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故郷の土へ…

~第十九章~故郷の土へ…


「え!?おじいちゃんの言葉!?」


エリナさんは驚きを取り戻すと、ひとまず中へと家の中へどうぞ、と招き入れてくれた。


「えっと、オオトリ ユウシさんのお口にあえば嬉しいんですけど…。」


そう言ってエリナさんはお茶を出してくれた。


「ユウシで良いですよ。」


「では、ユウシさんと呼ばせて貰いますね。」


一口飲んでみると、口の中に花の香りが広がる。


「おいしいですね。花の香りが口に広がります。」


「この村で取れる、ヘニムの花から作ったお茶なんですよ。」


自分の分のお茶を入れるとエリナさんは席に着いた。


「それで、おじいちゃんの事なんですが…。生きているんですか!?」


俺は静かに首を横に振る。


「亡くなったんですね…。五年も音沙汰が無いから…。そうじゃないかとは薄々思っていました…。」


エリナさんは何処か寂しそうに俯いている。

俺はエリナさんに師匠との出会いから別れまで包み隠さず話した。


「そうですか…。おじいちゃん迷宮に行っていたんですね…。」


俺はサイドバッグから師匠に託された短剣を取り出してテーブルの上に置き、ソッとエリナさんに差し出す。


「これは…?おじいちゃんの短剣!?」


「はい。ゴータスさんからエリナさんへ託すように預かりました。」


エリナさんがテーブルに置かれた短剣を持ち上げる。と、涙を流しながら呟く。


「こ、この短剣は…。昔、小さい頃におじいちゃんに見せて貰った事が有って、綺麗な模様の入った鞘をみて、私、一目で気に入って、おじいちゃんにおねだりした事が有るんです。でも子供に刃物を持たせる訳にはいかないじゃないですか。それで、おじいちゃんが言ったんです。私が15歳になったらあげるよって…、おじいちゃん忘れていなかったんですね…。」


「ゴータスさん、エリナさんを一人にしてしまった事、謝っていました。すまないと。そして愛している、とも言っていました。」


エリナさんは短剣をギュと抱きしめると泣き崩れてしまった。

五年間も帰りを待っていた祖父がもう帰らぬ人となったのだ、無理もない。


「エリナさん…。」


今は少しこのまま泣かせてあげよう…。

少しの間席を離れる、程なくしてエリナさんは落ち着き話が出来る様になった。


「エリナさん。ゴータスさんの遺骨を持って帰りました。此方です。」


そう言って非常持出し袋に詰めた遺骨をエリナさんに差し出す。


「ありがとうございます。おじいちゃんを連れて帰ってきてくれて。故郷の土に還してあげられます。」


その後、村の集合墓地に赴き、穴を掘ってゴータスさんを土へと埋めてあげる。

シスターであるエリナさんはゴータスさんへ祈りの聖句を述べている。

聖句を述べ終えたエリナさんはまた泣きそうになっていた。

我慢をしているのか軽く震えている。


「泣きたい時には、泣いても良いんですよ。」


そう言って俺はエリナさんの頭を抱き寄せる。

多少驚いた様だったが、俺が何かする訳では無いと悟ると、俺の胸の中で泣き崩れた。


「あ、あの…。す、すいませんでした。」


泣き止んだエリナさんは恥かしそうに俯き加減で謝ってくる。

照れて赤くなっているエリナさんは可愛らしい。


「いえ、女の子が泣いてる時に胸を貸すぐらい何でも無いですよ。」


「あ、あの!ユウシさん!今日は村へお泊りですか?お礼替わりと言っては何ですが、よ、よかったら晩御飯を召し上がって行って下さい。」


「えっと、いいんですか?」


「は、はい。是非!」


ディアスの待つ宿には、夜には戻れば良いか…。


「では、お言葉に甘えて、頂いて行きます。」


料理は、村の郷土料理の様な物で、素朴ながらも、とても美味しかった。

その日はエリナさんの手料理を食べてから宿に戻る事にした。

ちなみに、ディアスから宿の場所を聞いていなかったが村の広場でディアスと合流できたので問題は無かった。


「ユウシ殿!?遅かったのですね?お探しの人は見つかりましたか?」


「すいません。ちょっと話し込んでしまいました。ご飯も外で済ませて来ましたから。」


「そうですか、私も晩御飯はもう済ませましたから、部屋でゆっくりと休みましょうか。」


そう言うとディアスは宿の部屋へと戻って行った。

俺も部屋に戻ってもう休もう…。



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