少しだけ触れ合う
途中ジークハルト視点
結果から言ってそれはそれは酷かった。
ゼウスはミカエルにコテンパに伸されたのだ。
思わずあっけにとられてしまったよ。
本当に人って飛ぶんだなぁ。
ジークハルトは私の横で大笑いしていた。
「あーあ、やりすぎ。
いくらサナ様の目にゼウス様が映りすぎだからといって何もここまでやらずとも…」
「ん?ジーク様何か仰いました?」
ジークの独り言は丁度剣の撃ち合い音でかき消されたが、恋愛的な台詞は聞き逃さない私の耳にはバッチリ聞こえていた。
聞こえないふりはお約束ですよ。
しかし、成る程、随分やり込めると思ったらミカエルってばヤキモチを焼いたわけね。
しかし、流石横恋慕キャラ。
僅か7歳でその道を進もうとするのか。
その道は茨の道だぞー。
しかし、ここまでゼウスが弱いとは思わなかった。
ミカエルの剣の腕が良いのを差し引いても酷い。
私と互角なんじゃなかろうか?
ゲームでのゼウスは主人公に対して騎士になんてなりたくないと言っている。
しかし、彼と主人公の出会いの場所は騎士の鍛錬場。一人で汗を流して打ち込みを必死にやっているのを主人公はうっとりと見つめるところから始まるのだ。
騎士になんてなりたくないと言いつつ本当は騎士に憧れているのが彼なのだ。
ゲーム時点ではどうしょうもないダメ男で騎士になるなんて夢のまた夢だが、今なら真面目に剣術を習っているかとも思って適当に持ち上げて呼びつけたのだが…。
うん、これは才能無いなぁ。
「…ゼウスは鍛錬が足りないのではないか?
ゼロに何を習っているのだ。」
ミカエルが問いかけるがゼウスは答えない。
ちょっとそれはさすがに不敬でしょう。
私はフォローしようと口を開きかけたその時。
「うっうっうっ…うわぁぁぁん!!」
『!?』
私達三人はあっけにとられる。
まさか幼子のように号泣するとは思わなかったのだ。
「お、おい…」
「ぜ、ゼウス様!」
男二人がオロオロするのを見て私は我にかえる。
今こそ攻略のしどきではないか!
「ゼウス様!泣かないでくださいまし!」
私はゼウスの元へ足早に駆け寄り、涙をハンカチで拭ってあげる。
ハンカチを貸すのではなく、私自らその涙を拭ったのだ。
『!!?』
ゼウスは驚き涙を止め、後ろの男二人もついでに驚いていた。
ミカエルはどうせゲームが始まれば主人公に惚れるが今は私に気があるみたいだし、ゼウス攻略のついでにつまみ食いしてもいいかな。
私はくるりと振り返り、わざとミカエルを睨む。
「ゼウス様をここまで痛めつけるなんて酷いではありませんか!
ミカエル様ならもっと加減ができたのではありませんか!?」
「い、いや、その…」
事実を突きつけられ、ミカエルは一歩下がり目を伏せる。
「ミカエル様らしくありませんわ!
ゼウス様、お膝に怪我がありますわ。
さあ、手当をしに行きましょう。」
「えっ!?で、でも…」
「わ、私の手当は邪魔でございましょうか…?」
前世でも大活躍した、潤んだ瞳で上目遣い。
「そ、そんな事はないよ。」
「では、参りましょう。」
私はゼウスと手を繋いでこの場を離れたのだった。
***
「な、なんなんだよ、あいつ!!」
サナ様とゼウス様の姿が見えなくなった途端、ミカエル様の怒りが爆発した。
「あいつとはどちらを指しておいでですか?」
「両方に決まってる!」
半ば八つ当たり気味に言われてしまう。
「サナめ…あんなのがいいのか?
ゼウスもこの国の吉兆に気安く触りやがって。
あの挨拶の時から気に入らなかった!」
「ははぁ、サナ様をとられそうだからお怒りなんですね。」
「なっ!?そうではなくてな、いいか、サナとの婚約が成立しなければ母上の処刑を行わなければ私の立太がなされないのだ。
私は母上を処刑台になぞ送りたくない。
ただそれだけだ!
それ以上の理由なぞない!」
「はあ、では、ゼウス様がサナ様に本気で惚れたらミカエル様には勝ち目がありませんねぇ。」
「ど、どういう事だ!?」
「本気の恋心に打算が勝てる筈ないでしょう?」
「…!!」
苦虫を噛み潰したような顔をこちらに向けても仕方ないですよ!
「ゼウスはもう城には呼ばん!」
ふいっとミカエル様は背を向けてこの場から去ってしまった。
しかし、ゼウス様の美しさに、さしものサナ様も骨抜きのご様子。
てっきり、サナ様はミカエル様と婚約を結ぶと思っていましたが、もしかしたら違うかもしれませんね。
もし、ゼウス様との仲がこのまま進むのであれば、私も身の振り方を考えなくてはなりませんね。




