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 ちょっとやり過ぎっ!?

 「キアス、今日は何すんだよ?」


 「あ?何だ藪から棒に?」


 シュタールの問いかけは、朝食も終えた少しのんびりとだらけた雰囲気の中投げ掛けられた。


 「まぁ、なんとなくな。今日はダンジョンに潜るのヤメにしようかと思っててよ」


 「へぇ、何でまた?」


 ここんところ、毎日潜っては毎日帰ってきてたってのに。つーか、完全にダンジョン探索舐めてるよな。


 「んー、あの部屋で寝ると、一晩で疲れもとれてスッキリすんだけどさ、肉体的により精神的にそろそろ休養がほしいかと思ってな」


 「ふーん。まぁ、探索の成果とか何もないもんな。そりゃ、精神疲労もたまるわ」


 「は?おいおい、成果がないって何だよ?俺たちはちゃんと日々前進してんだぜ?」


 あれ?もしかして気付いてなかったの?


 シュタールのキョトンとしたアホ面を見る限り、どうやら本当に気付いていないみたいだ。


 「お前ら、もうずっと同じ道をグルグル回ってるだけだぞ?」


 僕の言葉はシュタールだけでなく、同じテーブルについていた他の面々の動きも凍りつかせてしまった。


 「は?え?な、何が?」


 混乱してしどろもどろになっているシュタールを脇にどけて、アニーさんが前に出た。やっぱりこのパーティーの取りまとめ役はアニーさんだよね。


 「キアス殿、今の言葉は本当か?」


 「ええ。だって魔物がずっと同じじゃないですか。あそこら辺一帯はクァールとかヒュドラが多く湧く場所ですから。地下迷宮はポップスポットによって湧きやすい魔物が違うので、分布する魔物でエリアを特定する事ができますよ」


 中にはレベル60以上のスライムしかいない縄張りや、同じようにレッドキャップが縄張りにしているエリアもある。とりあえず僕は、レッドキャップのエリアは行きたくないな。あいつらは基本的に集団で動くからね。

 まぁ、入り口エリアはだいたいクァールとヒュドラの縄張りで、その意味でこの人達は数ヵ月も入り口エリアをさ迷っていたことになる。


 「そんな………」


 あ、アニーさんが肩を落としちゃった。まぁ、進んでるつもりが戻ってた、なんてのはよくある話だけど、本当に体験するとたまったもんじゃないだろうからね。


 「………でも………」


 ミレの半目も、今回はやや疲労の色が見える。


 「………僕たちは途中から………、片側の壁に沿って動いてた………」


 「あ、その攻略法、僕のダンジョンだと信頼の迷宮までしか使えないから」


 「………………」


 こっちも深く肩を落とす。確かに精神的に疲れているようだね。


 「一方の壁に沿って動くと、同じ場所をグルグル回っちゃうように出来てるんだ。まぁ、あれだけ広大なダンジョンだから気付かなかったのも無理はないけど」


 だから同じ所を回ってたわけか。うん、ようやく得心がいった。もう3周目だからね。ちょっと不思議だったんだよ。

 この人たちの不運は、入り口の近くの壁を使わなかった事だ。それなら一周すれば入り口に戻ってきて、迷路の構造にも気付いただろうに。まぁ、間違った方の壁を頼りにすると、広大な地下迷宮の外周を一周しないといけなかったから、運が良かったとも言えるけど。


 「………トラップにパターンがあったのも………?」


 「パターンじゃなく、同じものだったんだね」


 ダンジョンは壊れないから傷もつかない。だから見分けるのも難しいって事だ。


 あ、さらに落ち込んじゃった。


 「………今日は、本当に休養にあてた方が良さそうだな………」


 纏めるようにアニーさんが言う。まぁ、君たちの落ち込みっぷりを見ればね。


 「あ゛ーーー、クソッ!!

 もう今日はぜってーキアスについてってやる!!」


 「遊びじゃないんだぞ、ったく」


 まぁ、今日の予定に関してはこいつらもあながち関係ないわけじゃないし、別に良いんだけどさ。


 「今日は都市『ベヒモス』の視察だよ」







 ベヒモスとは、バハムートの地球での別名である。こっちではそんな呼び方はしないようなので、僕はある国の一地方にその名を冠した都市を作ったのだった。

 なぜって?それはこの都市を造るために使ったのが、あのバハムートの死体だったからだ。


 あのバハムートに襲われていた町は、パロビリム大帝国という国の、ロンダナスという名だったらしい。あぁ、憶えなくていいよ。テストに出ないから。大帝国とは言っても、そんなに大きな国じゃないし、目立った産業もないしね。


 で、そのロンダナスの町は運の悪いことにバハムートに襲われたわけだが、さらに運の悪い事に、農繁期の農地を丸ごと呑み込まれてしまったらしい。流石の僕でも畑を復活させる事なんてできないし、城壁都市の分を考えれば、ロンダナスが1年過ごせるような食料を提供するなんてとても無理だ。バハムートに呑み込まれたあの大地が、1年やそこらで回復するとは、とても思えないしね。


 と、いうわけで町長に尋ねたのである。


 『この土地を捨てる覚悟があるならば、僕が君達に安住の地を提供しよう』


 町長はそれに頷き、住民もほぼ全てが同意した。そして生まれたのがアムハムラ王国トリシャ・リリ・アムハムラ公爵領首都『ベヒモス』である。





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