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103号室の住人。1


103号室の呼び鈴を遠慮なく鳴らし続けるナキルさん。

ご、ご迷惑ではないの?心配になって、ナキルさんの腕から手を離そうとすると、こちらを向いて、


「まだ怖いんだろ。掴まってていい」

「え、いや、それもあるんですけど‥」

「あ、ナキル。鍵掛かってないぞ」

「よし入るぞ」

「え、ええ?!!」


アシェルさんは遠慮なくガチャッとドアを開くと、真っ暗な奥の部屋に向かって、



「おーい、ラピ!いるんだろ〜?」



大きな声でそう呼ぶと、ずるりと何かがずり落ちた音がして、ナキルさんから離しかけた腕にまった引っ付いてしまった。すみません!ご迷惑をお掛けして申し訳ない!でも怖い。


すると、部屋なのにひゅうっと冷たい風が私の頬を撫でた。


「風‥?」


部屋の中なのに風とは‥、もしかして窓が開けっ放しだったのかな?

アシェルさんが玄関にある部屋を照らすスイッチをパチッと押すと、パッと明かりがついて部屋の奥が見えるはずが、洞窟になっていた。



洞窟‥。



「洞窟!??」

「あ〜、またラピの奴、勝手に部屋を異世界と繋げたな」

「前は滝の側だったから水音でわかったが洞窟の入り口だったから気付けなかったな‥」



二人の冷静な言葉に私はまたしても目を丸くした。

異世界と部屋を繋げるの?!?それってすごいことじゃない?


「‥ラピさんという方は、聖女ですか?」


ナキルさんに聞くと、横にいたアシェルさんがぶっと吹き出して、



「全然!!そんな可愛い存在じゃない!ラピはエルフだよ」

「エルフ?!あの森に住んでいるっていう‥」

「そんな可愛い存在ではないな」

「そうそう、あいつは何かっちゃああれば色々巻き起こす奴だよ」

「エルフなのに‥?」



なんだか私の中の静かで綺麗なエルフ像がおかしいことになりそうだ。

まぁ、部屋の中を洞窟に繋げてしまうって事は、確かにおかしい。


「恐らく洞窟の中で何か探しに行ってるんだろう。さっさと連れ帰って入り口を閉めてもらおう」

「そ、そうですね」

「魔物が出ないとは限らないしな〜」

「魔物!???」


またあのケルガガがご町内に逃げたらまずい。

それだけは是非ともご勘弁願いたい。


『火よ来たれ』


ナキルさんがそういうと、手の上から大きな火の塊が出てきて部屋の中いっぱいにある洞窟の入り口の奥が照らされた。ピチョン‥という水音が奥から聞こえたかと思うと、またヒュウッという音と共に風が吹いてきた。



「う、うわぁあ‥」



ナキルさんの腕に掴まりつつ、そっと奥を覗くと下へと続く小さな道らしきものが見えた。


「まったくあいつは‥。ふみはここで待っててくれ」

「え?!いやいや一緒に行きますよ!管理人ですし!」

「だが危ないぞ」

「う、そ、それは‥」


仰る通り過ぎるけれど、何もしないというのも気が引ける。

と、ニッコニコのアシェルさんが私の肩に手を置いて、



「わかるわかる!!こんな洞窟見たら胸が踊るよな〜!」

「‥若干食い違いがあるような?」

「大丈夫!俺だって戦士をしてるし、ここは勇気を出して一緒に行こうぜ!」



ワクワクした顔のアシェルさんに手を引かれ、ずんずんと前へ進んで行くがアシェルさん怖くないの??ナキルさんが「ゆっくり歩け」と後ろから声を掛けてくれたけれど、前へ行く足をどんどん早めるアシェルさんが怖い‥。



すると、奥の方から何か声が聞こえて‥

私とアシェルさんが顔を見合わせた。


「な、何か聞こえましたね‥」

「魔物じゃなさそうだな〜。どうする?攻撃してみるか?」

「いや、少し地盤が脆そうだ。中で崩れても困るしもう少し先に行こう」


冷静に分析している二人を見て、ギルドの戦士と魔王は伊達じゃないなぁ‥と感心してしまう。流石に孫とはいえ私と違って冷静だ。


ホッと息を吐いたその瞬間、



急に私とアシェルさんの右側の暗がりからうっすらと透けた白い影が見えて、私とアシェルさんは動きを止めると、



「「わぁああああああ!!!!」」



と、叫んだ。

その拍子にツルッとアシェルさんの足が滑って、私の手を引っ張ったまま道なき道を滑り台のように落ちていった。


「「だぁああああああ!!!!」」


目の前に大きな岩壁が見えて、私とアシェルさんが悲鳴を上げたその時、



『風よ!』



ナキルさんの声と共に、ビュッと私達の周りを風が包んだかと思うと、岩壁にぶつかる事なく動きが止まった。


「た、助かった‥‥」

「今の面白かったな!!」

「それを言えるのはアシェルさんだけですよ‥」


暗くてよく見えないはずなのに、アシェルさんの顔が光り輝いて見えるのってどんな魔法なんだろう。とにかくニコニコしているのはよくわかる。



すると、真っ暗な奥の方から、



「‥誰だ?」



少し高い声と共に、白い影が見えて息を飲む。

私とアシェルさんがそちらをじっと見ると、カツンとナキルさんの靴音が聞こえて、後ろを振り返った。



「ラピ、そこにいるんだろ」



そう言うと、奥の方から青白い顔をした少年が出てきて悲鳴を上げそうになった。じゅ、住人はおばけなの?!!!




実家の近くの公園にあった洞窟で秘密基地作ってお菓子置いておいたら

知らんおっさんが住み着いてたホラー‥。あれどうなったんだろ。


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