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閑話 アリスの思い2

私用で大変遅くなりました。今月はごたごたして投稿ペースが遅くなるかもです。

 午後になるとリズが再び孤児院にやってきた。

 

「アリス出かける前にこれを首にかけてください。」

 

 そう言ってリズが紐のついた袋を手渡してきた。

 

「これは?」

「お守りですよ。これには私の魔術を込めてあってアリスの周りに障壁を張ります。半日しか持ちませんがそれで他の人に触れてしまわないようにできますよ。」

 

 説明を聞き早速首にかける。

 

「リズこんな物まで用意してくれてありがとう。」

「私が誘ったのですから万が一なんて起こさせませんよ。…ところでアリス…手袋はさすがに暑いと思いますよ。」

 

 うっ…外に出るので今のわたしは完全装備状態だ。今日は晴天で長袖はまだいけそうだがリズの言う通り手袋までするのは不自然だろう。このまま手袋をするのはリズの用意してくれたお守りの効果を疑っているみたいになってしまう。わたしは勇気を出して手袋をとった。

 

「それじゃあ行きましょう。」

 

 リズに背中を押されながらわたしは街に繰り出した。

 

 しかしわたしは通行人の横を通るたびに反応して体が縮こまってしまうためにリズに手を引いてもらいながら歩いている。情けないと思いながらもどうしても体が動いてくれないのだ。

 

「アリス、あっちの方に行ってみましょう。」

 

 気がつくと人の流れが疎らになってきている。最初リズは街の中心部に向かっていたように思うのだが今は中心から離れていっているようだ。

 

「リズどこへ向かっているの?」

「それは…あっ!ここからなら見えますね。あそこですよ。」

 

 リズは街の外を指差した。その先には孤児院からも見えるピキナ山があった。街の探索をするはずだったのにわたしの様子を見て予定を変更したのだろう。申し訳なく思ってしまう。

 

「ピキナ山に登るの?」

「あれ山なのですか!?」

 

 勢いよくリズが詰め寄ってきた。

 

「え…その…街の人はそう呼んでるわ。」

 

 なぜかリズはそれを聞いて不満そうな顔をしている。名前が気に入らなかったのだろうか?

 

 街の外に出た所でわたしの息はすでにあがってしまっていた。部屋に引きこもっていたつけが回ってきたのだ。

 

「大丈夫ですかアリス。…まだ山?に登る前ですが…」

「…へ、平気よ…。…このくらいしんどい方が…いい思い出になるわ…。」

 

 ここまで来て引き返すなんて選択肢はない。幸い傾斜も緩やかだし行けない事は無いだろう。

 

 

 

「アリス。一旦この辺で休憩しましょう。」

 

 山?の中腹あたりで一息つく事になった。リズは休まなくても平気そうなのだがわたしが限界だった。

 

「はぁ…はぁ…。ありがとう…。ほとんど外に出ないから…体力なくて…。」

 

 わたしの体力がここまで無いとは…

 わたしが腰を下ろして休んでいる間リズは周囲を散歩するようだ。なにか珍しいものでもあるのかあっちにフラフラこっちにフラフラとしている。なんか危なっかしくて目が離せない。

 

「………!………………………?」

 

 よく聞こえないがリズが何かを見つけたようだ。

 

「………………………。」

「リズ。なにか見つけたの?」

 

 リズが何故か中腰のまま固まってしまったので声をかけてみる。

 

「い、いえ。この辺に綺麗な花があったように見えたのですが………………………。…あっ………!」

 

 ちょっと距離があったので全部聞き取れなかったが動きから察するにリズは目当ての見つけられたようだ。

 リズはこっちに走りよってくると見つけてきた物をわたしに差し出してきた。

 

「可愛い花を見つけました。…良ければアリスにプレゼントしたいのですが貰ってくれますか?」

「本当!…えっ………でも…それ…。」

 

 それは青い小さな花…ラキと呼ばれている花だった。特に珍しい花ではないがこれを人におくるのは特別な意味があるとマザーが言っていた。マザーいわく愛の告白をする時に贈る花らしい。それはこの花を贈る相手を幸せにするという意思を表しているらしい。そしてこの花を受け取ることでその人に幸せにしてもらうという返答になっている。なのでこのラキの花は《幸せを贈る花》と言われている。たいていは男性が女性に贈るらしいが逆の場合もあるらしい。

 

 マザーに…アリスちゃんにもきっとラキの花を贈ってくれる人が現れるわ…とか言われていたが…。当時はわたしの固有魔法の事もあってありえないと思っていたがまさか同性に贈られるとは!

 

 …いや…きっとリズはその風習を知らないのだろう。この街にも来たばかりだと言っていたし。ちょっとドキッとしてしまったが意味を知らないのならノーカンだろう。後でリズにこの花の意味を教えてあげよう。

 しかしリズの次の言葉でわたしが考えていたことが全て吹き飛んだ。

 

「この花を貰った人は幸せになれるそうですよ。アリスに受け取って欲しいです。」

 

 意味知ってたーー!…知っていてこの花を渡してくるという事はそういう事なのだろうか。しかし、昨日出会ったばかりなのにそんな事はありえるのか?わたしのどこにそこまで好かれる要素があったのかさっぱりわからない。

 

「でも…わたし…リズとは昨日出会ったばかりよ。」

 

 頭のどこかでわたしの早とちりではないか、何かの間違いではないのかという疑念が生まれる。こういう物は自分とは無縁だと思ってきたのだ。しかもそれが同性だとは考えた事もなかった。

 

「会ったばかりですが私はアリスの事が好きですよ。」

「!!………。わ、わたし女よ。」

「??…。知ってますよ。」

 

 どうしよう。ここまでストレートに言われると否定の言葉が続かない。………いや、わたしは否定して欲しかったのか?リズに否定されなくてほっとしてないか?頭が混乱しすぎて自分の思考の意味が分からない。リズの言葉を聞くたびに心臓の鼓動が早くなって眩暈までしてきた。

 わたしが動けないでいるとリズの元気がみるみるうちに無くなっていく。悲しそうなリズの顔を見たとたんわたしはさっきまで固まってたのが嘘のようにあっさり動いてリズの手からラキの花を抜き取っていた。

 

「わたしは…まだよくわからないけどリズの気持ちは嬉しかったから…。」

 

 リズには笑顔でいて欲しくて…悲しそうな顔を見たくなくてとっさに花を受け取ってしまった。通常は受け取ったラキの花は散ってしまわないように押し花などにして保管するらしいのだが…わたしはどうしたらいいのだろう。さっき言った通りわたしは愛とか恋とかと言うのはまだよく分からない。こんな中途半端なままで花を受け取ってリズに失礼ではなかったのか?だからといって今からリズに花を突き返すのは論外だ。わたしが花の扱いに悩んでいるとリズに追撃の言葉をかけられる。

 

「押し花とかにすると良いと思いますよ。」

 

 リズの言葉にわたしの肩がビクッと動いてしまう。リズは本気なのだと再認識して、それを受け取った以上わたしもリズの気持ちに応えられるようになろうと生真面目に考えるのであった。

 

「充分休みましたしアリスが良ければそろそろ出発しましょう。」

「え、ええ。そうね。わたしはもう大丈夫よ。」

 

 再び頂上目指して歩きだす。何か休めた気がしないのだが…。ちらっとリズの横顔を見た後、わたしの手の中にある青い花に目を落とす。リズはこの花をわたしに渡すのにどの位勇気を出したのだろう。それは昨日わたしがリズに友達になって欲しいと言った時とは比べ物にならないほど必要だったと思う。わたしではとてもじゃないができないだろう。今は背中を押してもらわないと外にも出れないわたしだけれどリズのそばなら勇気を沢山わけてもらえれる。…なんかリズには貰ってばかりだな。ちゃんと返せるようになりたい。そのためには頑張らないと。今のわたしにはできる事が少なすぎる。いつか自分で胸を張れるようになってわたしもリズの力になりたい。

 

 そんな事を考えていたため山登りの疲労と相まって口数が減ってしまうのだった。

 

 

 その後なんとか山頂に到着したのだった。しばらく呼吸を整えてようやく景色を楽しむ余裕ができる。赤い屋根の家が並んだチャドゥの街並みが一望できた。

 

「わぁ~凄くいい景色ね。これがわたしの育った街なのね。」

「ええ、二度目ですがやはりこの景色は綺麗です。」

 

 しばらくその場に二人で並んで腰を下ろして風を感じながらまったりと過ごす。

 その時ふと疑問が浮かんだ。リズは旅をしていたはずだ。この街もずっといる訳ではないのではないか。

 

「リズはこの街にはどのくらい滞在するつもりなの?」

「そうですね…街と周囲の探索が終わるまでと思っていたのでだいたい一週間ほどを予定していたのですが…。」

 

 やはり街に居つくつもりはなかったのか。そして予想以上に短い!…ここでリズと別れてしまうとまたわたしは何も出来なくなる。それは嫌だ!それにわたしはどこか危なっかしく見えるリズを支えてあげられるようになると決めたのだから。

 

「一週間…か。………リズ!わたし決めたわ。必ずそれまでにマザーを説得する!」

 

 リズの旅についていく。ただ今のわたしではリズの足を引っ張るだけになってしまう。せめてリズが教えてくれると言ってくれた魔術をそれまでに少しでも使えるようになろう。そうすればマザーの説得もしやすくなるだろう。

 

「そうですか。頑張って下さいアリス。」

「ええ、勿論!」

 

 リズが応援してくれる。それだけでわたしはもっと頑張れるだろう。

 次の日、わたしが全身筋肉痛で動けなくなり計画がいきなり頓挫する事になるとは思っていないのであった。


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