着た丸眼鏡の女性とこれまた眼鏡をかけた(イケメン)が立っていた。発言は女性の方である。


「人質はどこだ?」


「本当に人質の名前を告げなくても来るとは。隣の部屋でぐっすり寝てますよ。」


 男が答える。隣の部屋か。


『行きますよ!早く!』


 ダッシュで部屋を後にしようと扉に手をかけるが、扉は右腕をもってしてもびくともしない。


「まあ、話をしましょうか。」


 ガチャガチャと扉を押し引きするが、開く気配がない。


『開け!開けってば!』


 何故、アイがパニックになっている?


「まあ、ここ、白銀ビルは月光協会支部なんですよ。んで、私は勧誘員(スカウト)、師匠は別にそう言う訳じゃ無いんですけどね。まあ、うちの協会も他の協会に力をつけられると困るんですよね。例えば強力な一般人を会員にされたりすると面倒なのです。だから」

「お前は話が長い。要するにお前が月光協会に入らなければあの女を殺す。」


 すいません師匠、と謝る女性。だが、俺はそんな事には目もくれず、一つの言葉が俺を支配していた。


───殺す?俺の行動で1人?──


「…………ふざけんな。何で…」


「まあ、君の実力は私達は知らない。だからまあ試させてもらおうか。なあに、本気ではやらないさ。」


 男が呟く。女性が、反応する。


「師匠!師匠じゃ殺しちゃいますよ!私がやります、やらせてください!」


「じゃあ、やればいいけど、怪我しても知ら」


 どうやら俺は試されるらしい。と気付くと、俺は痛めつけて人質解放してもらおうと、魔力の腕で女性の腹を殴りつけた。


「…まあ、遅かったか。」


 だが、殴った手応えがおかしい。


『腕引っ込めろ!』


 アイに言われとっさに魔力の腕を引っ込めた。


「舐めないでくださいよ師匠、これでも月の要塞と言われた人の一番弟子なんですよ?」


 だが、特に何か起こるわけでもない。


「私を楽しませてくださいね、月詠(つくよみ)。」


 男は女性に向かってそう言うと、消えてしまった。


「まずは自己紹介からですね。どうも、月詠 響子(きょうこ)です。まだ魔導師名は登録してませんが、それはまだ修行中だからだからね?」


 女性は三十センチくらいの木の棒をこちらに向けて言い放つ。


「───四枚盾(フォースシールド)───」


 すると、四枚の透明な壁が俺を囲む。天井が有るせいで上と下に移動して回避というのは出来なかった。床、抜こうとしたんだけどな。


 壁を殴ってもびくともしない。詰みか?


「そんなのも破れないんですか、期待外れですね。」


 女の舐め腐った態度に、じつはずっと背負っていたリュックに入れて持ってきていた秘密兵器を出す。杖だ。


 サイズがバックより大きいのではみ出ているが、アイ曰わく、認識阻害されているから大丈夫何だそうだ。


「うるせえ………。」


 俺は五本の腕を召還し一カ所をぶん殴る。連続で絶え間なく。ちなみに腕同士は干渉しないので普通に重なれる。


 五回それを繰り返すと一枚壁が砕けた。


「ふーん。まあいいです。───三叉槍───」


 今度は、槍が地面から壁から天井から襲いかかる。全方位から隙間無いように。


「エアロブラスト」


 空間に突然文字が浮き出る。練習して手を使わずに出来るようにしたのだ。成功率が相変わらず悪いが。


 今回は成功し、風の刃が相手に猛威を振るったりはせず、風は杖に纏わりつく。


 俺は杖を振り回すと猛烈な風が吹き、槍が逸れる。するとあら不思議、槍と槍が干渉して一部吹っ飛ぶものに巻き込まれたりして一本も当たらない。


「…むぅ、なかなかやりますね。」


 恐らく殺さないようにはしているのだろう。だが、今の俺は手加減をしない。今までもしていなかったが。


 俺は相手の足元、背後方面に忍ばせておいた、土属性の腕を取り出し、相手を捕縛した。


「…………!?」


 しかし、取り付いて一秒丁度。圧をかける直前、魔力の土腕は爆散した。飛び散った土、硬質な礫が飛び散った。

 それを俺は腹に一発と足と右手に二発ずつ喰らう。


 それによろめいた俺を見逃すはずもなく。


「そーれっ! どーん!!」


 無色透明の壁が俺を壁まで吹き飛ばすように体当たりしてきた。そのまま壁に押し付けられる。


『今こそ、私の変形機能が』


 火を噴かない。


 透明な壁を魔力の腕で弾き飛ばす。


「むむむぅ。」


「エアロブラスト」


 今回は右手でしっかりと書く。


 すると再度、杖が風を纏う。


 突撃。迷うことはない。


「えい!」


 透明な壁が迫るが、天井の腕がぶん殴ることで天井付近に穴が開く。それに向かって俺は杖の風を床に放ち飛び込む。


「やぁ!」


 掛け声は可愛らしいが起こる事象は可愛くない。三叉の槍がまた前方の全方位に出現。まだ風を纏っていた杖で払いのける。杖の風がここで消える。


「がはっ!?」 


 女性が壁に向かって横ステップをする。その行動を不審に思う前に後ろ、背中から衝撃を受け、女性がさっきまで留まっていたところに突っ込む。


 何が起こった?


「──杭打──」


 右手と左手が杭によって壁に縫い付けられる。が、痛くない。でも抵抗出来ない。左手は。


『多分右腕は剥がせるはず。』


 アイのその言葉を受け、右手を強引に壁から引き剥がす。


「嘘でしょ………」


 片手引き剥がすと両方消えるようだ。左手が自由を得る。


「……───破壊槌─」


 天井から壁へとハンマーが振り下ろされる。恐らくさっきはこれに吹き飛ばされたのだろう。が、こんな見え見えなのは当たらない。


「あたるかよ!」


 それを軽々と横に避けて、魔力の腕を相手の周囲に五本召還。


『出来るだけ触れてる時間を削りましょう。』


 アイにそう言われ、掴みではなく連続で殴る。女性とか関係ないが腹にしておこう。


「やめにしろ。」


 突然男の声が聞こえ、殴るのをやめてしまう。声が聞こえた方を見ると、人質、音姉さんが男に抱えられていたからだ。やはり2つとも繋がっていたようだ。


「それ以上やるならこの女を殺す。」


 やはりというべきかそう言った。相手は立ち上がると…師匠すいません…と言い、男の後ろへ隠れる。


「おおっと、動くなよ、動けば殺す。」


 もはや動くことも禁じられる。


「君はそこそこやるようだね。」


「……………。」


「そこで少し強い君に相談だ。」


「はあ…………。」


「何、無理難題じゃないさ。」


 恐らく次の発言で俺は詰む。


「まあ、当初の要求通りっ!?」


 瞬間、俺は前へ駆ける。


 窓ガラスが割れ、内側へと破片が飛び散り、乱入者は叫ぶ。


「なにやってんだ音波ぁ!!!」


 乱入してきた者は突入するときの窓を蹴破った威力そのままで蹴りつける。


 が、男の魔法か、透明の壁が蹴りを阻む。


 俺も止まらずに右で殴りかかる。何故か音姉さんを盾にされたが、止まるつもりは毛頭無い。


「土縛の腕ぇ!!」


 盾にされた音姉さんを捕らえ、乱入者にぶん投げると、乱入者は受け取り、入ってきた窓から逃げてった。


「…………チッ…」


 男は舌打ちする。乱入者……サーシャにまんまと、人質を奪われたからだ。まさか音波と知り合いとは知らなかった。


 俺は電話(スマホ)を取り出し、こういった。


「なあ、神代さん」


「何だ?」


 答えは後ろから返ってくる。


「俺、太陽協会に入ります。」


「そうか。」


「そうしたら、太陽協会に手を出したことになりますかね、あの男。」


「多分隠密に、対立なんて無かった事になり、お前は狙われない。程度に落ち着くだろう。まだ、事を構える事はないさ。」


「取り敢えず後はお願いしますよ。」


「面倒な後始末を押し付けるんじゃねえ」


 黒衣の男に感謝しつつ、俺はその場を立ち去った。





 その後、勉強会に参加するため、連絡すると野中が案内役として駅にいた。

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