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ブルクハルトさんの言葉を聞いて、俺は想定外の事が起きていると察する。
それにしても、何が起きたのだろうか?
俺がそう思っていると、
「それにしても、厄介な事になった。単純なオークションなら融資は可能だが、闇オークションともなると金額も倍以上に跳ね上がる。…ブルクハルト、流石の私も闇オークションで買い物出来る程資金は持っていないぞ」
アードラー伯爵がブルクハルトさんにそう言う。
すると、
「…まさかあんな情報を隠されているとは…。情報収集が甘かったです」
ブルクハルトさんがそう言う。
隠されていた情報?
なんだそれ?
俺はそう思いながら、
「ブルクハルトさん、何でその魔族はオークションに出されるのではなく、闇オークションに出される事になったんですか?」
ブルクハルトさんにそう質問をすると、
「実は、捕らわれた魔族が魔王アンシエルの娘だったのです。その希少な血筋所為で単純なオークションに出すよりも儲けられると思った王族が、闇オークションに流したのでしょう。しかも、今回の闇オークションは仕組まれていると言っても良いくらい条件が厳しいです。オークション会場は貴族しか立ち入れないのは勿論、そこにジルヴェスター公爵もいらっしゃるという情報もあります!」
ブルクハルトさんが俺の質問に答えて頭を抱えてしまった。
魔族があの魔王アンシエルの娘っていう情報だけで頭が混乱しそうなのに、更に新しい名前が出てきた。
公爵っていうと、そこそこ地位が高いはずだよな。
俺がそう思っていると、
「ジルヴェスター公爵は人族至上主義の人でね。魔族や亜人をただの物としか思っていない人だ。過去に彼の元に送られた魔族や亜人はまともな姿で表の世界には出てこられない。噂程度だが、両手足を斬り落として抵抗出来ない状態にした後に婦館に売り飛ばしたり、拷問道具の実験に消耗品のように殺していくと聞いた事はある。事実、彼の領土には婦館があるのだが調査に行った者が吐きながら戻って来た事もある。今回の魔族も、おそらく彼に渡るように計画されているのだろう」
アードラー伯爵がそう説明してくれる。
…そんなクソ野郎の手に渡っては絶対にダメだが、どうしたものか…。
「闇オークションはいつ開催されるんですか?」
俺がアードラー伯爵に質問をすると、
「明日の夕刻に開催されるが、最初はアイテムなどだろう。世界から非合法で集められた物品がオークションに出される。その後に奴隷のオークションだ。今回の魔王アンシエルの娘は目玉の商品になると思われるから、出番は最後だろうな」
アードラー伯爵が俺の知りたい情報を的確に教えてくれる。
最初がアイテムなどの物のオークション…。
「最初の物品のオークション、時間はどれくらい掛かりますかね?」
俺が更にアードラー伯爵にそう聞くと、
「日によって違うし、出てくる物の珍しさにもよるが…。そうだな、最低でも2時間は掛かっていると思う」
アードラー伯爵が問いに答えてくれる。
2時間、それまでに会場の地形を理解して入れば何とかなるか?
でも、交渉が上手くいかなかったらそれ以上に時間が掛かる可能性がある。
俺がそう考えていると、
「何か策があるのかね?」
アードラー伯爵が真剣な表情で俺の事を見てくる。
「策と言うほど大した事では無いのですが、もしかしたら誰にも見つからずにその魔族を連れ出す事ができるかも知れません」
俺がそう言うと、俺の隣で項垂れていたブルクハルトさんが顔を上げて、
「そ、それは本当でしょうかッ!?」
俺に近づきながらそう聞いてきた。
あと、前もそうだったのだが驚いた時限定なのか興奮して顔を近づけて大きな声を出さないでほしい。
顔に唾が…。
俺がそう思っていると、
「一体どのような方法でそんな事が出来るんだ?」
アードラー伯爵も興味深そうに体を少し前のめりにして俺にそう聞いてくる。
「簡単な事では無いですが、アードラー伯爵は普通に闇オークション会場に入り、出来るだけオークションに参加して時間を長引かせてください。ブルクハルトさんには俺を魔族として、それも何か特別な魔族にして闇オークションに出品出来るように交渉していただき、それが成功したら俺が闇オークションに出されるであろう魔族を救う…みたいな感じで考えたのですが…」
俺が2人にそう仮の案を提案してみると、
「どう思いますかアードラー伯爵?」
「ふむ、単純にオークションに参加している様に見せかける程度なら、私に監視なども無いだろう。ただ、勝ってしまった場合に、私が払える値段なら良いのだが…」
そう話し合い、アードラー伯爵が不安な部分を指摘する。
だが、
「それは俺に任せてください。勝ってもお金を払う必要がないようにしますから」
俺はある考えがあるので、それは気にしないで欲しいと伝える。
すると、
「ですがビステル様、私が貴方を奴隷として出品することになりますと、オークション側からどのような拘束をされるのかわからないのですよ!」
ブルクハルトさんが俺の事を心配してくれたのか、少し慌てた様子でそう言ってくる。
俺はそんなブルクハルトさんに、
「奴隷とする時って、魔法か何かで拘束するんですか?」
そう質問をする。
すると、
「奴隷商人のそれぞれのやり方で拘束します。私はただ頑丈なキツクない錠とかですが、他の商人は魔法が施されたアイテムを使うものもいます。今回の闇オークションでは、おそらくアイテムを使った拘束でしょうが、どのようなものかはハッキリとは分かりません」
ブルクハルトさんが俺の質問にそう答えてくれる。
魔法が使われているのなら、これで十分だろう。
俺はそう思いながら、魔法使い装備に着けているローブから1枚の紙を出す。
「それは?」
アードラー伯爵が俺の手に持っている紙を見てそう聞いてくる。
その問いに俺は、
「これは魔法の効果を1回だけ打ち消す紙です。これを使えば拘束されてもどこかに仕込んでおけば使う事が出来ます」
堂々と、ブルクハルトさんとアードラー伯爵に課金した時のハズレアイテムを紹介した。
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