協会勧誘 1
「こんな朝からみんないるのかよ……」
長い階段を登ると、三人いた。
肩に付くか付かないかくらいの長さのやや茶色がかった少し癖のある髪をした小柄な女子。
背中の真ん中辺りまで伸びた癖のない黒髪の女子。
黒に茶色が少し混ざった色の髪を左の上の方で括っている少し幼い顔つきの女子。
特徴を言えばこうなるかと。……というか。
「何でお前がいるんだ!?……。」
そう、ここには篠原さん、村上さんと一緒にいたのだ。昨日突然襲ってきた女が。因みに昨日この女と一緒にいた竜は何故かいない。
「何でって、いつも居るとこに来いなんて言ったのそっちらしいじゃない……ここの階段どれだけキツいと思ってるのよ…出来れば来たくないよ……。」
こっちは時々倒れそうになるのを堪えてきたんですけど。
『昨日、あの場から撤退するときにちょっと捨て台詞みたいなのを……そもそも話をしてないんだから何もわかりませんよー?私は。』
アイが呼んだのかよ。
「すまんが座って良いか?ちょっと立ってるのキツい……。」
そう言い、ベンチに座る。
「というか、昨日結局なにがあったの?」
先頭が有ったことを知らないであろう篠原さんがそう聞いてくる。俺は正直に、簡潔に答えた。
「こいつが喧嘩を売ってきた。結果俺の腹に穴開いた。」
………正直、回復術式ってのはそんなに万能だろうか?なんて思わなくもない。まあ、ゲームでもケア○とかホ○ミとかで全回復とか序盤ならするし、おかしなことでは…………。
そしてその一言に反応したのは、そのような破壊をもたらした彼女であった。
「え!?そんなに威力あったのあれ!?というか、大丈夫なのですか先輩!?穴開くレベルの傷は相当高位な回復術じゃないと跡が残っちゃいますけど…大丈夫ですか……?」
お、おかしなことだったぁー!!そ、そうだよなぁ、むしろこのレベルが平均的な回復術だったらどうやって回復つかえる魔導師を倒すんだよ……。気絶させるしか無いじゃん。
因みに、傷跡は無い。つまり相当高位な回復術式だったらしい。
『魔法ですよ。……でも魔術ってことにしといたほうが良いですよ。』
そうなのか。
「んで、聞き忘れたけど。お前の名前と目的を言ってくれないか?」
目的はアイから聞いていたが一応聞く。
「んーと、目的は知ってるんじゃないですか?」
やはり、そう言うと思ってはいた。
「いや、直接細かく聞いときたいと思って。」
それにそう言った俺に対し、女子がしっかりとした調子で答える。
「聞きたい名前は本名ですか?魔導師としての二つ名ですか?」
魔導師としての二つ名?というのがよく判らなかったので、視界から外れていて、右側に居る村上さんを見る。するとそちらでは女子二人が話し合っていた。が、あまりいい雰囲気とは呼べないものだった。
仕方なく俺は、目の前の彼女に質問する。
「魔導師としての二つ名って何?」
それを聞き少し驚いたような表情を作り、小声で魔導師になったばかりだから仕方がないと呟きいてから答えた。……聞こえてるが本当にギリギリ聞き取れない位の声だった。元々耳は良いからそれのおかげだろう。
「魔導師が本名活動してたらすぐにリアルが割れちゃうんですよ。そもそも殆どの魔導師は顔を隠したりしますし。……二つ名ってのは魔導師登録したときの基本名、功績を出したときに贈与される名誉名があるんですよ。そこの鎧巫女なんかはそのうち3つ目の二つ名、一つ目の名誉名を貰うんじゃなかったかなあ。」
鎧巫女ってのは村上さんを示す名称だろう。
「めんどくさいから本名と二つ名両方名乗れ。」
「分かりました。」
そうして彼女が名乗る。
「私の魔導名は竜使、本名は菊川柚里。目的は太陽協会への勧誘。こんな所です。」
日本に3つ有るうちの一つの魔導師協会の名前である。他の二つは確か、月光協会と星宮協会って言ってたな。
「これで良いですよね。まあ、勧誘に対してどう答えますか?因みに先輩、あなたのことは勧誘するに値すると思いますよ。」
そんなこと言われても腹に穴開けられたしなあ。あれ、避けられる気がしない。何だったんだろうか。
「少し考えさせてくれ、他の勧誘してきた協会がここより魅力的だったらそっちの方が良いだろうしな。」
「考えてはくれるんですね!ありがとうございます!……もしかしたら即答で断られるかもと、心配だったのですよ………。」
まあ、普通は入りたくないよ。でも、まあ、出来ればフリーでいたい。仕事したくないし。
『この間、仕事の話聞いて面倒だと思ってたのはわかりますけど、それが理由ってのはまずいと思いますよ?』
勝手に言ってろ。
「あれ?あの二人どこへ行った?」
何故か篠原さんと村上さんが消えていた。
『気にすること無いでしょー。』
そうかもしれないな。
二人がいなくなったことに驚いて喚いてる女を黙らせるかも考えとくか。
「ねえねえ咲ちゃん?腹に穴開いたって平気だと思ってるの?」
「魔導師としての仕事をしたら大怪我なんて割とするわ。腹に穴開いたっていうけど、元通りの体にもどってるじゃないの。そんな小さなこと気にしてたら身が持たないよわよ。」
「……!?…アキ君が危険な目に遭うかもしれないの知ってたんでしょ!?太陽協会っていう協会は咲ちゃんも所属してる協会の人なんだから!」
村上は黙り込む。
「何でアキ君が危険な目に遭わなきゃ……!!」
村上が篠原の肩に手を置き、言う。
「本人の近くで言うのもあれだし、ちょっと、ここから離れない?」
「……………。」
篠原は村上を睨みつつ、後をついて行った。




