そして、これから
「アルト! アルトっ!!」
肩を揺さぶられ、俺は気を失っていた事気づく。
何秒だろうか? それとも何分、何十分かは分からないが倒れてから意識がなかったのだろう。
それに声が聞こえるということは破れた鼓膜もリリィがヒールをかけてくれたの事で回復している。
「リリィ。 助かった」
「心配したんだよっ! ほんとに死ぬんじゃないか……って…」
強く抱きしめられ、俺の胸に顔を埋めてくる。ほんとによく泣く近頃のなリリィは。
「悪かったな。 最後まで付き合ってくれて」
「うん。 必死に堪えたんだから………」
「ああ。 知ってるよ」
俺はミノタウルスと戦う前にリリィと約束したことがある。
それは極限状態に陥たときに回復魔法をかけないでほしいとリリィに言った事だ。
俺のスキルを最大限に高め、ミノタウルスに反撃する為だ。
最大火力でミノタウルスは倒せたが、瀕死の姿を見せた事でリリィには心配をかけた。
泣いているリリィには申し訳ないが戦士の定めみたいなものだ。この火力が出せるからミノタウルスを高い防御力を貫通して倒せたようなものだし、逆に剣士ではこれができなかった。
ステータスを見ると俺のレベルは21まで上がっている。
あの異常なまでの速さ、闘牛の疾風は厄介だった。今でも手が痺れているほどだ、それほどの強敵だった。
だが、死線を潜った甲斐はある。これでようやく上級職の狂戦士に転職出来る。
ベッタリとくっついたリリィと一緒に俺達はギルドに報告を済ませ、その足で神殿に向かった。
「これで俺も狂戦士になれたってわけだ」
「おめでとうアルト。 これで上級職だね。 一年生で上級職になっのは今いる生徒会の会長含め、四人だけだって聞いてるよ」
「ああ。 いずれ闘う奴らだな」
ステータスも戦士の時とは違い軒並み上がっている。特に攻撃力が戦士の時とは倍以上になっている。
これが狂戦士。勇者を唯一超えられる圧倒的な火力。
今までは単体攻撃力だけだったが、レベルが上がれば範囲攻撃、鬼神の加護も習得出来る。
これで一学年交流戦も優勝も視野に入ってきた。何と言っても優勝候補が隣にいる勇者リリスだからな。まだ底が見えないからといって勝手に俺のライバルにされてるとはリリィも気付いていないだろう。
「ねぇアルト。 今日はもうゆっくりしよ」
「ああ。 帰って直ぐ寝るとするか」
「……ううん。 アルトと一緒に寝たい」
「それは……」
「……うん。 ちゃんと彼女として……ね?」
「……お、おう。 分かった」
その日の夜。 俺はリリィを抱いた。これから先、俺が狂戦士で闘う事になりリリィを泣かせる事があったとしても、ずっと死なずに一緒だと思って貰えるように。
次の日、俺はリリスと騎士団に呼ばれた。
二人でミノタウルスを討伐した事も噂になっていたらしいが、リリスの相方がミノタウルスを倒したと報告が上がっていた事が原因らしい。
「ここが王国騎士団の訓練施設か」
「大きいよね。 学園も広いけど、ここは広さも設備も世界一らしいから」
訓練場で大勢の騎士を訓練を指導していた一人の騎士が声をかけてくる。
見るからに纏うオーラが違う。
「この王国の騎士団長を務めてるカインだ。 君が噂の……」
「リリスの相方をやってるアルトと言います。 王立学園の一年です」
そう。騎士団長直々に俺が興味があるってことは、上手くすれば国王の耳にも入る。
これから先、俺が騎士団の連中を圧倒して活躍出来ればリリィとずっと一緒にいられるかもしれない。
コイツを幸せにするために、俺が出来ることは
俺が最強になり、リリスが最初で最強の[女勇者リリィ]と世界に名を広めさせる事だ。
待ってろ勇者一族。
お前達のリリスにやった事は間違っていたと、俺とリリィが二人で証明してやる。
それていつか世界最強のコンビになってやるよ。
その為に俺は勇者と一緒に成り上がる!
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