19 虚空蔵へショートカットだ(4)
私の問いに、チャックは小鼻を膨らませ、
「大丈夫だ。幾らでもOKよ」と答えた。
横でミカエルは、いきなり報酬の話に入って呆れた様子だ。
「この青華寺は、あちこち痛んでいるから、修繕してほしいんだ。それと、お布施も定期的にしてほしい」
「おう、任せとけ」
「キャッ、ありがとっ、太っ腹ねえ」と、ダーキニー。
「でも、どうして青華寺なの、あなたは報酬いらないの?」と、律子さん。
「こちらの和尚にお願いしたいことがあるのです。その話し合いがついたら、虚空蔵へ出発します。まあ、事前準備があるから、一週間後くらいになると思います。また、こちらから連絡をいれます」
私は、そう言って、その日の話し合いを終わらせた。すると、ミカエルが、早足で近寄ってくるや、私の両手を、自分の両手でギュッと握りしめ、目を潤ませて叫んだ。(たぶん、フランス語・・・でも意味は分かった)
「感激です。ぼくは、初めて神らしい神にお目にかかれて、本当に嬉しい。すぐ、あなたの担当になってお世話して差し上げたいです。直接お仕えすることはできなくても、心はもう、あなたの僕です。どうぞ、何なりとお言い付けくださいっ」
「はあ?・・・それは、どうも」(どうして、こうなったのか、さっぱり分からない)横では、チャックがジトーっとこちらを横目で睨んでいた。
「ミカちゃんよ、おみゃあが、キニッチに出会えたのは、わっちに仕えたからではの幸運だぞ。そこん所を忘れんでくれよ」
観音菩薩は拈華微笑の下で、密かに(あーあ、、またひとりファンが増えた。顯くんは本当に無自覚の人(&神仏)誑しだわ)と思った。
「ちょっと、あんたっ、いつまで顯の手を握りしめてるのよ、さっさと離しなさいよっ」
ダーキニーが目を吊り上げ、顯の傍からミカエルを追い払った。
彼らが帰った後、私は、剛照和尚と話し合った。
「三日三晩、真言を唱えるのか、それはできんことはないが・・・」
「この間、律子さんが連れて来た海外からのお客さん、和尚に三日間、真言を唱えていただきたいそうです。もちろんお布施もお納めしますし、寺の修理費用も負担したいそうで・・・」
「ほうっ、それは助かるが・・・」
和尚だって大人である。こんなうまい話は変だと思った。
「何か、あるんだろう。わしを変なことに巻き込むのはやめてくれ」
「何をおっしゃいますやら、和尚、散々、私を変な厄祓い案件に巻き込んでおいて、どの口でそんな事をおっしゃるのでしょう?先だっては、飛竜頭山の龍の件もちゃんと解決したでしょうが・・・」
私はそう話しながら、和尚をじっと見て圧をかけた。
「・・・・本当に真言を唱えるだけでいいのだな。それ以外は、一切何もしないからな」
「休憩は、ときどき取っていただいても大丈夫です。ただ二時間以上間を開けないでください」
「若い頃の荒行に比べれば、何ということもない。引き受けよう」
私は、人の体のままで、虚空蔵へ行こうとしていた。帰ってくるために、青華寺から真言を唱えてもらって、それを命綱にしようと思ったのだ。万が一、正気を失うことがあっても、降三世明王の守護の範囲にあれば、下界へ戻ってこられるだろう。
その後、チャックへ一週間後青華寺を再訪すること、チャック・ウルフのために降三世明王の真言を唱える業を和尚に行ってもらうから、御祈祷料をうーんとはずんで出すように言っておいた。




