キスはお預け
途中ゼロ視点
王城内にある医務室に私とゼウスはいた。
ゼウスを椅子に座らせ私は彼の膝の傷に薬を塗る。
「うっ!」
「あ、痛かったですか!?すみません」
「いや、大丈夫だ…」
ゼウスがしょんぼりと顔を伏せる。
私はガーゼをテープで貼り付ける。
バンドエイドのような便利小道具はないのだ。
「ミカエル様はちょっと酷いです!
こんな怪我までさせて!」
「いや、僕が弱いからだよ。
父様も僕には呆れてるんだ。」
「そ、そんな事はありません!
私は人づてにゼウス様の事をゼロ様が褒めていたと聞いた事があります!
決して呆れてなどいませんわ!」
嘘で彼を励ます。
「そ、そうなの!?
と、父様が僕を褒めてた…?」
「はい!ですからどうか自信をお持ち下さい。
ゼウス様には潜在的な才能がお有りです。
まだ、開花していないだけですが、一度花開けば、ゼロ様のような優秀な騎士にもなれますわ!」
「ぼ、僕でも騎士に…!」
私とゼウスの目があった。
彼の目には希望が宿っていた。
「私も陰ながらゼウス様の応援をさせて下さい。」
「ぼ、僕の応援なんかしても…
と、いうか、殿下の応援はいいの?」
私はくすりと笑う。
「ゼウス様だから応援したいのです。
それに、既に完璧なミカエル様に応援なんて必要ありませんわ。
…ご迷惑でしょうか…?」
私はそっと彼の両手を握りしめ言う。
「そ、そんな事ないよ!
吉兆様の応援があればいつか本当に騎士になれそうだし、もしかしたら殿下にも勝てるかも!」
「そうです、その意気です!」
私達はしばしみつめあい…どちらからともなく笑いあったのだった。
…っち。
大人ならここでキスするシーンなのになぁ。
美少年とチュウしたかったなぁ。
ゲーム開始までお預けかな??
***
今日は息子が登城の日だった。
やはり、城中が浮き足立っていた。
我が息子は人の目を惹く外見をしており、さらに妻と娘の手によって軟派な男に育てられたからだ。
あれが騎士など片腹痛い。
ああ言う男は例えば宮廷楽士や吟遊詩人がお似合いなのだ。
「ゼロ様!」
騎士団の一人が俺に声をかけてきた。
「お前の息子が殿下にボロクソにヤラレタらしいぞ。」
ニヤニヤしながら言う。
こいつは別に俺の息子の心配をしている訳ではない。
俺の息子が弱者なのが嬉しくて仕方ないのだ。
俺に剣で勝てないが、こいつの息子は中々見所があり来年入団するのだ。
俺の不出来な息子と違いすぎて、話すのも嫌になる。
「相手が相手だ。
仕方ないだろう。」
「一体どうやって息子を殿下に近づけたんだ?
お前にも権力欲があったんだなぁ。」
「貴様!」
言うに事欠いてこの俺に権力目当てで殿下に息子を近づけたなどと言うとは!
「いやいや、騎士団ではちょっとした噂だぜ?
なんの役にも立たない騎士団長の息子が殿下に近づいたのはゼロ様が殿下に取り入るための布石だって!」
「なんだと!?」
俺は心底驚いた。
俺は息子を外に出したくなかったくらいなのに!
「まあ、あんたの息子は殿下の不興を買ったようだし上手くいかないもんだねぇ。」
不興を買った?
息子はこの僅かな時間で殿下に何をしたのだ?
「吉兆様の歓心を惹いたんだよ。」
「!?」
「殿下が吉兆様にご執心なのは知ってるだろう。
だからもう、城に呼ばれる事はないんじゃないかな?」
気持ちの悪い笑みを浮かべて言う。
「いやあ、残念だったね、
見た目のいい息子を持つと大変だね!」
奴はそう言って高笑いをしながら去っていった。
ああ、なんでこうなるんだ?
俺は息子が騎士になんてなれない軟弱者と理解してから関わる事を辞め、息子の話など一切しなかったのにも関わらず、城に呼ばれ、そしてよりにもよって吉兆様の御心を掴み殿下の不興を買うとは!
何もかもが嫌で仕方ない。
ああ、イライラする。
こういう時は女を抱いて賭博でもして遊ぶのが一番だ。
俺はあの怪しくも楽しい雰囲気を思い出し舌舐めずりをしたのだった。




