天気の良い嵐 1
先程まで車椅子に座っていた弱々しさはどこへやら、その男は鉄屑となった車椅子を足蹴にして、どこか神々しさを感じさせるオーラを扉から引き寄せていた。一瞬どころかずっと別人ではないかと疑っているが、やるべきことが変わることは無いだろう。
「まあ、こっちが標的になっちゃったからね……。」
仕方ないなと呟きつつも男から視線を外さない。
男が右手にオーラを集中させる。
「『虚天爆鎖。爆ぜろ。』」
右手をこちらに向ける。そしてレーザーのようにこちらに鎖状のオーラが伸びる。
それを刀で両断しようとしたが、何故か斬れず、柔らかい動きで刀に巻きついた。
───何か嫌な予感が…する!
男の右手が思い切り引かれ、刀がもってかれそうになるのを堪える。そして男が右手元の鎖をオーラを纏う左手で切断されるのと刀を変化させるのはほぼ同時だった。
男の手から離れた鎖は、男の側から順に爆ぜる。ただ、一つ一つの時間差など有ってないようなものだ。
爆発が目前まで迫る。そして、猛烈な爆風に、体が浮き、十数メートル後方へと飛ばされる。そうして壁に強かに背中を打ちつける。
「がはっ…!!!」
『大丈夫!?』
夜叉姫が心配の叫びを上げる。変化分で少々の魔力と爆風対策で魔力がまた切れる。背中の衝撃は少々予想を越えていた。まさか壁面にまで到達するなんて思っていなかったから。頭は打ってない、が、今は少し立てそうにない。どこかの骨が折れたなコレ。立てるとは思うけどかなり痛い。
───まあ、平気……だ。それより一瞬でも変化が遅れれば刀身が粉微塵になってたんじゃないか? それこそ平気か?
どこにいたのか、菊川が男に飛びかかっている。が諸手に集まるオーラで菊川の魔力自体を弾いて、魔法が当たっているようには見えない。
『─────ただいま戻りましたぁー!!!』
脳内に響き渡る陽気で明るい、今の俺の感情とは全く別の声色でアイはそう叫ぶ。
「おせぇよ。」
────全く、何をしてたのやら。




