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俺がレオノーラさんが帰って来てくれるのを待ってから数分後、レオノーラさんに俺の考えが伝わったのか予想しているよりも速くレオノーラさんが返って来てくれた。

レオノーラさんは広場の隅の方で座っている俺達を見つけると、


「目を覚ましたのか」


レオノーラさんはそう言って俺達に近づいてくる。

それと同時に、レオノーラさんを警戒してから少しだけ体を硬くさせる様子を見せる彼女。

俺はそんな様子に、


「皆さんは大丈夫そうでしたか?」


まずはレオノーラさんにそう質問をする。

俺の問いを聞いたレオノーラさんは、


「あぁ、皆驚愕をしていたがとりあえず落ち着いて行動する様にとは伝えておいた。前から住んでいる人達に迷惑を掛けない様にな」


塔に着いたスラム街の人達や騎士団の人達に、俺の家族に迷惑を掛けない様に伝えてくれた様だ。

まぁ、スラム街の人達や騎士団の人達がそんなに大騒ぎする様な人達でも無さそうではあるが。

俺はそう思いつつ、


「とりあえず、スラム街の人達と騎士団の人達を移動させられた事は良かったと思います。それでこの人なんですが…」


レオノーラさんに話を切り出して隣にいる女性の事を見ると、俺と同じ様に女性に視線を向けるレオノーラさん。

俺とレオノーラさんの視線を受けて、女性は体を縮めてしまう。

そんな彼女の様子を見たレオノーラさんは、


「様子がおかしいが、どうしたのだ?」


心配そうに女性を見つつ、俺にそう質問をしてくる。

レオノーラさんの質問を聞いた俺は、


「どうやら、記憶を失ってしまっている様なんです。どうして近くにいたのかも分からない様ですし、更には自身の名前も分からない様なんです」


レオノーラさんに彼女の説明をすると、レオノーラさんはショックを受けた様な表情をして女性の事を見る。

そんなレオノーラさんに、


「体に触れた時に、痩せ細っていると思ったので保存食を渡したのですが、体に良い訳では無いのでしっかりとした食事をさせてあげたいのですが…。この状態の彼女に仮契約の説明してもあまり理解は出来ないだろうと思いますし、それに何も理解出来ない彼女に契約をするのはどうなのかと思って…」


俺がそう説明をすると、レオノーラさんは少し考える様に目を瞑る。

少ししてレオノーラさんが目を開けると、


「ヴァルダ、君が彼女に罪悪感を抱くとしても彼女と契約した方が良いだろう」


俺にそう言ってくる。

彼女の言葉に俺が理由を聞こうとすると、


「今、亜人族の人達がいないここ、スラム街はおそらく人族の手によって壊されてしまうだろう。故に、記憶が無い彼女をここに残しておく事は良い判断とは言えない。仮契約であれば、記憶が戻った際にも契約を切る事は出来るだろう?記憶が戻った時に、仮契約をした時の状況と説明をしてあげれば、おそらく納得してくれるだろう。今は、この人の安全を護る為に仮契約をするのが良策だと私は考える」


俺が声を出すよりも速く、レオノーラさんが理由を説明してくれる。

レオノーラさんの理由を聞いた俺は、


「………分かりました。…手を出して頂いても良いですか?」


レオノーラさんの言葉に従い、俺は隣に座っている女性にそう声を掛けて手を僅かに彼女に向けて伸ばす。

俺の言葉を聞いた女性は、少し怯えている様子で俺の事を見てくる。

流石に、いきなり手を出してくれと言われても警戒してしまうのは仕方が無い事だろう。

危険は無いと、信用して貰えるまで待つしかないかもな。

俺がそう思っていると、女性は俺が差し出している手と俺の事を交互に見た後、


「………」


そっと俺の差し出した手の上に、自分の指先を乗せてくれる。

彼女のその仕草に、俺は恐れながらも俺の事を信じようとしてくれる彼女の気持ちに、俺は全力で応えないといけないと思い、


「大丈夫です、すぐに終わらせますからね」


俺は彼女に優しく声を掛けながら少しだけ手を掴み、彼女の手の甲に本の中の世界(ワールドブック)の切れ端を押し付ける。

そうして彼女の手の甲に刻印を済ませると、俺はある事が閃いて本の中の世界(ワールドブック)を開いて仮契約のページを見る。

そこには今まで今夜も仮契約をした人達の名前が載っており、彼女の事も分かるのではないかと思ったのだ。

ゆっくりとページを開いていき、彼女のページになると俺はそこに書かれている文字を読む。

そこには、


「名前の欄が…空白…」


俺が今まで見た事が無い表示の仕方がされていた。

どんなに生まれたばっかりのモンスターでも、契約した時には種族名などが書かれていた。

なのに彼女は、名前どころか種族名すら書かれていない。

一体、何者なんだ彼女は?

俺はそう思いながらも、仮契約自体はしっかりと出来ている事を確認して、


「完了しました。ありがとうございます」


俺は女性にお礼を言い、名前をどうしようか考える。

そんな俺の様子に違和感を感じ取ったのか、レオノーラさんが俺の事をジッと見つめてくる。

その視線に気がついた俺は、


「…名前の欄が空白なんです。だから名前が分からなくて…」


女性の事を見ながらそう答える。

俺の言葉を聞いたレオノーラさんは、女性の事を見ると、


「では仮の名前を考えようではないか。このままでは彼女も生活し辛いだろうし、記憶が戻るその時までは仮の名前を呼ぼう」


レオノーラさんはそう言うと、女性に隣に座っても良いか問う。

レオノーラさんの質問を聞いた女性は、少し悩んで俺の事を見てきた後に、やはり少し怯えながら頷いた。

彼女の頷きを見たレオノーラさんは失礼すると言ってから、女性の隣に腰を下ろすと、


「…この髪は見え難くないのか?」


レオノーラさんが女性の前髪を指差してそう指摘する。

女性はレオノーラさんの言葉を聞いて顔を隠す様に手で覆ってしまう。

それを見たレオノーラさんは、


「すまない。悪気があった訳では無いのだが…」


女性の反応が違った様で、慌てて謝罪をする。

俺はそんな2人の様子を見て、


「ヨカナ、なんて名前はどうですか?」


俺はふと思いついた名前の候補を口に出す。

それを聞いたレオノーラさんと女性は俺の事を見てくると、


「ヨカナ、良いのではないか?」


レオノーラさんはそう言って女性に視線を移す。


「良いかな?」


俺がそう聞くと、女性は俺とレオノーラさんの2人の視線に慌てながらも頷いてくれた。


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