第三話 未知との遭遇再び
もう毎日更新はできないです。
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「貴様、一体なんということをしてくれたのだ!」
「仕方がないだろう! お前だってあの場にいたら俺と同じようなことをしたはずだ!」
「野蛮なオークと我々エルフを同列に語るな! 何故その場にいたゴブリンの言うことを最後まで聞かなかったのだ!」
「いや、例の男は黒髪だと聞いたからてっきり……」
「憶測で判断するなど、さすがオークは低能だな! 少しは頭を使ったらどうだ?」
「疑いもせずに魔法を撃っていた分際で偉そうな口を聞くな! 大体、どうしてあのゴブリンを保護しなかった!」
「……いつまでも不毛な言い争いを続けるのは止めろ」
「も、申し訳ありません。しかし王よ、このままでは我々も同盟を破ったことになってしまいます」
「エルフの長よ、何を言っている。お前たちの魔法は何のためにあるのだ?」
「ま、魔法……?」
「あの人間が眠っているうちに『忘却』の魔法を使え。目が覚めたら適当に話を合わせておけばいい。たとえ思い出したとしても、女でも抱かせれば文句は言わないだろう。人間の男とはそういう生き物だからな」
6
目が覚めた。俺は起き上がって周りを見るが、そこはまったく見覚えのない場所だった。壁や柱は木でできていて、俺の体には縫った跡がたくさんついている、小さな布がかけられている。どうやらここは誰かの家の部屋のようだが、どうして俺はここにいるのだろうか。
……まったく思い出せない。森の入口に来たところまでは覚えているんだけどなあ。
「……目が覚めたのか」
かなり小さいドアが開けられて、部屋に緑色で背の低い二足歩行の生き物が入ってきた。
……何だこいつ。明らかに人間じゃないのに、どうして日本語を話しているんだ?
「どこか痛むか? お前は森の近くで傷だらけになって倒れていたんだ。魔法で治療したとはいえ、何かあったらすぐに言ってくれ」
その緑色の生き物が言うには、倒れていた俺をこいつが見つけ、森まで運んでくれたらしい。お礼を伝えるとなんだか苦しそうな顔になったので、俺は少し違和感を抱いた。
「とにかく、腹は減ってないか? 簡単なものしかないが、よかったら食べてくれ」
と、いきなりありがたいことを言ってくれたので、俺はお言葉に甘えてご飯をごちそうになることにした。
ご飯をごちそうになった後、お互いに自己紹介をした。
「俺はガブリ。こっちは妻のベリーだ。今は家にいないが、子供が三人いる。見ればわかると思うが、俺達家族は全員ゴブリンだ」
「はあ。あ、俺の名前は矢羽だ。改めて、助けてくれてありがとう」
「いや、気にしないでくれ。ヤバネ」
「そうよ、同盟相手の人間を助けるのは普通のことだわ。これからよろしく、ヤバネ君」
正直に言って男女の見分けはまったく付かなかったが、ベリーさんの方は頭に飾りをつけているのでそれで見分けることにする。
助けてもらっておいて偉そうにため口をきいているが、ゴブリンは非常に小さく、とても敬語を使う気にはなれない。幸いにも気にしていないようなので、このままため口を続けることにした。
それにしても、俺はどうして倒れていたのだろうか。理由にまったく心当たりはないので、俺は少し確認することにした。
7
自己紹介の後、俺は部屋に戻った。しばらくここに住んでいいそうなので、太っ腹な夫妻に感謝しつつ俺は床に座る。
俺が貰った神器、『大地の瞳』の能力は「未来以外の全てを視認することができる」というものだ。俺はこの目を使って今まで散々「現在」のことを見ていたが、この目で見ることができるのはそれだけではない。
そう、この目の能力を使えば、俺は過去の全ての光景を見ることができるのだ。
目を瞑った俺は自分の目に、『大地の瞳』に心の中で命令する。
(俺が倒れた経緯を見せてくれ)
すると即座に俺の視界は過去の映像でいっぱいになった。目を閉じているのに目が見えるというのはとても不思議な感覚だが、不快ではない。
現在を見るのと同じように、俺はただ見るだけである。音や感触はまったく感じないのだ。
そして、俺は全てを見た。
ガブリを助けたら大きい生き物に襲われ、俺は森の中を逃げる羽目になった。ようやく森を抜けたと思ったら、今度は美形集団に魔法の雨を浴びせられた。そして最後は高い所から落とされ、なんとか盾の上に着地できたがそのまま気絶、その後すぐに森に運ばれ、俺は魔法をかけられた後ここに連れてこられたようだ。
……唖然とするほかない。ガブリの言っていたことはほとんど嘘だったのだから。俺の全身に鳥肌が立った。恐らく俺は魔法で記憶を消されていたのだ。そしてそれはこの森に住む種族によって行われた。
気付かれてはいけない。何を? 俺が気付いたということを、だ。俺はこいつらに助けられた、いや見逃されたのだ。もし真実を俺が知っているとなれば、今度こそ殺されるに違いない。
俺がそう決意していると部屋のドアが叩かれた。ゴブリンの大きさに合わせているため、ドアは俺の腰くらいの高さしかない。
「どうぞ」
俺がそう言うとドアは開かれ、くぐるように一人の少女が部屋に入ってきた。
その少女を見た瞬間、俺は部屋から逃げ出したい気分になった。
長い髪は金色で、背はあまり高くない。顔や体つきからは幼い印象を受けるが、かなりの美形であることは疑いようもない。将来はとんでもない美人になるのではないだろうか。
そして何より目を奪われるのは耳だ。人間のそれとは違い、鋭く尖っていて長い。
そんな美少女を前にして、どうして俺は逃げたいと思ったのか? 決まっている。
この少女こそが、盾に乗って逃げていた俺を蹴落とした張本人だからだ。




