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錬金術師になった俺は、無造作に置かれている土とセシリアが運んでくれた石を手に取って錬金術を始める。
錬金術と言っても、俺の場合道具を使用しないやり方の錬金術だから、錬金するアイテムを両手で持って錬金術のスキルを使用すれば良いだけだが、流石に島を作るとなると時間が掛かってしまう。
その後、俺はセシリアに協力してもらって錬金術を使用し続ける。
そしてようやく、圧縮された人族島と亜人島が完成した。
これを島の外で使用すれば、他の浮いている島と同じように大きくなる。
それにしても「UFO」では簡単だった錬金術も、ここまでリアルな世界だと数時間も掛かってしまうんだな。
俺が思っていると、
「ヴァルダ様、これからも様々な人達を塔へ匿うのでしたら、一度全てのモンスターや亜人を集めてヴァルダ様から言ったほうがいいと、私は思います」
セシリアが俺にそう言ってくる。
…確かに、このまま俺が勝手に連れてきた人達にあいつらが気を使ってしまうのは、俺のせいでストレスを溜めてしまうな。
…今集めるのは唐突すぎるな。
「セシリアの言う通りだな。ならば明日の朝、島の第三階層に集まるように皆に伝えておいてもらえるか?」
俺がセシリアにお願いをすると、セシリアは俺に頭を下げて、
「かしこまりました」
そう言ってくれる。
とりあえず、この圧縮された島は置いておこう。
それにしてもあんなに沢山あった土と石材が、ずいぶんと少なくなったな。
採取依頼を受けた時に、少しずつ集めるか。
俺はそう考えて、自分のお腹が空いていることに気付く。
そういえば、まだ何も食べてなかったな。
つい集中してしまうと、何食も抜いてしまうのは悪い癖だと自覚してるんだがな…。
俺はそう思いながら、
「セシリア、今日の昼食は何のメニューだ?」
歩き出してセシリアにそう聞くと、
「はい。今日のメニューはパンでしたらカツサンド、ご飯ならかつ定食です」
そう言ってくれる。
…なるべく早く済ませたいからな、今日はカツサンドにしておくか。
それにしても、カツと言っていたが何の肉を使っているのだろう?
この世界に普通の牛や豚など存在しないからな。
少し食べるのは緊張する。
俺はその後、食堂がある階層に行ってカツサンドを貰ってから、それをすぐに食べて外の世界に戻ってきていた。
時間の経過は同じだからか、街は昼食を食べている職人や冒険者で溢れている。
とりあえず、冒険者ギルドに行って依頼を何個か済ませた後、ブルクハルトさんの奴隷館に行って金銭面が大丈夫なら奴隷を買ってみるかな。
俺はそう思いながら、とりあえず冒険者ギルドに足を運んだ。
だが、昼間の担当であろうリタさんに俺が受ける事ができる依頼があるかと聞くと、今は無いと言われてしまった。
仕方なく俺は、大したお金も持たずにブルクハルトさんの奴隷館に足を運んだのだが…。
昨日と違う受付の人がいて、ブルクハルトさんの居場所を聞いたのだがどこへ行ったのかは分からないと言われてしまい途方に暮れる…。
俺はブルクハルトさんの奴隷館の前で、やる事が無くなった事にどうしようかと考える。
そして、とりあえずアイテム屋や武具店に行ってみようと思い行動を開始した。
と言っても、俺の事を嫌な目で見てくる人には声を掛けない。
流石に何回も威圧スキルを使って警戒とかされたくないからだ。
俺だってそこまで我慢強い方ではない。
俺自身に何を言われてもいいのだが、相手がぽろっと亜人などに嫌な発言をしたら怒ってしまう。
変な騒動をしないためにも、出来るだけ俺の事を普通に見てくれる人に話しかける。
こう見えても、人の視線には敏感だから判別はできる。
そうして話を聞いて辿り着いたアイテム屋。
中に入ると、装備を付けている冒険者と思われる人達が回復薬の様な液体が入っている細い瓶を見ている。
同じ物が置かれている棚を見ると、液体それぞれの色が違う。
…こんなに色が違うのは初めて見たな。
「UFO」の回復薬は、普通の回復薬で水色。
MP回復薬は、赤色をしている。
上位の物は、その液体の中に何かキラキラした米粒より小さい結晶が入っているだけだ。
つまり色だけで言うと、2色しかない。
なのに今置かれている回復薬は、10種類くらい様々な色に分かれている。
…か、買いたいが手持ちがない所為で手が出しにくい…。
俺がそう思っていると、
「らっしゃい、魔族とは珍しいね」
筋肉隆々の男性が店の奥から出てきた。
…迫力が凄い、自然と威圧スキルを放っている様だ。
「俺は魔族じゃないです、少し過去に患った中二病の所為で、こんな姿になったんです」
俺がそう言うと、
「そうかい、それはすまなかった」
男性が俺に謝ってくれる。
どうやら、この人はいい人そうだ。
「すみません。少し聞きたいことがあるんですが、良いですか?」
俺がそう思って聞いてみると、
「構わないよ、なんだ?」
男性がそう言ってくれる。
「この回復薬、何でこんなにも色があるんですか?」
俺が棚の回復薬を指差してそう質問すると、男性が少し驚いたような表情をして、
「あんたジーグから来たのかい?」
そう聞いてきた。
ジーグ?
「いえ、多分違うと思います」
俺がそう答えると、
「あ、あぁすまない。ポーションを回復薬なんて呼ぶのは、ジーグの人たちしかいねえからつい聞いちまった。すまないな」
男性が謝罪をしてくる。
そして続けて、
「ポーションの色だが、単純に効果が良い物とそこまでの物を置いてあるんだよ。この水色が一番効き目があって高価だぞ。逆に安価だが効果もそれほどない気休め程度の回復しかできないのが、この紫色のポーションだ」
毒々しい色をした液体が入っている瓶を指さす。
それにしても、ポーション呼びか…。
これからはこっち呼びをした方が良いかもしれないな。
あれ?そういえばMP回復薬はどこにあるんだ?
俺はそう考えて、
「えっと、MPポーションはどこにあるんですか?」
男性にそう聞くと、
「あん?なんだそれ?」
男性は俺が何を言っているのか理解できない様子で、俺にそう言ってきた…。
まさか、MPを回復する手段は自然回復しかないのか?
俺はそう考えて、
「魔法を使ったら、魔力はどうやって回復するんですか?」
そう聞いた瞬間、
「魔法を使える人間なんて、そんなの貴族様達しかいないだろ。こんなちょっと栄えている街にはそんなの無いし、あっても意味がないぞ」
男性が、俺の予想を裏切る事を言ってきた…。
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