回想編 そのよん!
俺が普通科に来て早1週間。展開早いとか言わないで。だってここんとこ何も変化がないんだもん。
書類を見てばっかで会長は俺の方を一切見てくれず(存在忘れられてる気がしないでもない)、まぁ一応俺も特別科委員長なんてしてるわけで?役持ちなんだし手伝っても良くね?みたいな?そしたら文化祭の話にもはいれるだろうし。
顔合わせから1週間。ずっと生徒会室に3人で引きこもって書類仕事をしてました。ちなみに全員生徒会室内にある仮眠室かそこらへんのソファで寝泊まりです。シャワーとかはあるし、食事はデリバリー可みたいで不便は全くなかった。
いやぁ、まさかこっちでもこんな状態になるなんて思わなかったわー。城にいた時はよく仕事ためてたから如何に効率よく書類を捌くかに慣れてたからよかったけど。それでも中々大変だったよぉ。
「ふぇー、やっときりいいとこまでいったねぇー。」
会計の三森が伸びをする。ずっと机に向かってたからきっと身体はバキバキだろう。
会長の方ももう少しで終わりそう。てことはこれはアレしかないのではないですか!?
「会計君会計君!」
「なぁにー?てか会計君て言い方やめてよぉ姫ちゃん。」
「そっちも姫ちゃん呼びをやめろ。そうじゃなくて俺行きたいところがあるんですが!」
「てかここ(生徒会室)以外行ったことあるの?」
「食堂!食堂に行こう。勿論あるんでしょ、無駄にごーかなのが。」
「あれ、無視ですか。」
王道学園(仮)といえばやっぱ食堂でしょ!
というかなんか違うものが食べたい。デリバリーだと種類限られちゃって3日目で全メニュー制覇しちゃったんだよね。
「まぁそうだな。いい加減食堂くらい行っておいた方がいいか。」
一段落ついた会長がペンを置いて言う。意外だ。移動時間が無駄だ、とか言いそうなのに。
「そーだねー。そろそろ顔見せとかないと生徒会室に人が殺到するもんねぇ。」
「……。」
殺到?何故?
俺が首を傾げると会長は無言のまま立ち上がった。食堂に向かうようだ。
「どゆこと?」
「あはっ。会長1年の頃体育祭の準備で大変でさー。暫く生徒会室に籠ってたんだけど、体育祭当日に過労で倒れちゃったんだよねー。炎天下で体力削られたとかもあるんだろうけどいくらなんでもおかしい、てことで調べたらあの人食事忘れてたみたいなんだよねー。それで親衛隊とか一般ファンとかが会長が暫く顔見せないと異様に心配するようになっちゃったんだよぉ。」
会長実はあほの子か。みんなに愛でられてるとか、貞操は大丈夫だろうか。そしてここ一応親衛隊あるんですね。
振り向いたりとかしてないけど絶対本人に聞こえてるよね。三森はニヤニヤしてるし会長耳ちょっと赤いし。なんなの、可愛すぎるわ。襲うぞ。
「あー、襲いたい。」
「……姫ちゃん、本音がまた漏れてるよ。」
「おっと失礼。」
この本音が出る癖直さないとなぁ。仕事の時に出たら困る。
「姫ちゃんてホントに男イケるの?」
「イケるイケる。まぁ男相手の経験は女より少ないけど、普通の人と比べたら多いほうだろうし。会長なら大歓迎だよー!」
今思えば男はみんなそれなりの相手だったなぁ。女はねぇ、ちょっとアレなのとかいたし。仕事だからしょうがないけどさ。
「……なに会計君興味あるの?試してみる?」
「た、確かに興味はあるけども!自分で体験は嫌だよ!」
にやにやしながら尋ねると三森が必死に首を横に振ってた。
いやー、さっき会長に対していじめっ子属性発揮してたけどやっぱ三森はいじられでしょ。生意気な。会長をいじめていいのは俺とか俺とかその他の男前だけなんだから。
三森に苛められた会長は拗ねて一人で食堂に行ってしまった。つまらん。
あまりのつまらなさに三森をからかっていると(意外とピュアなんだよね、チャラ男ルックスのくせに)食堂に着いた。いや、わかってたけど遠いわ。からかいすぎて三森半泣きだもん。5分以上はかかってるよ。
開けっ放しの扉から食堂に入る。うん、想像してたけどレストランですよね。でも思ってたより普通だ。良かった。
「あ、もんじゃあるかな?」
ここ何年か食べてないわ。城のシェフが日本人じゃないからなぁ。下町の料理ってなんか頼みにくいんだよね。美味しいから文句もないし。
「もんじゃはないかなぁ。まぁ頼めば聞いてくれるかもしれないけど。」
融通が利くあたりがリッチだ。少しここの経営はどうにかすべきではなかろうか。もっと庶民的な感じに。これじゃまんま王道学園だもん。なんかしとこう。定例会議とかあったっけ。
「会計様だ。相変わらずチャラいな……。」
「まぁイケメンで似合ってるから良いんだけど。」
「ばっか、イケメンは何でも似合うんだよ!イケメン滅びろ!」
「つか隣のもチャラくね?誰、あれ。」
なんか反応が予想と違うんですけど。もっときゃー!みたいの想像してたのに。反応普通の男子高生じゃん。それはそれでつまらん。
まぁいーや。会長、会長……。
「わっかりやす。」
演技も放棄して三森が呟く。いやたしかにわかりやすいわ。人だかりできてるしね。なんか周りからの温かい視線が集中してるしね。
「会長!聞いてるんですか!」
「……聞いてる。」
「ならもっと栄養価の高いものを頼んでください。これも頼みますからね。」
言ってサラダを頼む美少女顔の少年。まだ成長途中という感じで、成長したあかつきにはイケメンになりそうだ。会長はめんどそうな顔をしてる。一人で先に行くからだ、ざまぁ。