真面目な話っ!?
いや、エッチな意味じゃなく、下着は重要なんだよ?
下着をつけるだけで平均寿命が上がった、なんて話があるくらい、重要な衣服なのだ。
古代の地球の各文化において、下着は二種類に分別される。
紐で固定して前と後ろをカバーする、フンドシタイプ。腰回りにグルグルと巻き付ける、腰巻きタイプだ。
こっちの世界では、真大陸はフンドシタイプであり、魔大陸は腰巻き………、と言うよりほとんど包帯のようなものが主流を占める。無論、双方地域ごとに差異はあり、場所によっては着けない派が大多数を占める地域もある。要は、結局千差万別だ。
僕?トランクス派。
これでは機能的に、あまりよろしくない。機能性がよろしくないから利便性に乏しく、利便性に乏しいからこそ、不衛生になりがちだ。
下着の不衛生は、ダイレクトに健康被害を招く。
だからこそ、下着革命を起こすのだ。
さて、ではどんな下着が良いだろうか?
現代風のショーツは、実のところこの世界でも再現は可能だ。というか、良く似たものは既に古代ローマ時代からあったという。ゴムがなければ紐パンにすればいいし、ゴムの代替品は魔物の素材に似たようなものがある。
逆に、古い下着というイメージのあるコルセットの歴史は意外と浅い。18世紀に、その姿はようやく現れる。とはいえ、これは胸をカバーするための下着ではなく、腰を細く見せるための下着であり、胸はその上に乗せられていて丸出しだったようだ。あ、勿論服は着ていたよ?
もう1つ、新しくてちょっと残念な下着の1つとして、ガーターベルトがある。なんとあれ、1920年代に登場した代物なのだ。因みに、下着に『女性の魅力を引き立たさせる』という概念が生まれたのもこの頃らしい。僕は、これを最初に思い付いた奴は、ガーターベルトフェチだったと見る。間違いない!
………え?なんで残念かって?
いやだって、ちょっとショックじゃないか?
中世の貴婦人とか、ガーターベルト着けてないんだぜ?コルセットも巻いてないんだぜ?
閑話休題。
というわけで、ショーツは現代風でオーケー。
となるとやはり必要なのは、ブラジャーである。ネグリジェや、ベビードールでも構わないが、やはりブラジャーを僕は推したい。
正直、この世界の下着は女性用であっても色気が無さすぎだ。真大陸でもそうなのだから、魔大陸など言わずもがな。
ならば!僕はこの世界のガーターベルトフェチとなろう!!世界初の『魅力的な女性用下着』を作ろうではないか!!
見てるか、先人よ。君の下着を愛する感性は、脈々と異世界にまで伝わっているぞ。
「ああっ………、ご無体な………っ」
ブラとショーツ姿のレライエ。
僕の命令なので、腰に手を当てたモデル立ちだが、顔は伏せられ耳は真っ赤である。
このブラジャーは、どちらかと言えば水着に近い。出来るだけワイヤー等を使わずに、人間の技術力でも再現可能なものを目指した。カップを形作るのは、柔らかいパットのみ。
「ふむ………」
オールが興味深そうに頷き、
「成る程………」
タイルも興味深そうに頷いている。
パイモンは、実はそういう羞恥心には疎く、下着だろうが全裸だろうがあまり物怖じはしないので、こういう『下着』ではなく『ランジェリー』には興味なさげな感がある。
あ、お子さまは下がらせたよ。流石にね。
黒のレース。
この最強の装飾が施された上下は、女性の魅力を何倍にも引き立てる。
ごめん、さっき言ったの嘘。
最高のエロティシズムだ。まさに芸術とエロは切っても切れない関係だと、証明する姿だろう。
「キ、キアス様………、お許しください………」
「ブラの試作は、とりあえずはこんなもんだな。後は人間の職人が、いかに創意工夫を凝らすかだ」
「素晴らしい………。
閨にあらば、我の子は後100人は増えるであろう………」
「………なんていうか、こう………、良くわからない感動を覚えるよね。
意表をつかれたというか、その手があったか!みたいな?
こんな方向性の美を追求するのは、流石に予想外だったよ」
「レライエ、機能性はどうですか?動くのに邪魔にはなりませんか?
見た限り、普段我々が使うものより、遥かに動きやすそうですが?」
「アタシ、もう勝手に動くのやめる………」
「我々は、普通の服で助かったな………。いや、あれが普通の服かどうかは別にして………」
オール、タイル、パイモンの後ろで、コーロンさんとトリシャがヒソヒソと話していた。
「あぁ………っ!
キアス様、何卒、何卒お許しをっ!レライエは、これより独断専行などいたしませぬ。二度と、勝手な真似はいたしませぬゆえ、どうぞ、お慈悲を!」
下着姿のレライエが、真っ赤な顔のままで懇願してきた。
まぁ、そろそろ許してやるか。
「もう悪いことしない?」
「いたしませぬ!」
「いい子になる?」
「いい子になりまする!」
「次は、レースのスケスケだよ?」
「レライエは、いい子になりまする!!」
よし。
「じゃあ、あとはネグリジェとベビードールを着たら、許してあげる」
「キアス様ぁぁぁーーー」
悲痛な叫びが、夜の『魔王の血涙』に響いたのだった。




