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 せっぱ、勇者であるっ!?

 「4元素の考え方は、真魔両大陸の基本概念や。他の属性を模索するっちゅうんは、完全に盲点やったな!

 そこでウチは、図書館にあった本にのっとった別の元素解釈、陰陽・五行説に注目したんよ! 陰陽は光と闇、五行も火、水、土は被っとったけど、『金』と『木』の新たな属性の可能性が見えた。

 残念ながら『木』属性の魔法にはまだ、これっぽっちのとっかかりもあれへんけど、この通り、『金』属性の魔法の発現に成功したんよ! 金属性は電雷を生み出す、雷の魔法やね!

 その名も―――金気術!! 四属性魔法と区別するための名称なんやけど、魔法の形式もかなり違うんよ。それは魔法陣見れば一目瞭然なんやけどな―――おっと、ほんならこっちの新しい魔法も紹介しとかな。

 その名も―――魔法じ―――」


 「―――いいからその雷を何とかしろ!!」


 愛らしい顔で、ペラペラと捲し立てながらこちらに駆けてくるサージュさん。言わずと知れた風の勇者だが、その光景を今回ばかりは『可愛い』と表現する事は出来なかった。

 バヂヂヂッ!! と異音を放ち、電雷を迸らせて駆けてくる様は、どこの雷神かと問い質したい………。

 「おっとっと。せやな。ほな、適当にそこの偽勇者君達にでもぶつけとこか」


 サージュさんの初撃をかわした3人の偽勇者と、2体の悪魔。しかしそいつ等に向けて、サージュさんの周囲を漂っていた閃光が雷のような轟音をあげて殺到する。


 「速いッ!!」


 「ぐぁぁぁあああ!!」


 結界で防いだドゥーと違い、盾で防ごうとしたトロワが絶叫する。金髪はどうやら2人を盾にして下がったらしい。ついでに―――


 『グッ―――む、無念………―――』


 『ぐぎゃぁぁぁあ!? 痛えぇ! テメェこら! 後でぜってぇ殺す! ぶっ殺す!!』


 ついでに―――僕の悪魔まで送り返してしまいよった………。いや、たぶん偽勇者との戦闘で消耗してたんだよな。うん! いくらなんでも、あの2体を一撃は無いよね! ねっ!?


 「この金気術の特性は、金属での防御がほとんど不可能なんと、速さや。簡単に説明すんと、雷を受け止めるようなもんやから、って事でわかってもらえる?

 ほんでなほんでな! こっちも見て欲しいんよ!


 『マギア・キクロス・ディアグラマ』


 どや! 名付けて『魔法陣魔法』!!」


 サージュさんが詠唱を終えると、その目の前には複雑怪奇な光る魔法陣が出現した。

 スゴい! まるで、変態じゃなく魔法使いのような、威風堂々とした姿だ。


 「魔法陣を魔法で作るっちゅー、もう本末転倒みたいな魔法なんやけどな。コストやて、魔法陣の分と魔法の分余計にかかるし、詠唱も長い。

 けど! この魔法を使えば、理論上どんな魔法でも使えるんよ! 例え適正が無かろうと、属性魔法や時空間魔法やて使える!!

 精霊魔法みたいなもんやけど、この魔法の長所はもう1つ! マジックアイテムに技術転用が可能な事や! 巨大な魔法陣使わんでも、この魔法陣魔法のマジックアイテムさえあれば、マジックアイテムの小型化が―――」


 「―――ストーップ!!

 サージュさん、新しい魔法の詳細については興味がありますし、後日絶対に聞きますが、今はちょっと待ってください」


 僕は、さらにのべつまくなしに話し続けようとするサージュさんを両手で制止すると、なんとかそのマシンガントークを遮る事に成功した。


 「なんや、今日はえらく連れないやないの、キアス君?」


 「状況を見てくださいよ………。緊張感が台無しです………」


 普段であれば、確かに面白おかしく理論や効率化について話すのだが、いかんせん、今は戦闘中である。それも、命を懸けた。


 「えー………。せっかく飛んできたっちゅうに、そらないわ………。

 他にもキアス君に頼まれとった『歌唱』の詠唱も完成したんよ? 声で魔力に干渉できるゆーて、音の高低、大小で詠唱の意味合いを強め、音程、テンポ、コーラスと、全詠唱より遥かに短く、バリエーション豊かな『歌唱魔法』を―――」


 「―――後で是非聞かせてください!」


 「後とか言わず、今聞いてーなー?」


 「だから今は―――って、サージュさんどうやってここへ?」


 サージュさんはソドムにいたはずだ。そして、あそこは今、出入り不可能なはず。転移で出てきたとも考えられるが、わざわざこんな、何もない場所をマーキングしていたとは考えづらい。そうなると………。




 「ん? 普通に門から出てきたけど?」




 振り向けば、門からドヤドヤと冒険者達が雪崩をうって飛び出してきている!

 ってぇ!? 何で外に出てくるんだよ、アイツ等!? 危ないだろうが!!


 「なんや知らんけど、勝手に開いたで?」


 「いや、あれは僕じゃないと開けら―――」


 ―――いや、違う。


 「ハァァァアッハッハッハッハッハァ!! 戦だ戦だ!! 大治郎! 付いて来てるかッ!?」


 「ハァッ! 御身のお側に!!」


 「付いて来られねば置いて行く!! 征こうぞ! 往こうぞ! 逝こうぞ!」


 「応ゥ!!」


 先頭を切っているのは、いつになくテンションアゲアゲなフミさん。その後ろには、大柄な槍使いのような男もいる。どっちも怖いくらいにテンションが高い。

 後続を完全に置き去りにして、フミさんと男は駆け抜ける。僕とサージュさんも追い越して、戦場のど真ん中へと突入していく。


 待ち受けるは、さっきサージュさんに雷を浴びて満身創痍なトロワ。


 「手負いかッ!? 尋常な勝負は戦場に置いての、淡き泡沫の夢! 無情こそが戦なればッ、いざお相手仕らん!!」


 「ッ!! ………来いッ!!」


 吠えるフミさんと、どっしりと待ち受けるトロワ。

 「チィィェェエエストオォォオ!!」


 「………グ………ッ!………『ギ・アスピ―――」


 駆け抜けた勢いのまま、フミさんがヒヒイロカネの大太刀を抜き、絶叫と交錯。

 ズサァァァア………、と雪を舞い上げて、トロワの背後でようやくフミさんが止まる。槍を持った大男の方は、トロワの正面で槍を構えている。

 一瞬の静寂と制止。そして―――


 「うむ! 天晴れなり!!」


 残心の姿勢のままフミさんが言うと、同時に時間が再び動き出す。

 ガィン! と鈍い音を立てて、真っ二つになった盾の半分が雪の奥の地面に突き刺さり、切り裂かれた胸甲から鮮血が吹き出す。


 「………ゴ、ゴブッ………」


 口からも血の固まりを吐き出したトロワの元に、大男の方がゆっくりと近付く。


 「御首級頂戴」


 短剣を抜き、とどめとばかりに首を一閃。ゴロリと落ちた首を腰に括りつける大男。


 「さぁさ、次だぞ大治郎!! 楽しき戦はまだ終わらん!」


 「ハッ、どこまでも付いて往きます!」


 フミさん………。この人、ウォーモンガーだったのか………。いや、この場合は戦人とでも言うべきか………。魔王連中と気が合いそうだ………。

 つか、一緒にいるのはフミさんの仲間なのかな? 仲間ってより、主従って感じだけど………。


 と、そこでキョロキョロと周囲を見回すフミさんに気付き、僕も周囲を観察する。

 あれ? 偽勇者は?


 「隙ありだぜッ!!」


 突如、近くの雪が燃え上がり、中から金髪が飛び出してくる。そういえばこいつは、パイモンに雪の中に突っ込まれた。その時に、積み上げられた雪の中を移動する事でも思い付いたのか?


 ―――僕は完全に隙を突かれた!

 ―――フルフルもまた、金髪の登場に驚いて、対処は間に合いそうにない!

 ―――サージュさんは魔法陣魔法を消さないと、反撃できない!


 ―――炎を纏った、ボロボロの剣が僕へと迫る。




 「そういうのは、最後まで声を出さないでやるもんだ」




 煌めくヒヒイロカネの赤金色。その軌跡を描くは、一対の曲刀。


 コピシュとコピス。


 炎の剣は折れ―――いや、斬られ、そして金髪の腕と一緒に宙を舞う。




 「よォ! これでとりあえず、借り1個返したからな!」




 真大陸の勇者、全員集合だった………。





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