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345頁

セシリアを呼び出すと、レオノーラさん達が入っていった曇り靄からセシリアが出てくる。

そして、


「お呼びでしょうか、ヴァルダ様?」


俺にそう聞いてくるセシリア。

月明りが彼女の姿を照らして、彼女の可愛らしくも美しい姿をより際立たせている。

俺はそんな感想を抱きながら、


「夜遅くにすまないな。セシリアに、この建物と庭の様な場所を塔に移してもらいたいと思っている。手伝って欲しい」


セシリアを呼び出した理由を説明すると、


「大丈夫です、むしろもっと私を頼って下さって構いません。この大きさの建物でしたら、すぐに済むでしょう」


セシリアが俺にそう言った後、建物を少し見て分析をする。

彼女の言葉に対して、


「そうだな、先日の不帰の森…エルフ達の住む森に比べたら小さな領域だろう」


俺がそう言うと、セシリアは歩み出して建物の周りを確認し始める。

セシリアの後に続いて、俺は建物の前に僅かに広がっている庭のどこで区切るかを決める。

そうして互いに無言で作業を進めていると、


「…ヴァルダ様、先程から連れて来ている人達ですが、全員塔の一室に複数人を入室させている状態ですが、それで構わないのですか?」


孤児院の周りを調べ終え、区切る場所を決めて来たのであろうセシリアが俺にそう聞いてくる。

彼女の問いに俺は、


「あぁ、いきなり広い部屋で1人っきりにするのは心細く感じるだろう。とりあえず彼らが落ち着くまでは、集団で寝泊まりした方が良いかと思ってな。………こことあちらの木までを頼む」


セシリアの質問に答えつつ、セシリアのスキルを使用する際の位置を伝える。

それを聞いたセシリアは頷き、その場に立ってスキルを発動している。

そして全ての位置の確認が終わったセシリアは、


「完了しました。…スキルを発動します」


そう言い放つと、前回と同じ様に本の中の世界(ワールドブック)が勝手に開き、ページが次々と更新させられていく。

しかし今回は不帰の森の様にギリギリまで範囲を設定した訳では無いので、更新も十数秒で終了した。

とりあえず、ここでやる事は終わったと思い、


「ここでの仕事は、これで終わりだな。また頼むかもしれないが、それまでは塔での事を引き続きよろしく頼む」


俺がセシリアにそうお願いをすると、セシリアは綺麗に礼をして、


「分かりました。それでは失礼します」


俺にそう言って黒い靄へと戻ろうとすると、セシリアが靄に入る前に靄からレオノーラさんが出てくる。


「ッ?!…あぁ、セシリアさんか」

「はい。皆さまの手配は終わったのですか?」


近くにいたセシリアに驚いたレオノーラさんがセシリアにそう言うと、セシリアはレオノーラさんに騎士達の案内が終わった事を確認する。


「いや、ある程度の事を説明した後はシェーファさんに任せてしまった」

「分かりました。ヴァルダ様、失礼します」


レオノーラさんの言葉を聞いて、セシリアはシェーファの手伝いに行く為か、俺に挨拶をすると少し駆け足で黒い靄の中へと入っていった。

それを見送ると、


「彼女を呼び出して、どうかしたのか?」


レオノーラさんが俺にそう聞いてくる。

彼女の問いに、俺は大した事では無いですよと伝えると、


「では次に行く場所に向かいましょうか」


そう言って、どっちへ行くのか彼女に聞く。

俺がセシリアを呼び出した理由が知りたいのか、レオノーラさんは少し不満そうにしながらも向こうだと言ってくれて案内をし始めてくれる。

そうしてこれまでとは違って、俺とレオノーラさんだけでスラム街を歩き続ける。

俺もレオノーラさんも黙って歩き続けているの。

足音だけが月明りで照らされているスラム街で聞こえ、何か寂しさを感じさせている。

建物が古く、崩れそうだからだろうか?

趣…とはこういう事なのかもしれない。

俺がそう思っていると、僅かに話し声が聞こえてくる。

話し声が聞こえている方向に歩みを進めて行くと、そこには今まで以上にスラム街に住んでいる亜人族の人達が、先程塔に行った騎士団の最後まで残った騎士達と共に広場に集まっている。

広場とは言うが、スラム街の建物と建物の間が広い程度の空間なだけなのだが…。

俺がそう思っていると、広場に集まっている亜人族と騎士達が俺と顔を見せない様にしているレオノーラさんに気がついて、俺達に注目をしてくる。

そんな彼らの前にレオノーラさんが一歩前に出ると、


「皆、すまなかったな。心配を掛けてしまった」


謝罪をしながら、レオノーラさんが被っているフードを外した。

その様子に、やはりスラム街の人達は驚き喜びの表情をしていく。

…気配察知スキルに変な反応があるな。

俺はスラム街の人達に対して話しているレオノーラさんの事を見て、ここは彼女に任せようと考えると、俺は息を潜めて移動すると気配があった場所に移動する。

そこには倒れている女性?がいる。

うつ伏せで倒れており、髪の毛が長いから女性だと一応判断し、


「大丈夫ですか?」


そう声を掛けて体に触れて揺さぶって見ると、身に着けている服の上からでも分かる程、この人の体が痩せ細っているのが分かる。


「ぁ…ぁぁ…」


俺が声を掛けると、僅かにだが声を発している女性?

この人は、スラム街の人では無いのだろう。

彼女の身に着けている服は本当に簡素と行った方が良い。

無地の服と言って良いのか分からない、布に手を通すだけに作られた穴を施した程度の物を身に着けている。

毛量が多いのか、単純に髪の毛が長いのとぼさぼさだからなのか、目の前の人物の顔も見えない。

とりあえず、回復薬を飲ませてみよう。

俺はそう思うと、アイテム袋から回復薬を取り出して、


「失礼します」


そう一言声を掛けてから、俺は目の前の人の髪の毛を掻き分けて口を探す。

そうして掻き分けた髪の束から出てきた口元が見え、俺は回復薬の蓋を開けてから口に瓶を傾けて中身をゆっくりと口の中に注ぐ。

ゆっくりとゆっくりと中身を飲み続けている人を見ると、腕などに傷痕が見える。

拷問でもされていたのだろうか?

俺がそう思っていると、回復薬を全て飲み干した人が動かなくなる。

そして、


「すぅ………すぅ………」


寝息を立て始めた。

どうやら、体の辛さが消えたのだろうな。

俺はそう思いながら、こんな路地で横たわっている人を放置するのもどうかと思い、俺は仕方が無いと思い彼女?の膝の裏と背中に手を差し入れると、抱き上げてレオノーラさん達がいる方へと戻り始めた。


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