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第十三話 異世界で、いつか働かずに暮らしたい!~そのために敵は全員ワンパンしようと思います~

お久しぶりです。間隔が空いても更新ペースは変わりませんが、これからもよろしくお願いします。


29


 迷宮から帰ってきた後ラダリアは寝た。やはり疲れていたのだろうが、翌朝になるとすぐに真剣な顔で例の石を求めてきた。


 「ほら、これがあの路地で拾った石だ」


 「ん、ありがとう。やはり君を雇って正解だったな」


 「まあ、役に立ててるようで何よりだ」


 ラダリアは、俺が渡した小石を穴があくほど見つめている。


 「ヤバネ、私はこの石を調べなければならないから助手の仕事は休みだ。私は部屋にいるから、何かあったら遠慮なく呼んでくれ」


 「そうか……。無理はするなよ」


 「大丈夫だ。昨日はしっかり眠れたからな」


 実際にはラダリアはしっかりとは寝ていないが、そこは追及しないでおく。それに自由時間を貰えるのは都合がいい。

 宿を去ろうとする前に、俺はラダリアに聞きたいことがあったのを思い出した。


 「なあラダリア、ランクが高い探索者が、そこまで深くもない階層でモンスターを大量に殺すのにはどんな理由があるんだ?」


 「何だ突然。……そうだな、鍛錬にはならないだろうし、しかし他に理由は……。すまない、すぐには思いつかない」


 「……そうか。あともう一つ、俺一人で迷宮の十五層まで行けると思うか?」


 「無理に決まっているだろう。Bランクの探索者が五人から六人で行くべき階層だぞ」


 「まあ、そうだよな……」



30

  

 迷宮の四層。そこでリーンとルークは手当たりしだいにモンスターを殺していた。日によって階層は違うが、そこまで深くまで行くことはないようだ。ここまで詳細に知ることができたのは当然、『大地の瞳』のおかげである。

 それにしても、Sランクのリーンと彼女についていけるだけの実力があるルーク。その二人があまり強くないモンスターしか出ない浅い階層で何をしているのか、ラダリアにわからないとなれば俺が自分で調べなくてはならない。



 「はあ……」


 というわけでとりあえず迷宮の入口に来てみたはいいが困ってしまった。

 リーンとルークの奇行はリーンが十五層のとある部屋に行ってから始まったのだが、そこに実際に行ってみないと何があったのかはわからない。どこかに俺を十五層に連れて行ってくれる優しくて強い探索者はいないだろうか。


 「赤か青の石、赤か青の石……」


 ラダリアにランクの高い探索者の見分け方は教えてもらっている。ギルドで貰った首輪についている石、その色はランクによって変わるのだ。Dランクの俺の首輪にはただの石ころが付いているだけだが、Bランクには赤、Aランクには青の石が付いているらしい。ちなみにSランクは探すだけ無駄だとラダリアは言っていた。


 「嫌! 絶対に嫌よ! 何で私が戦わなくちゃいけないのよ! 迷宮なんて、イチロー一人で行けばいいでしょ!?」


 「うるせえ! お前ここ最近何もしてねーじゃねーか! 俺の守護妖精ならちょっとは働け!」


 「だって私よりイチローの方が強いじゃない! SSランクなんだから、私のことを養うくらいの甲斐性は見せなさいよ!」


 「何が甲斐性だ! そもそもお前が作った借金のせいで俺が働かないといけなくなったんだろうが!」


 ……いま、何と? あの女は今何と言っていたんだ? SSランク? あそこにいる男は探索者の中で一番ランクが高いのか?

 男の首輪に目をやるとそこには黄金に輝く石が付いていた。間違いない、SSランクの証だ。

 これは絶好のチャンスかもしれない。話を聞く限りではあの男は金に困っているようだ。俺のこのかなりの量の資金が力になれるかもしれない。

 言い争いを続ける二人のもとに、俺は声をかけるために駆け寄った。


 

31


 「嫌! 絶対に嫌よ! 何で私が戦わなくちゃいけないのよ! 迷宮なんて、イチロー一人で行けばいいでしょ!?」


 「うるせえ! お前ここ最近何もしてねーじゃねーか! 俺の守護妖精ならちょっとは働け!」


 「だって私よりイチローの方が強いじゃない! SSランクなんだから、私のことを養うくらいの甲斐性は見せなさいよ!」


 「何が甲斐性だ! そもそもお前が作った借金のせいで俺が働かないといけなくなったんだろうが!」

  

 SSランクになった時に倒したモンスターの素材を売った金は、この女、大酒飲みかつギャンブル狂であるシーナに全て使い切られてしまった。

 その上に借金まで抱えてきたのだから、俺が朝から怒鳴り散らすのも当然の権利だ。俺は今、本気でシーナを迷宮に置き去りにしようと思っている。


 「あの、すみません。何かお困りですか?」


 口論がヒートアップしていた俺達は、その男が近付いてきたことに気付かなかった。

 後ろから声をかけられて驚いた俺が振り返ると、そこには黒髪のイケメンが立っていた。

 顔を見る限りでは高校生くらいの年齢っぽい。身長は俺と同じくらいだ。俺より五、六歳も年下なはずなのに生意気だぞ!


 「確かに困ってはいるけど、いきなりなんだよお前」


 「借金があると言っていましたよね? 返済の手助けをしようと思って声をかけました」


 何だこいつ、怪しすぎるだろ。


 「何が目的なんだ?」


 「簡単なことですよ。どうしても迷宮の十五層に行かないといけないのですが、俺では力不足なんです。というわけで俺の護衛をしてくれませんか?」


 護衛って……。それは絶対に嫌だ。足手まといを抱えて迷宮になんて行きたくない。


 「断る」


 「そこを何とかお願いします。報酬もきちんと払いますから」


 男はそう言うと自信の掌の上に山盛りの宝石を出現させた。


 「この三倍くらいなら報酬を払えますよ」


 「よし引き受けた。今行こうすぐ行こう!」


 なあに、足手まとい一人くらいは問題ない。なにせ俺は探索者の中では最高のSSランク。きっちりこの男を守りきってやろうじゃないか。



32


 あらすじ


 同姓同名の別人と間違えられて、社畜の佐藤一郎(24)はロリ神様に人生を打ち切られてしまった。

 異世界に転生することになり、誤って死なせたお詫びとして様々なチートを与えられた一郎は、それらを組み合わせることでチート級の火力を手にする。

 人間性最悪の妖精と共に、一郎は異世界を満喫する。いつか働かずに生活することを夢見て……。




 

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