王妃処刑カウントダウン
「陛下!わ、わたくしは…私はまだ死にたくありません!!!」
私は陛下に縋り付いて涙を落とします。
膝をついて頭を下げ命乞いをするしかありませんでした。
けれども、陛下は渋い顔をしています。
「議会は…処刑派に傾きつつある。」
「そんな!?」
涙声で叫びます。
私は何も悪くないのに!
ただ、ただ、運が悪かっただけなのに!!
「やはり、ハウル家が処刑派に回ったのが痛かった。」
ハウル家が!
私は愕然とします。
ハウル家は筆頭公爵家。
4つある公爵家のうち3つを従える貴族最大の派閥です。
それが丸ごと処刑派に鞍替えしたとなれば、いよいよ私の処刑が現実味を帯びてきます。
「ミカエルがサナに事情を話してなお婚約を結ばなかったのだ。
もう、吉兆の血を王家に取り込むのは無理と判断したようだ。」
「そんな…」
何故何故、サナは私を見捨てたの?
あんなに良くしてあげましたのに!
「メアリー、すまん、力になれなくて…」
「陛下!み、見捨てないで下さい!」
私の言葉にしかし陛下は悲しそうな顔をするばかりでした。
この時から具合が悪くなり部屋から出なくなりました。
夢で何度も処刑されました。
もう間も無く現実になるかと思うと身体が震え具合が悪くなります。
ミカエルならサナの心を掴めると思ったのに…
我が息子ながら顔も良いし性格も良いし優秀な子なのに何が気に入らなかったのでしょう。
少なくてもあの見た目だけのオーラス家子息より何倍も結婚相手として優れていると思うのですか…。
そう、一人で鬱々と過ごしていたある日。
隠密部隊の一人が私の元へとやってきました。
「妃殿下、ご機嫌麗しゅう。」
「…なんですか、死にゆく者を笑いにきたのですか?」
「まさか!そうではなく、処刑回避の為にご提案をお持ちしました。」
「…提案?」
「はい。今回の件はそもそも殿下とサナ様の仲を裂こうとオーラス家子息が割って入ったのが原因です。」
「…そうですね。」
今更ですね。
私は鼻で笑う。
「ですから、オーラス家子息に消えて貰えば宜しいのです。」
「…はい?」
目の前の男が不穏な言葉の私に囁きました。
オーラスの子息が消えたら…
「彼が消えれば殿下にサナ様の御心を捉える機会が巡ってくるかもしれません。」
「確かに…」
彼の言葉に頷く。
あの子供がいなくなれば再び議会はひっくりかえるかもしれません。
何より私には後がありません。
細かく考えるまでもありませんでした。
私は男に命じました。
「オーラス家子息の暗殺をしなさい」
「御意」
男は黒いローブの隙間から赤い髪をのぞかせながら恭しく礼をしたのでした。




