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魔女の劇団  作者: 倉敷純次
ベルルックサリーシステム
28/72

ヴァーレ・バルドグランプリ 大会概要

 なんとか広場に到着。すでに衣装らしき服を纏っている俳優たちが見かけられた。


 ここでスッチとも合流した。彼は袋に包まれた大量の荷物を持ってきていた。今日の本番で使用する衣装だ。

 魔女の劇団は、種々様々(しゅじゅさまざま)な衣装や小道具を保管している。これらは全て、過去の公演で使用されていたものだ。よってナワテらが舞台道具に事欠く必要はない。


「おはよう、スッチ。ちゃんと酒は抜いてきたんだろうな?」

「ああ、バッチリやで」


 スッチはそう言うと、息を吐いてナワテに口臭を嗅がせた。酒の匂いはしなかったが、独特な加齢臭が鼻孔びこうを刺す。


「うっ……よ、よし。本番は手はずどおり頼む」

「まかせとけ。そんなことより、はよ案内済ませんかいな」


 バルグラに参加する劇団はここで案内を受ける決まりとなっている。案内役はマリリンだ。


 早速、ナワテは彼女に詰め寄った。


「マリリン。計ったな」

「え、なにがでしょうか?」

「とぼけるな。厄介な劇団と分かっていて、ぼくたちに魔女の劇団を紹介したんだろ」


 ナワテの言う通り。魔女の劇団が復活すればナワテたちに猜疑さいぎの目が向けられることくらい、大会の案内人なら予想出来たはずだ。


「えへっ、すみません。魔女の復活、どうしてもこの目で見てみたかったので」


 マリリンはこぶしを頭に当てて舌を出した。お茶目なその仕草は、静止画にして飾っておきたいくらい可憐な姿だった。


「あなたの仕事は男に媚びを売ることなのかしら。そうじゃないならとっとと要件を済ませてよ」

「あっ、は、はい。申し訳ございません……」


 必要以上にマリリンを脅かすルル。ナワテが振り返ると、ルルの顔は不機嫌そのものだった。


 その後、若干テンションの下がったマリリンの口から大会の説明が述べられた。


 今大会に出場する劇団は52組。総勢180名が参加する。

 参加者だけでもヴァーレ人口の二割近くにのぼる人数だ。しかし、見方を変えれば、審査と投票を行う者たちも、全員がヴァーレ・バルドグランプリの参加者なのである。平均投票率は約九割。この大会がいかに、この町の住民たちにとって身近であるかがうかがい知れる。


 大会は二つの舞台で行われる。ポッポ街の大通りに設置されている最南の舞台と最北の舞台だ。

 各劇団は、マチネ公演(午前8時〜午後1時の公演)と、ソワレ公演(午後2時〜7時の公演)の一日二公演をこなさなければならない。


 マリリンは団長のスッチに『Bブロック。25番目』と書かれた紙を渡した。

 つまり、魔女の劇団のマチネ公演は、北側の舞台でケツから2番目、25番目に行われる。ソワレ公演は南側の舞台で行われ、出順はマチネと逆転して頭から2番目となる。マチネとソワレで出演の順番が逆転するというわけだ。

 おそらく、出順による有利不利を考慮してのことだろう。この(たぐい)のショーレースは、まだ観客のエンジンが掛かりきっていないトップバッターが不利になりやすい。それによるクレームはこれで解消される。


『上演時間、10分以内の作品であること』

『ジャンルは問わないが、過度な露出は控えること』

『火気厳禁』


 この三つが、作品上演における規制である。

 ナワテの故郷デリスランドでは、演劇界のコンプライアンス規程がかなり厳しい。その世界で生きてきたナワテからすれば、今大会の規制はかなり緩く感じた。


 規制が緩くなるということは、作者、演者の自由度が増すことを意味する。緩めれば緩めるほど、とんでもなく悪い作品が生み出されることは事実だ。しかし裏を返せば、とんでもなく良い作品が生み出される可能性も高くなる。逆に規制を強めれば、悪い作品は生まれづらくなるが、付随して良い作品も生まれづらくなる。現在のデリスランドが正にその典型だ。

 でも、ヴァーレではその心配はなさそうだ。

 この町の演劇レベルが高い理由が、ナワテには少し分かった気がした。


「それではっ、復活せし魔女の劇団の皆々さま。行ってらっしゃいませ!」


 これまでになく、たくましい声で皆を送り出すマリリン。彼女もまた、魔女の復活を心待ちにしていた者の一人なのだ。


「ありがとう、マリリン。次に君に会うのは、ぼくたちがスタディオンのローブを羽織っているときだ」


 ナワテが意気込みを伝えたあと、彼女は少し涙ぐんでいた。


ここまでお時間を頂いた方々、誠にありがとうございます! 感謝感激です!


もしよろしければ、評価【☆☆☆☆☆】を押してくださいませm(__)m


今後の励みに致します!(^^)!

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