守りの腕輪とチキの笑顔
初めてのパーティーでの戦闘訓練は予想に反して上手くいっていた。
チキが後方から支援魔法で相手の前衛にいる剣士のスピードを下げ、タンクのボルドーが周りからヘイトを集めている間に俺が剣士を倒し、後は残った重剣士や支援魔法士やらをを叩く。そしてボルドーを回復させる。
これはフィリアからの提案だったが上手く機能している。
俺の素早さを補う為に一番先に相手の素早さをチキが一旦下げ、その間に俺のスピードを上げる。
状態異常を相手の回復魔道士がどちらかを解除しても俺が有利に立ち回れるように動いてくれているのだ。
これには先手を取れるチキの詠唱の早さが大きいが戦士のスピードをよく考えてくれている証拠でもある。
「中々良かった。 フィリアの状態異常解除も、ボルドーの引きつける壁役も、そしてチキの詠唱の早さも」
「アルトもな。やはり勇者と組んでいるだけある。戦士という職でよくここまで動けるものだな」
「わっちは詠唱の早さにだけは自信があるからね。 その代わり他はからっきしだけど」
「いやいや、それが支援魔道士の役割だからいいねん。 アルトちんも周りを見て立ち回れてたのが凄かったねん」
「あと、何度か魔道士の攻撃もボルドーのお陰で被弾せずに済んだのも助かった」
「なに、それが俺の役目だからな。これからも存分に俺を盾として使ってくれて構わない。 その代わりこれからも前衛を頼んだぞアルト」
「任せてくれボルドー。 俺も役目はきっちり果たすつもりだ」
差し出してきた手に軽く握手を交わす。どうやら俺をこのパーティーとして認めてくれたらしい。 ありがたい事だ。
「この編成ならあちし達には魔道士は必要なさそうねん。 それもチキが活躍してくれるお陰ねん」
「そう言って貰えるのは素直に嬉しいね。 わっちらの支援魔道士の立ち位置はいつも微妙だから。 居ても居なくてもいいみたいな。 特に攻撃特化の編成で守りの腕輪を上手く使ってるパーティーだと入れて貰えない事も多いし。 だから役に立てるように少しでも身軽な装備にして攻撃も貰わないようにしたりと工夫してるんだよ」
「そうだったのか。 支援魔道士も色々と大変なんだな。 たが今回の編成で魔道士よりもチキの存在の方が俺にはありがたいと思った。 これからも頼りにしてるぞ」
「にひひ。 任せてくれ」
そうクシャッと崩れた顔をして笑顔で返すチキはとても満足そうだ。
他のパーティーには魔術士もいたりするが、うちのパーティーはバランス重視で魔術士の編成を組んでいない。
気をつけなければならないのがファイアは状態異常の炎上、アイスアローは氷結などの状態異常など、回復させないと体力を削られたり、行動不可にさせられたりと極めて厄介な攻撃をしてくる存在だ。
この世界では魔王が討伐された300年前頃から魔物が状態異常攻撃を多様してくるようになった。
魔物の進化とも言えるかもしれないが、その為に対抗したのが状態異常解除の魔法と付与魔法だ。
このお陰で冒険者や、騎士団など魔物との戦闘が大分楽になった。
そして、とわりと最近だが、錬金術師が新たに作ったのが状態異常を防いだり付与したりも出来る防具。それが魔物から出た魔石から作られた[守りの腕輪]だ。
この腕輪は魔物の特性、属性を抽出して作られ、例えばこの前倒したウルフならウルフハウリングの状態異常攻撃、威嚇無効などの効果が付与されている。
効果は価値のある付与で変動するが、学園では卒業してからの事を考え、訓練時には簡易的な付与を施した守りの腕輪の貸し出しが許可されている。
戦術も複雑化していく中で俺が持っているのはスピードアップ(小)の守りの腕輪だ。
これには理由がある。俺の加護を隠す為だ。
当然このパーティーのメンバーの誰にも言っていない。
戦闘開始時に発動出来る加護をあえて使わないことで、今後の一年生同士の交流戦に備えているのだ。
そう。 勿論優勝するために。
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