開かれざる開いた門
祝百話!!
初めて書いた物語ですが内容、中身の長さはともかくとして、ようやく百話へと到達ですよ!
三桁!三桁ですよ!!
まあ、これといって特に特別なことは出来ませんが、これからもこの物語をよろしくお願いします。
突然、白いローブを着ている人達───半数は死体だ──に少し離れた扉のような床から蔓のような、茨のような何かが何本も伸びる。
それは触れただけで死体を氷の彫像に変え、未だ生きている者達を捕まえてゆっくりと凍りつき、体力を奪う。
やがてすべてが地面へ引き倒される。
……しかし、私、村上咲には茨のような蔓など飛んでこない。
どのような選別をしているのか分からない。
周りを見渡すと、篠原日舞も絡みつかれることなく無表情に佇んでいた。
しかし鐘本秋は違い、彼の足は凍てつき、倒されていた。
よく見るとゆっくり確実に扉の方へと捕らわれた人達は引きずり込まれている。生存者は皆抵抗しているが、死体はそうはいかない。死体は段々と引きずり込まれる速度が上がり扉の周りに着いて止まる。
ふと視界が少し暗くなる。まるで影の下にいるかのように。
上を見上げる。そこには───。
飛び上がる一瞬。飛行する一瞬。そして恐らく一瞬で校庭を通過する。
私は爆発的に加速して飛んだ。というより、ロケットのように発射したと言うのが近い。
鳥のように風を制し御することは出来ない。ただ一直線な飛行。
右手で襟首掴まれた男を、どうするかは分からない。なんで持ってきたかは分からない、強いて言うなら勘だ。…まあ投擲道具程度にはなるだろうなとは思っているが。
一瞬で捉えられる校庭の異様な姿に、私はただ、面倒なことになってるな、としか思わなかった。
一応これでも魔導士。一般人を超えては、いる。許容範囲も判断力も身体能力も。
一瞬で面倒事の一番面倒な部分を見抜く。一瞬で判断し一瞬で行動しなければいけないが、私は制限時間の無さからタイミングを逃すことはない。
緩いカーブ等をしながら飛ぶことは出来ない。だいたい私に出来ることは発進と停止。それだけだ。
私は足裏を前へ向けて、飛び上がるときと同じ様に爆発させた。
それだけで前進の勢いは削がれる。しかし爆発に多少の方向がズレていて、爆風が下方向から叩き上げられては少し体が上へと浮く。
この爆風が厄介で、私には飛行が出来ない。飛んでるが、これはできているとは言えない。
本来障壁のようなもので筒を作りそこから一方向へと風をとばす。これが爆発による飛翔法。しかしプロは爆風を障壁なしで制御する。これは慣れればとかじゃない。天才的な感覚で行われる。だから出来ない人もいる。
菊川柚里には障壁を魔力で作り上げるのが出来ない。彼女は炎以外まともに使えないのだ。
炎の壁なら出来る。衝撃は抜けるし燃やせないものは通過する。つまり爆発制御不能だ。
さっきの爆発による跳躍は、踵を浮かせた瞬間に爆発を起こして飛んだのだ。これも常人に出来る事じゃないが、本人曰く慣れらしい。
制御不能の爆発で空中を飛び回れないから飛行出来ない。出来るのは発信と、停止だけだ。停止も隙だらけで見てられるものじゃないが。
私は口の中で舌打ちし、しかし爆風で下へと打ち下ろされる事が無かったことに安堵した。
そして、姿勢を出来る範囲で制御し、下方へと男をブン投げた。
全力で、一切の手加減なしで。
落下し始めた目で投げた先を見ると、自分がした失敗に気付く。
しかし、まあ何とかなるか、と村上咲を見た。
まあ彼女は全力で人を投げましたよ? まあ見えなくても仕方のないことです。見ていた私は彼女が何を投げようとしているのか、わかった後はそれで何をしようというのか、分かりませんでしたけど。
彗星のごとく飛ぶ白の先には鐘本秋がいた。
あれが当たる結果何が起こるかは想像に難くない。よく見ればわかる筈だ。彼からは魔力が吐き出される事はなかったことに、魔力が底をついている事に。理由は知るわけ有りませんが、十中八九篠原日舞だと分かった。
まあ、それ以外にないですね。
さて、飛んできた彼女が狙ったのはゴーレムじゃなくて鐘本秋。そこには裏付けされた理由、意味はない。投げた本人に有あったのは純然たる勘だけだった……のだろう。
魔力は攻撃防御に使えます。勿論。ええ、魔力が無ければ? 私達魔導士も一般人です。
じゃああの隕石みたいに近付いてくるヒトにぶつかれば魔力のなくなっている秋君はどうなるでしょうか。
「なにやってるのよおおお!!あのバカおんなぁあああ!!!」
滅多言わない暴言を叫びつつ、両手から魔力を迸らせて秋君の上にクッションのような壁を作る。かなり距離があったので、大鎧ではなく魔法障壁。一瞬であの距離まで飛ばすのは特に問題なくできる。
壁にしたり弾道逸らしたりしなかったのは何となく自然落下するバカ女の勘が外れてないように思ったからだ。
クッションのような壁にヒトが当たると推進力が減衰した。しかし向こう側へと抜ける。
そしてそれは鐘本秋を大きく跳ね飛ばし、彼を蝕む蔓が彼から外れて代わりに飛んできた男がそれを受けた。
そのすぐ後、横から落下音と砂埃が舞い込み、こちらにかけてくる人影が現れた。
その人影が手が届きそうなくらい後ろに接近したのを感じ、振り向き様に右ストレートを叩き込んだ。
大きく跳ねとんだ相手を見て満足する、訳ない。
「邪魔したわね? 大鎧。」
『仕方ないだろう? 直撃したら死ぬだろう。彼女でも、だ。』
叩き込まれたストレートと相手の間に赤いオーラが壁となり拳を止めた。それが実際に起きたことだ。
急停止した拳は衝撃波を生み、はね飛ばしたのだ。
「私が何とかしなければ彼死んでたからね!?」
怒りを言葉に乗せて、私はそう言いはなった。
大きくはね飛ばされた体。特に足を確認する。やはり外側は凍り付いていて動きそうにない。太腿の中程までそうなっていては動けない。
転がり寝そべったままでは何もできるはず無い。機動力が削がれているから。
『切り落、とす? 邪魔、でしょ?』
夜叉姫が背筋の凍る事を言い、直ぐに首を横に振る。
人のそれより小さな炎の腕を作り上げて足を溶かしている。………大丈夫だ。己の焔で火傷なんてしない。
依然、ちっさいのか大きいのか分からないゴーレムはそこにいて、高笑いしながら、蔓に巻き付かれた半死半生の彼等を生け贄だと叫び、篠原日舞を神眼の少女などとのたまい、有りもしない虚ろな天使の名にすがり、開きもしない扉を見ている。
いや、半ば気付いてはいた。扉は開く。開けてはいけないと。
ああ、急いで融けてくれ氷、邪魔だ。早く離れさせないと、危ない。
何処からか焦る。魔力の殆ど無い俺には己の身体にしか、魔力には、頼ることはできない。
「ああ! あああ!! 開くさあ開け!!!」
狂人じみた叫びの中、俺は………。
「いや! わかってますけど緊急事態でしょ!? 助かってるから良いじゃないですか!!!」
良くない。彼が死ぬところだったのだ。少し恐怖に襲われるくらいだった。
「だぁもう!! 早くあのゴーレム風味の教祖をぶち壊して終わらしましょ!! それで良いじゃんですか!」
睨みつけるのを私は止めて、溜め息を吐いた。
「じゃあ、行きましょうか。」
一応結果的に彼は救えたのだし。そう言うと、彼女は笑顔になった。
「だけどタメ口は止めなさい。」
「すいません。」
蔓に巻き付けられた人が扉らしき床の周りで吊し上げられている。中には死体も混じっているその光景を彼が正常な状態で眺めていたら吐いていたのでは、なんて考える。その程度にはグロテスクな光景だった。
凍り付いていないのは死体と生者の顔面くらいだ。彼らには恐怖が顔に貼りついていた。
扉が光り出す。
何だろう、扉の上に茫然としている篠原日舞を見て、彼女をこのまま光の中に居させたら、彼女はどうにかなってしまってしまうのでは?───既に少しおかしいところはあったが──という不安を抱き、それを見て、走り出し、そして爆ぜるように加速した。
すべてを置いていくように加速した私はすんでのところで間に合ったと言うべきだろう。
私が扉に足が届いたとき扉が開いたのだから。
俺が見えたのは飛び込んだ女性が突っ立っていた女性を抱きつくように消える一瞬。見えたのはそんな一瞬だ。
そして扉は開き、蔓の先の氷の彫像は消え去った。
その情景に全てを察して、ゴーレムを睨みつけて立ち上がる。
「………………叩き斬るぞ。」
『………勿論。それが、私に、出来、ることだから。』




