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 ソドムの街の陰と陽っ!?

 自警団は概ね好評だ。何より、食い詰めている初心者は少なくないのですぐに始められた。ここは、輸送費の分ちょっと物価が高いからな、色々とやりくりは大変だろう。職を探している冒険者は、やはり多かったようだ。

 アルバイトをしなくても生計を立てれるのなんて極一握り、というのは言い過ぎだが、長い時間ダンジョンに籠って攻略を進めてきた一部のみだ。そのほとんども、今は困惑の迷宮を右往左往してる。


 今回、自警団結成に伴って、街の有力商人達の集まりができ、曲がりなりにも法を司る機関ができた。だが、商人だけが立法を司るのではよろしくない。いずれ、住民や冒険者も組織に組み込み、多角的な視点でこの組織を運営していこうと思う。







 「さて、じゃあボチボチやる事やらなきゃな」


 僕はため息と共にそう呟いて、そこへと向かう。


 この街の簡単な区分けは、一階層が商業区、二階層が居住区、三階層が学校になっている。まぁ、二階層にはダンジョンの入り口もあり、飲食用の店舗や、食料品を売る店舗、宿泊施設などもあるし、三階層の学校は貯水スペースにかなり圧迫されてるけど。

 その一階層商業区、最北端。未だ商人の充実していないこの街では、当然空き店舗も溢れている。そして一階層の北端と南端の辺りには商業的な人気がなく、そんな空き店舗ばかりがある。入り口は当然閉鎖されているので中には入れないが、この街では外で寝たところで体調を崩すような気候変動がない。人通りも少なく、あまり人目につかない場所。そんな場所には、当然集まるべくして集まる連中がたむろしているのだ。


 「ヒュー。えらい別嬪が勢揃いでお出ましだな」


 「馬鹿、ありゃ男だろうが。他は確かに美人だがな………」


 「ねーちゃん、ガキのお守りなんかより俺の世話焼いてくれよ。礼はするぜ、体でな」


 あー、やだやだ。下卑た視線で僕のパイモンやフルフルを見るなよ、ゴロツキが。

 不愉快な視線の中を闊歩し、僕はその薄汚れた通りを見渡す。

 どこから持ってきたのか、薄汚れた板と布でできたテントのような物が散見し、臭い等はないものの、どこか諦めにも似た退廃的な空気が漂っている。


 商区77。


 連絡会でも話題になった、ならず者の溜まり場に僕たちはいた。

 街を作れば、いずれこういった者らが蔓延ることはわかってはいたが、やはり不快なものは不快だ。ここは言わば、ソドムのスラムになりつつある場所だ。だからこそ、今手を打たなければ手遅れになる。


 僕らは注目を浴びつつ、奥へ奥へと進んでいく。一歩進むごとに集まる視線は増え、嫌な雰囲気も増していく。


 「うー、キアス、フルフル、ここ好きくないの」


 「もう少し我慢してくれ」


 「前にキアス様に連れていってもらった人間の街の『スラム』に良く似てますね。特に雰囲気が」


 「まぁね。っていうか魔大陸にはスラムはないの?」


 「寂れた村や町はありましたが、このような雰囲気では………。強いてあげるならば、コション様の統治していた領地は、ここの雰囲気に少し似ていました」


 成る程。もともと厳格なる法秩序の無い魔大陸、弱肉強食のみを掟とする魔族では、スラムの出来ようもないわけか。一見、全てがスラムに見えなくもないが、魔族は基本的に身体能力や魔法に長けているからな。狩りをしたり、畑を耕したりで、割と1人でも生きていける。


 「ここもスラムになりかけている」


 「キアス様の街には似つかわしくないです」


 「フルフルは、全員お風呂に入れちゃえばいいと思うの。頭から突っ込んで、床にめり込ませちゃえばいいの」


 「床壊れないから無理だけど、そんな犬○家は嫌だな………」


 ただの風呂ってのもね………。


 「あ、フルフルもお湯を汚すのは嫌いなの」


 それもまた酷い言い種だな。


 「キアス様のご命令さえあれば、全員片付けますが?」


 「何するつもりだよ?」


 「大丈夫です、証拠どころか遺体も消えます」


 「おいっ!」


 『目撃者も消しなさい。犯罪というのは、目撃されないことに細心の注意が必要です。次に証拠を残さないこと、短時間で終えること、逃走経路を確認しなさい。足跡は最初から残る事を想定して、犯行後違う靴を履いて、その後速やかに処理しなさい』


 「はい、アンドレ。ありがとうございます」


 「怖い怖い怖い」


 何で完全犯罪起こそうとしてんの、こいつら?いや、非殺傷結界あるから無理なんだけど、アンドレとパイモンだからなぁ………。


 『私の関わった街にこんな連中、必要ありませんから。アルルを連れてきてください』


 「毒かっ!?毒を盛るつもりかっ!?」


 それは盲点だった!!僕には効かないけど、他の仲間や住人は厳しい。


 「気付いていたなら言ってくれよ………」


 『対抗処置があまりありませんから』


 「なんだぁ、てめぇら」


 確かにな………。空気清浄機能ならなんとかならないでもないけど、毒ガス以外はどうにもならない。液体や粉末はなぁ………。


 「注意喚起は必要かもな」


 『でしょうね。それに、毒はどうにもならなくても、一度体に取り込んだ後なら解毒は可能です』


 「あ、確かに。ただ解毒の魔法を常にかけ続けるわけにも………」


 『私がステータス異常を確認したら、すぐに発動できるようにすればいいでしょう?』


 「え?できんの?」


 『勿論』


 「スペックたっけー」




 「なんだてめぇらはっ!!!?」





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