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七兄弟物語  作者: 唯畏
9/9

♯9 虹宮希実の悩み(3)

ぶーぶー


ん? 星夜からメールか。


『希実今どこいんの?』


まぁあんな感じで家出てきたからそりゃあ連絡も来るよな。


『2丁目のファミレス』


『おー、俺も行こっかな』


『いやいや、そろそろ帰ろうと思ってるのに』


『うん、でももう着いたから』


「え」


「ん? どうした、希実」


大輝と目が合う。


ざわざわ ざわざわ


店内にざわめきが起こる。

うわー、ほんとに来たんだな。


「あ、おった。よー、お二人さん」


かっこいいの権化が現れて、周りの視線がみんな星夜に集まる。


俺だってスタイルは負けてないし、イケメン度だって負けてないと思うんだけど、醸し出す雰囲気が星夜は異常なんだ。


「星夜。どうしたんだ」


大輝の驚いた声に


「うん、暁が心配してて、それを見かねた敦が迎えに行ってこいって言うから。まあどうせファミレスあたりやろうとは思ったんやけど、一応入る前に確認で希実にメール打たせてもらって」


な、と言わんばかりの顔で俺を見てくる星夜。


「よくファミレスってわかったね? 大輝に連れてこられて割とびっくりしたんだけど?」


「いや、大輝が高校生の希実を連れていきそうな場所なんてたかが知れてるじゃん」


星夜はのほほんとした性格のくせに、人のことをよく見ている。相手の思考を読むのもうまくて、ババ抜きとかダウトとかインサイダーゲームとか、結構強い。

そういう心理戦みたいなものは大輝が一番強いけど、星夜が二番目に強いと思う。


「迎えにくる前にメールしてくれれば帰ったのに」


「いや、でも雰囲気とかあるじゃん。深刻そうなら遠慮するしさ。それに、べつに急いで帰らんでもいいんよ。暁の心配さえ解ければいいんだから、大丈夫そうだったって言っとくし」


「うーん、、どうする? 大輝」


「とりあえず、星夜も座りなよ。マンゴージュースとか頼むか?」


「ええのん。じゃあ、1杯飲んじゃおうかな」


星夜は俺の隣に座って、店員さんに手を上げる。


「あ、俺にもマンゴージュースください」


「かしこまりました」


目をハートにした店員さんが夢見心地といった顔で、ぼんやりと返事をする。

大丈夫かな、注文忘れないといいけど。


「星夜、店長にならないかって誘われてるんだって?」


「ああ、そうなんよ。なるかはまだ決められないけどな」


「なんか他にやりたいこととかあるの?」


「うーん、それもよくわからないんよな」


一緒だ。俺も。

自分が何をやりたいのかすら、何もわからない。


「やりたいことがわからないなら、やりたくないことが何か考えてみるのも面白いかもしれないぞ。俺も役とか選ぶときそういうアプローチで考えることあるんだけど、やりたくないことの反対にやりたいことがあるはずだから、意外に近道」 


やりたくないことかぁ。


「ま、そのうち見つかるよ。まだそんな焦らなくてもいいんじゃないか」


俺と星夜に何も思いつかないのを見て取ると、大輝は呆れたような、でもとてつもなく優しい笑顔でそう言った。


「お待たせいたしました。トロピカルマンゴージュースでございます。ごゆっくりどうぞ」


さっきの店員さんが目をハートにしてマンゴージュースを持ってきた。

ごゆっくりにだいぶ熱がこもっているように感じる。


「うまいなぁ、ここのマンゴージュース」


無事に来たマンゴージュースに星夜は素直な感動を漏らす。

それにしても、あの店員さん、仕事はきっちりできるタイプの人だったみたい。


星夜は良くも悪くも嘘を吐かない。

イケメンが故に、社交辞令を使わずとも周りにちやほやされてきたんだ。


嘘を吐く必要がないだけ。


だから、まあ、美味しいって言ってもらえたのは嬉しい。


「大輝と希実っていつも二人でどんなこと話すん?」


「べつに、大輝のお仕事の話聞いたりとか、そんな感じだよ」


「大輝の仕事な、そうだ、明日からもドラマの撮影やろ? ずっと忙しそうやんな」


「そういえば、明日音楽番組出るんじゃなかったっけ?」


CMで見た気がする。


「うん、スマイルミュージック。ドラマの主題歌を歌う予定なんだ。ドラマの撮影は明後日からな」


この国で知らない人はいないであろう人気音楽番組スマミュに兄ちゃんが出る、考えたらすごいことだよなぁ。


「生放送で歌うとか考えただけで吐きそうになるんだけど」


間違えたらどうしようとか考え込んで、緊張もしてしまって、うん、僕には無理だと思う。


「いや、希実なら行けるやろ」

「絶対行けると思うぞ」


は? なんで?


星夜と大輝に呆れた顔で見つめられて、ちょっとイラッとくる。


俺をなんだと思ってるわけ?

そんな図太い神経してないし。


「いや、なんで怒ってんねん」


「怒ってないし」


「いや、怒ってるやん」


「だから、怒ってないって言ってるじゃん」


「あはははははは」


星夜と僕の言い合いに大輝がケラケラと笑う。


「星夜と希実はほんとに仲がいいな」


「うるさい」


なんて言ってはみたが、仲がいいことは否定しない。


星夜とは仲がいい。

もちろん兄弟みんな仲はいいけど、星夜とは一緒に出かけたり遊んだりすることも多い。


星夜は人に気を遣わないやつだが、逆に人にも気を遣わせない。だから一緒にいてすごく楽だ。


「暁を心配させるのもあれだから、マンゴージュース飲み終わったら家帰るか」


大輝が言うので、僕と星夜は頷く。


「あ、そうだ。ひとつ大輝に聞きたいことあったんだ」


そう、大輝に会えたら伝えようと思っていたこと。


「なに?」


「、、最近の敦見てどう思う?」


「え?どうって?」


そっか。大輝は何も感じてないのか。

大輝ならって思ったんだけどな。


「なんとなくなんだけど、やる気ない感じがするっていうか。人生つまらなそうに見えるっていうか。いや、わかんないけどね」


本当になんとなくだ。だから、わかるとしたら大輝だけだと思った。現に、星夜は思い当たるふしがないらしく首を傾げている。


大輝は顎に手をあてて何やら考え込んだのち、


「家帰ったら注意してみてみるよ。ありがとう」


力強く頷いてくれた。


※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。


お読みいただき、ありがとうございました。

小さな幸せを丁寧に描いていきたいと思います。


ブックマークと☆☆☆☆☆押していただけると励みになります。よろしくお願いします┏○


その他拙作として以下も連載中です。

興味があればぜひ目を通してみてください。


『白鷺のゆく道〜一味の冒険と穏やかな日常〜』

https://ncode.syosetu.com/n8094gb/


『瑠璃姫』

https://ncode.syosetu.com/n0695ii/


これからも唯畏(ゆい)をよろしくお願いします。

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